第2話 3月4日弁天誕生日
(弁天視点)
弁天「カルラったら……。届け物があるって言っていたけど、何かしら?」
伊賀の忍びであるカルラとは、付き合いが長い。
同じクランの雑賀の忍びよりもだ。
初めて会ったとき、お互いが音楽好きだったため、出会ってすぐに意気投合したものだ。
別のクランに所属しながらも、和楽器のバンドを組むほどになっていた。
私たちは音楽で繋がっていた。
最近私もカルラも忙しくなり、しばらくカルラとバンド活動をしていない。
次第に自分ひとりでの演奏で、【流浪の楽士】として各地に名を馳せるまでになってしまった。
カルラとの音楽が恋しい。
弁天は昔のことに思いを馳せながら、包みを開く。
中には一枚のCDと手紙が入っていた。
手紙には一文のみ。
『誕生日おめでとう サットヴァ カルラ』
今日は3月4日。
そうか、今日は私の誕生日だわ。
どうやら私の誕生日を知っているふたりが贈り物を用意してくれたらしい。
嬉しいわ。私が他の子たちに誕生日を秘密にしていたから配慮してくれたのね。
私はさっそくCDを手に取り、昔カルラとバンド活動していたときに使っていたCDラジカセを探した。
しばらく触っていなかったCDラジカセを見つけると、とても懐かしい気分になる。
開閉スイッチを押し、CDをセットする。
♪♪♪~
和で厳かな旋律が流れる。私が好む旋律だ。
ああ……。この旋律を聴くと、今にも三味線で演奏したくなる!
和の旋律と共に、複数のコーラスが聞こえてきた。
これはサットヴァ様の声かしら。
なんて、神秘的。
とても心が洗われるような、厳かな声。
なんて素敵なサプライズをもたらしてくれるのかしら。
大人になって、誕生日を楽しみにすることが少なくなった。
でも、これは忘れられない思い出になる。
今度カルラとサットヴァ様に会ったら、一緒に演奏しませんかと誘ってみるのもいいわね!
そんなことを考えながら、私は満点の星空の下で三味線を弾いた。
※ ※ ※
(サットヴァ視点)
私、サットヴァは感動していた。
我ながら弁天への贈り物を一生懸命作ったつもりだ。
弁天のことを語るとしたら、音楽は外せないだろう。
カルラと音楽活動をしていたくらいだ。
音楽を愛せずにいられない。
カルラとオリジナルの曲を考えた。
カルラの提案で私がコーラスを担当することになり、初めての経験ながらとても楽しかった。
私の声色や音程を変えて、何度も音を取り、カルラが音を混ぜたのだ。
確か、【たじゅうろくおん】だったかしら。
私は歌が好きだったので、とても楽しかった。
自分から相手のことを思い、贈り物を贈る文化も素晴らしい。
そして考える。
これからは【ばーすでーぱーてぃー】の他に【贈り物】を考えるのも楽しいかもしれない。
【ばーすでーぱーてぃー】の他に新しい楽しみを見つけた私は、心が幸せで満たされていた。
私の【ばーすでーぱーてぃー】の探求は、まだまだ続く。
※ ※ ※
後書き
サットヴァ様のコーラスは、シンガーソングライターの志方あきこをイメージしました。
曲はKalafinaのHistoria:opening themeっぽいイメージで書いています。
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