タケノコがきた!義母はいない!

こんにちは&こんばんは。

田舎暮らしと田舎の嫁初心者の小烏です。


 春ですね。


 ツバメは上空を飛び交い、ヒバリは田んぼでリサイタルを開き、畑では耕した端から雑草が芽吹いて春を謳歌しています。

畑ではブロッコリーも冬キャベツも小松菜も、野菜を卒業して黄色の可愛い菜の花を咲かせています(公開日前にトラクターによりなぎ倒され、耕されました)。


春キャベツの周りをモンシロチョウがヒラヒラと楽しげにダンスしながら、タマゴを産む場所の品定めをしています。

この前まで真っ白い花をつけていた庭先の木蓮も、川の土手を彩っていた桜も、花から新緑へとすっかり衣替えです。


 そんな日の朝のこと。洗濯物を干していると、軽トラでタケノコがやって来ました。古くからの知り合いの大工さんが、自分の山で採れた初物だと持ってきてくれたのです。


 うちも竹藪だった山はありますが、竹を成敗したので去年から食べられるサイズのタケノコは生えてこなくなりました。

屋敷の裏手にも孟宗竹の林があって、毎年そこに出てくるタケノコを取ってきて食べるのですが、今年はまだアタマを覗かせていません。今年はウラ年らしいので期待できないかもしれません。

そんな訳で我が家にとっても初物のタケノコです。


 朝掘りだそうなので新鮮なうちに下茹でしてしまいたいところですが、タケノコの専門家義母がいない。今日は週に一度の送迎用付きリハビリと買い物の日なので、昼にならないと帰宅しません。


 ここは小烏一人でなんとかしないといけないようです。

去年義母がしていたことを記憶の底から懸命にサルベージます。


確か、皮付きのタケノコは包丁でザクッと切れ目を入れてバリバリっと皮を剥ぎ、「剥むき身」のタケノコを4つ割か2つ割にしていました。

そのあと羽釜に大鍋をかけて、タケノコを米ぬかと唐辛子で下茹でしていました。

屋外用のまな板と包丁もあったはずです。


 早速物置小屋で捜索です。


 まな板と包丁の置き場所はわかっています。

問題は羽釜と大鍋です。

大きい物なのでそんなに難しくないはずです。難しくないはずなのですが、小屋の中には見当たりません。それもそのはずなぜか小屋の外の物陰にありました。


さっそく羽釜を裏庭に出して、大鍋をきれいに洗い羽釜の上によっこらしょとのせます。バケツで水を汲んできてざーっと大鍋に移すと跳ねた水滴でズボンが濡れましたが、気温が高いので不愉快ではありません。


 さぁ、ここからが問題です。

薪に火をつけなくてはいけません。

実は小烏はこれまでうまく火を点けられたことはありません。でも義母も夫も留守なので一人でやるしかありません。


いつも義母は薪を3本羽釜の焚き口に突っ込んでいたような気がします。

薪置き場から太からず細からずな薪を3本選びました。できるだけささくれのある薪を探します。ささくれがあるほうが火が点きやすいのです。


 一昨年リフォームするまで、義実家のお風呂は五右衛門風呂でした。

長年お風呂を焚き続けた義母は、最低限の新聞紙と焚き付けの豆殻であっという間に薪に火を点けます。

夫も子どもの頃からの経験からか義母ほどでないにしても、ソコソコうまい上に薪の組み方にこだわりがあります。


 対して小烏は子どものころに焚き火をしたくらい。義実家で風呂焚き経験もありますが三日分の新聞紙を使い、ひと箱全部マッチを燃やし、焚き付け用のおがくずをバケツ一杯使って悲しいかな薪は燃えてくれませんでした。

あの時は大量に作ってしまった灰を見ながら、義母は「まあまあ。都会の嫁さんには慣れん事だから。」と慰めてくれました。今回はこの時と同じ失敗をしないように、頑張るつもりです。


 まず新聞紙の1枚を軽くくしゃくしゃにします。この時ぎゅうっと固くすると案外燃えないのはすでに学習済!軽く潰して羽釜のサナに乗せます。その上におがくず(点火の救世主)を大きく一握り乗せて、豆殻も一枝折って乗せたら羽釜の焚き口は半分ほどいっぱいになりました。


 いい感じです。

これだけやって火がつかない訳がありません。これはもう完璧でしょう。

火は点くはずなので小さな木片もいくつか上に乗せてみます。

この木片に火が点いたら薪をくべるという段取りです。


 さあ!マッチを擦って一番下の新聞に火を移します。

空気が乾燥していることもあってマッチも気持ちよく一回で火が点き(湿気があるとこうはいきません)新聞の火はすぐにおがくずへ、おがくずから豆殻へと、パチパチ音を立てて移っていきます。思った以上に順調な滑り出しです。


 「ほほほ!ご覧あそばせ!ワタクシが本気になったらこんなものよ!」という気分です。


 ところが、木片に火が点きません。豆殻までは順調だったのに。

サナの下に降り積もった白い灰と、サナに残った炎に炙られ少し黒ずんだ木片。


 いえ!まだたった一回目のチャレンジ。

再度新聞紙を軽くクシャクシャにして、その上に一回目より多めのおがくず、豆殻を乗せます。木片は一度焦げているので火が点きやすいはず。少し心配なので応援のために使い古した割り箸を折って木片と一緒に置いてみます。


 マッチを擦って点火。やはり豆殻まではお手本のようにうまくいきました。

ここからです!

「割り箸がんばれ!木片いけ!」

団扇で風を送りながら心ではエールを送ります。

よし!今度は木片にも無事に火が点きました!


 ついに薪をくべるときがやってきました。燃えている木片の上にそっと薪を置きます。とりあえず一本。


 焚口から中を覗くと、木片の炎がいい具合に薪を炙っています。

「これは、いけそうな気がする。」


 すかさず鍋の水にタケノコと唐辛子を投入。

「あ、そうそう!写真を撮っておかないと。」

いろいろ途中ですが写真を撮りました。

「あ、糠をいれないと!」

糠もたっぷり入れました。後は羽釜にお任せです。


 一本目の薪に火が点いたのを確認して、二本目をそっと一本目の上に乗せました。

燃えております。三本目も添えてみました。燃えております。

近況ノートにはこの見事な燃えっぷりをこそ載せた方がいいのではないかというくらいの燃え方です。

小烏もやればできる子なんです!


 これで大丈夫と確信がもてたので、台所に戻って昼食の用意です。


 そうこうしているうちに送迎の車が到着して義母が帰って来ました。

大工さんからタケノコをいただいたので裏庭で下茹でしていることを伝えると、義母はそちらへ向かいました。


 「お母さん(義母は小烏のことをこう呼びます)!母さんや!火が消えとるがね!」

まさか!


 飛んでいくと、突っ込んだ三本の薪は奥のほうから1/3程が焼け焦げて、そして火は消えておりました。奥に熾火がわずかに赤く光って見えるばかりです。

何故だ?完璧だったはずなのに!

作戦に失敗した悪役の気分です。


 その後薪の火は義母の手により復活。

無事タケノコの下茹では終わりました。

義母は「上出来、上出来、うまいこといっとる。」と言いましたが、そっと4本目の薪を足したのをワタクシ横目で見ておりました。



追記

その後のタケノコの姿はこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927861861529068/episodes/16816927862435623166


追加

近況ノートにタケノコ番長こと火の番を張るいえ、火の番をする義母の写真をのせました。

https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16816927862951746125


追記

こののち公開日までに三度にわたりタケノコの襲来があり、食卓がオールタケノコになった翌日、タケノコを食べ過ぎたことによる蕁麻疹が出たことをここに記します。

タケノコ、ドクターストップがかかりましたので、残りは塩漬けの運命となりました。














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