第16話 ボタン
始めは、本当に些細なことだった。小さなころから宿題をするのが苦手で、やらずに学校に行くことが多かった。だって、学校でも勉強して、家でも勉強して、どこで休めばいいのかわからなかったから。小学校の頃はそのまま許されて、中学生になった。
小学生が中学生になる。この変化はとても大きかった。急に、本当に急に「大人としての立ち居振る舞い」を求められるようになった。きっかけはそのギャップにうまくなじめなかったことかもしれない。三角錐をたくさん作る。とがった先っちょをつんつんしながら唯は運動場を眺める。今あそこで体育をしている人たちは、そんなギャップにも対応できた人なのかもしれない。もしくは気づきすらしなかったかも。うらやましいとは思わないけれど、なんだかなぁとは思う。
宿題は当然忘れた。当然、許してはもらえなかった。だらしがないのかもしれないけれど、どうしても家で宿題ができない。だって家はゆっくりするところじゃないか。そんな言い訳をする勇気もないままに、少しづつ、学校への足取りが重たくなった。そしてついには家を出られなくなった。
考えてみれば、それだけの気がする。いじめられたわけでもないし、大失敗をしたわけでもない。ちょっとしたボタンを掛け違いをしたような。まあ、宿題をしないのは私が悪いのかもしれないけれど、どうしてもできないのだ。本当に、どうしても。ボタンだったら外してかけ直せばいいだけなのに。中学生がボタンを掛け違えるとこんなにも直すのに苦労する。
文字のまにま、に 立花僚 @lemeriod
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。文字のまにま、にの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます