第102話 エピローグ






 人々の様々な想いが交差する中、何処かの「ダンジョン」では、人類の脅威や悪意の塊りが着々と虎視眈々に動き始めていた。



「────嘘っ!マジ、ウけるんだけどぉ!!クリプットの奴死んだの?!?!」


 黒いローブを着込んだ少年の様な背丈の人物が「クリプットが死んだ」と、呟き、笑っていた。その少年?が座っている円卓の様な場所には後、7人ほどの同じ格好をした人物達が椅子に腰掛けていた。


「────ソルベ、余り騒ぐな、此処にはは来ていないが、他の幹部達もいるんだ。としてはしたないぞ。もっと、礼儀正しくだな………」

「ちぇっ!ラミアンは一々煩いな〜!礼節なんてがいるわけじゃないんだからいらないでしょ」


 少年?のことを「ソルベ」と呼んだ長身のこれまた黒いローブで身を包む「ラミアン」と呼ばれた人物は聞き分けのないことを言う「ソルベ」に困り果てていた。


 「ラミアン」と呼ばれた人物は他の魔族の幹部に顔を向けるが、誰として口を挟まない。というか、面倒臭いのか静観していた。


 ただ、そんな中、一人声を上げる人物がいた。


「────でもさぁ〜クリプットの事は正直どうでもいいけどぉ〜クリプットを殺した人間には興味があるよねぇ〜アイツはアレでも魔王幹部だし、この中では最年長でしょ〜」


 その人物はこれまた黒いローブで身を包んでいるが、声質からして女性だとわかる。ただ、何処かポワポワとした雰囲気が醸し出していた。


 そんな女性?に「ソルベ」は同意する様に声を上げる。


「そうそう!ミーシャの言う通りでクリプットのカスを殺した人間と俺は戦いたいわけよ!いや〜どんなやつかさ、楽しみだよなぁ〜!!!!」


 「ソルベ」は「ミーシャ」と呼んだ女性?の言葉に反応してそんなことを呟く。


 その後も「ソルベ」は何かを喋ろうとしていたが────


『『『────ッ!?!?』』』


 突如その場を支配する様な圧に「ソルベ」も「ラミアン」も「ミーシャ」も静観していた他の魔王幹部達も身体を震わせると戦闘態勢に入る。戦闘態勢に入った「ソルベ」達は圧を出していた人物の方に顔を向ける。


 その圧を出した人物は────


「…………」


 円卓の最奥に座る黒い鎧を着た人物からだった。その人物はローブは着ていないが、黒い鎧のせいか身体全体を隠している為性別も何もわからない。ただ、この場にいる魔王幹部達を驚かす存在なのは変わりはないだろう。


 そんな黒鎧の人物はみんなが固唾を呑む中、声を上げる。


「────所詮、人間共だ。取るに足りない存在だろう。それに、神が何を考えているのか、魔王様がどう思われているのかはわからないが私達は元の世界、異世界「ノクナレア」に戻るのが先決だろう。神々が決めた遊びなどに我々が関わる必要などない」


 そう告げると一人、立ち上がり何処かへと歩いていってしまう黒鎧。


 そんな黒鎧が出ていくと圧が止んだのか「ソルベ」達は肩で息をする。


「────はっ!魔王幹部筆頭かなんかは知らんが偉そうに言いやがって!あんな圧を当てないで正々堂々と伝えろや、カスが!!」


 そんな怒る「ソルベ」を宥める様に「ラミアン」が声をかける。


「まぁ、まぁ、彼は────アルク殿は魔王様お気に入りであり────のアルク・ボイジャーなのだからしょうがないだろう」


 ただ、それでも気に食わないのか「ソルベ」はそっぽを向くとそのまま自分も円卓を後にする。


 そんなこんながあり、魔王幹部による話し合い?は終わる。


 ただ、一人、魔王幹部の中で口を開かなかった杖を持つ人物は────


「────人間、であるか。こちらの世界地球には面白そうな実験台モルモットがいるようだな」


 そんな事を小さく呟くと薄く、嗤う。



 ◇



 「東京ダンジョン」とは違う何処かの「ダンジョン」内で2匹の魔物に囲まれている少年の姿があった。


 その少年はただの茶色のローブを頭の天辺から被っているため容姿も髪色もわからない。ただ、手に持つ頼りない片手剣だけしか持っていなかった。それに、その少年は右足を負傷してしまったのか苦しそうにしていた。


