ポン引きの兄×売春婦の妹。社会の底辺を生きる兄妹の非情で美しい愛憎劇。

「鬼滅の刃」の妓夫太郎と堕姫を彷彿させる、ポン引きの兄と「商品」の妹の愛憎劇。(この話の兄は妹に似て美形だが。妹ルイの脳内イメージが梅だった。)

 近親相姦や児童虐待、暴力、惨殺なども含む内容だが、筆致が乾いているのでいい意味で生々しくない。そういう事象が出てくるだけで無理、という人以外にはおススメしたい。


 自分がこの話で最も凄いと思ったのは、「兄レイジをまったく描かないことで、描いていること」だ。

 読めばわかるが、この話はほぼ妹のルイ視点で展開していて、兄のレイジの内心は描写されない。何を考えているのかまったくわからない。ほとんど動きもない。(ラストともうひとつのシーン以外は本を読んでいるだけ)

 にも関わらず、自分から見るとこの話は、ずっと兄レイジについて書いている。
 だからラストは、本当に良かった……(泣)と思った。

 好きなのは、蛇男ミンジュだけど。ルイへの献身が凄い。

 このレビューやあらすじを読んで、少しでも何か琴線に触れた人はぜひ読んで欲しい。