終章 日常へ

藤木『というわけなんですよ。社長。』


いつものバーのカウンターで、藤木と鹿島が談笑をしている。


鹿島『それにしてもよく俺の伝えたいことを理解してくれたな、なあ夏木。』


夏木『いえ、みんなが事件を紐解いてくれたおかげです。でも控訴期限に間に合わなかった時は本当に焦りました。それより、よく裁判の時点でここまで先読みできましたね。』


鹿島『俺は自分の仕事に自信を持っている。加硫剤が少ないなんてふざけたタイヤは作らない。あの時点で事故を起こしているタイヤは偽物だと確信していたよ。だから、うちしか知らない企業秘密で真実を暴いてもらおうと思ったんだ。』


滝沢『さすが社長ですね。私も自分の仕事に誇りを持って業務に取り組もうと思います。』


高中『滝沢さん、送ってくよ。じゃあ俺たちはお先に失礼します。』


滝沢と高中はにこやかに店を去った。



内山『それにしても、火消しは大変ですね。』


鹿島『一度失った信頼を取り戻すのは大変だ。それが他者に仕組まれていたことでもな。でも、我々がやることは何も変わらない。誇りを持って真摯に仕事に取り組めば、必ず信頼は取り戻せるさ。』


夏木『あっ。』


鹿島『どうした?』


夏木『麗美ちゃんと出会った時のこと、思い出しました。幼稚園の頃、私が公園で男の子にいじめられていた時、颯爽と現れて助けてくれたんだ…。たしかその時、名前も知らないはずなのにこう言って…』


その時、バーのドアがゆっくりと開けられた。入店したのは、事件後石橋に庇ってもらい、刑を免れた狩野であった。



狩野『秋菜。私があなたのお姉さんになってあげる。』



夏木の記憶の、幼い狩野と重なった。



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陰謀の影には美女がいる~続~ 篠貴 美輔(ささき みほ) @shinoshino

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