 でも、それでも、生きるために立ち向かう。


「────僕は、僕は!ここで、こんな場所で死ぬわけにはいけないんだ!!僕を待つ子達がいるの、だから!!」


 少年はそう叫ぶと持っていた片手剣に冷気を纏わせる。そのまま魔物に突っ込む。 



 ・

 ・

 ・




 周りには魔物達の残骸が広がる。少年は片手剣を杖の様にしながらもなんとか立つ。ただ、息も絶え絶えで満身創痍だ。


「────ハァ、ハァ、ハァーーーー。あぁ、の言う様に僕達を救ってくれる"正義の味方"なんて本当に、いるのかなぁ〜。いるのなら、こんな残酷な現実を打開できるぐらいの強さを見せてよ、そして今すぐにでも僕を、僕達を助けてよ、ねぇ────ヒーロー?」


 普通なら叶うはずのない想いを呟きながらも今、自分が死ぬわけにはいけないのでそのまま、右足を引き摺ったまま、出口まで歩き出す。


 この少年はある日、緑矢隼也という男性と出会った。その時に────「俺では無理だけど、君達を助けてくれる存在がその内必ず現れる。その人物は少し人間が嫌いという節があるけど、本当は人が好きなんだ。だから、彼と会ったらこう言うといい。────『"強くなりたい"』、と」


 そんなことを以前、緑矢隼也という男性と会った時に言われた。


 緑矢隼也という男性の言葉を信用していないわけではないが、本当にそんな人物がいるのならと藁にもすがる思いで一日、一日、この残酷な世界を生き延びる。


 自分のためではなく、みんなを自分のを守るために。



 ◇



「────ふう、今「ダンジョン」で起きている事、此処「地球」と彼方の異世界「ノクナレア」で起きている事がなんとなくではあるけどわかったね。それに魔族の次はまさか、なんていう存在も出てくるとはねぇ〜〜〜」


 ネロは少しというか、かなり憂鬱とした表情でそんな事を呟く。


 それはそうだろう。の異変が起きているから遥々遠い「異世界ノクナレア」から地球に来たと思ったらその異変の原因が神ときた物だ。


「────ただ、今まで通り「ダンジョン」を攻略するのには変わりはないだろう。それに加えて魔族の様な邪魔者を排除すれば事足りる。それが神の思惑通りだと思うと少し、尺だが」


 ネロの話を聞いていたフオンは普段と変わらない音声でそう呟く。


 そんなフオンとネロは祝勝会・昇級会が終わった次の日の朝、自分達が住むアパートの一室で目覚めると直ぐに話し合っていた。


「まぁ、そうなんだけど〜。神、神ねぇ〜。僕も会ったことは無いけど、この先どうなるのやら。ハァ、色々な問題がてんてこまいだよ、本当………」

 

 頭の中では整理できてはいるが、自分が思っていたの事が起こっているからかネロは少し浮かない顔をしていた。そのままぶつくさと何やら呟いている。


 そんなネロを尻目にフオンはある事をネロに頼むことにした。


「────ネロ。お前に頼みたい事がある」

「────ん?僕に頼み事かい?」


 フオンにそう問われたネロは一旦考えるのを止めるとフオンの頼みごととやらを聞くことにした。


「あぁ。お前に────を、作って欲しい」

「────ッ!!それ、は………」


 フオンの話を聞いたネロは驚愕の表情を浮かべる。それでもフオンは話を続ける。


「時間さえあれば作れるだろ?魔法でも使っていたし、それに────「東京ダンジョン」で俺に嘘を付いただろ?それを作れば帳消しにしてやる。それにできないことは無いだろ?、なんだから」


 ニヒルな笑みを作るフオンはそんな事を煽る様にネロに告げる。


 言われたネロは────



「────あぁ!もう!やれば良いんでしょ!作れば良いんでしょ!そんな物僕にかかれば簡単だよ!!ただ、少し時間を頂戴!出来るだけ急ピッチに高性能に作るけど、時間は必要だからね!!」


 ヤケクソ気味に伝える。


 そんなネロにフオンは一言。



「────わかっている。だから、頼む。それがあればある計画が進められる」


 少し不審な言葉を残すフオンはフードの中で笑みを溢す。


 そんなフオンをやれやれと言った様に見るネロだが、その表情はどこか柔らかい。






 「魔族」が現れ「神」という頂上の生命体の存在がいると告げられる。そんな中、人々は怯え、なすすべなく終わりを迎える。ただ、そんな中、それら全てを退けてしまう人物がいた。その人物のことを知っている人はいるが、未だに世界の大半の人が知らない。


 その人物が人々の「希望」となるのか「絶望」となるのかはまだ不確かだが、沢山の人と出会い『訪問者』と出会い、成長していく。


 そんなはただ、貪欲に渇望を欲して歩を進める。


 少し捻くれてしまったが心優しい少年、その名を───────────────




 そんな少年が紡ぐ物語、それは終わりのない旅路。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界からの訪問者 その【努力】は神をも超える 加糖のぶ @1219Dwe9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