溺愛もの好きはもちろん、オカルトが好きな方にも読んで欲しい傑作です!

 前世で人外の相手をする「祓い屋」だった主人公。転生した彼女は下級貴族の令嬢で、しかも前世同様、人外のモノがよく見える体質だった。
 そんなある日、出会ったのは絶世の美男子。その美貌は人のみならず、人ならざるモノまでもを引き寄せるほど。そんな2つ上の圧倒的美形の幼馴染や、好奇心旺盛な王子様と送る、異世界での学園生活は案の定、“あちら側”と交錯する日々で…。



 まず本作の特異な点として「異世界×オカルト」というその組み合わせでしょう。
 冒頭から都市伝説として有名なモノが登場するのですが、聞き慣れた・見慣れた存在が「異世界である」というだけで新鮮に映ります。しかも、不思議なくらいに違和感がなく、それでいて、きちんと人外についても掘り下げがなされており、納得と安心感を持って読み進める事ができます。

 オカルトや霊といった存在を扱うと暗く重い、怖い印象を受けがちですが、本作には不思議とそれが無い。
 会話と地の文のバランスがちょうど良く、ストレスなく読み進められる。加えて、主人公と癖のあるキャラクター達との絡みが一層、物語全体の軽妙さを生み出していらからでしょう。

 もう1つ見逃せない魅力として、キャラクターの関係性もあります。
 特にツンケンした主人公の女の子と彼女を溺愛する幼馴染の超絶イケメン。物語の根幹を成すこの2人の距離感が非常に心地よく、これも全体の雰囲気が暗くなりすぎない要因の1つになっている気がします。方や素直に想いを伝え行動する幼馴染。一方で、相手を思うからこそ素直になる事ができない主人公。
 それをニヤニヤと見つめる王子様に、王子に心酔するあまり、その興味を奪われてムキになる侍従…。それぞれがいい味を出しています。

 ツンケンした態度の主人公の女の子。しかし、幼馴染のストレートな告白を邪険にしながらも何かと面倒を見たり、面倒だと分かっていても人助けをしてしまったり…。そこに確かな良心があるからこそ、「嫌な主人公」に成り下がらず、きちんと像を結ぶ。そして、だからこそ、幼馴染の好意にも説得力が生まれています。
 そんな2人の恋路はついつい、応援したくなりました。

 異世界に現代社会のオカルトを持ち込もうという発想もさることながら、それを読みやすくまとめる技量。軽すぎず、重すぎない、絶妙な加減で描かれる華やかな学園生活とキャラクターの描写。何より物語全体から様々な“愛”が感じられること。

 間違いなく興味深く、面白いと言い切ることのできる作品です。
 主人公が溺愛される作品が好きな方はもちろん、私と同じで霊をはじめとするオカルトが好きな方。異世界の雰囲気でどのようにそれらが描かれるのか、一度、読んでみてはいかがでしょうか? 読み進めたくなること請け合いです!

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