No.03

「そうだ少年、オススメの小説があるんだがついでに買っていかないか?」


『星花』を鞄に直していると、突然五十嵐さんがそんなことを言ってきた。

…何だろう、凄く逃がさないって言う意思を五十嵐さんから感じる。

あの顔って何て言ったら良いんだろう…あ、わかった折角の獲物を逃がすかっていう狩り人の顔だ。


「…ちなみにどんなやつですか?」


逃げられないと理解した俺は取り敢えずそのオススメの小説について聞くことにした。

早く帰りたいが聞くだけならそこまで時間もかからないはずだしな…あれ、何か嫌な予感が…気のせいか?


「あぁこれなんだが」


五十嵐さんは新刊コーナーから一冊の小説を取り出して俺に見せてくる。へぇ、『永久へ導く鎮魂歌』か。やっぱり最近の小説は表紙のイラストが綺麗だな。


タイトル的には良くありがちな異世界物な感じがするが、五十嵐さんがオススメするってことは面白いんだろう。どんな話か気になるな、聞いてみるか。


「この小説ってどんな話なんですか?」

「お、興味あるか?」

「まぁ五十嵐さんがオススメするぐらいですし、面白いのかなって」


五十嵐さんのオススメしてくる小説って大体ハズレがない神作ばっかなんだよな~。良くメールで長文プレゼンしてくるやつとか本当に面白……あれ、ちょっと待て、?……何か嫌な予感が…。


感じた嫌な予感にまさかと思いながら、五十嵐さんを見るとそこには━━『その言葉を待っていた!』と言わんばかりの満面の笑みを浮かべた五十嵐さんが…


「あ、すみません。急用を思い出しました」


即座に回れ右をして逃走を図る。あれはヤバい捕まったら絶対長時間プレゼンコースだ。

最小限の動きで脇目も振らず出口へ走る。

しかし…


「待て、何逃げようとしてるんだ」


五十嵐さんから逃げることは出来なかった。両肩を抑えられ身動きがとれなくなる。

…嘘だろ、今さっきまでカウンターで座っていたはずだろ…?と言うか力強くすぎないか…?


「そんなに私のオススメの小説が読みたくないか……良いだろう」


お、これはプレゼン無しで解放してもらえるやつか?

少し希望を抱くが……張り付けた笑みを浮かべた五十嵐さんを見てそんな希望は即座に捨てた。


「たっぷりプレゼンして、小説を読みたくなるようにしてやろう!」


(あぁ…やっぱりこうなるのか…)


逃げても逃げなくても逃れられぬ運命に天井を仰ぎ、


(はぁ…帰りてぇ…)


と、思うのだった。


その後、五十嵐さんのプレゼンを聞き終え、ようやく解放されたのは開始から2時間後だった…。



◇ ◇ ◇



「頭痛い…」


いまだに耳に残り続ける怒涛のプレゼンに痛めた頭を抑えながら俺は帰路を辿っていた。プレゼン…諭吉5枚…う、頭がっ。


「…しっかし、暗いな」


視界に映る景色に思わず呟いた。

俺が歩いているこの道は街頭が少なく、夜になると足元も覚束なくなる位真っ暗になる。


朝は鬱陶しいほど輝いてやがった太陽も鳴りを潜めてるから、ぼんやりした月明かりだけが頼りだ。


そんな足元も覚束ない道を慣れた足どりでスタスタ歩く。この道、夜になると人通りが少なくなるから良く通るんだよ。目をつぶってでも歩けるわ。


別に家に帰るだけなら他の明るい道通っても良いのだが、そう言う道は人通りが多いので却下。


まぁ皆こんな真っ暗な道より明るい道の方に行くもんな。こんな道、俺以外誰も通らんわ。


もし通る奴がいたら、それはよっぽどのアホだ。


「ん…?」


前方に何か大きなものを見つけ、思わず立ち止まる。暗くて良く見えないが、人だろうか。月明かりがうっすらとそれを照らしていた。


…よっぽどのアホがいたんだな。タイミングが良いのか悪いのか…いったいどんな奴だ?


気になったので観察のため、少し近付いてみる。

そこにいたのはやっぱり人だった。月明かりで照らされた金髪がハッキリと見えた。多分、髪の長さ的に女か?


(…何してるんだ?)


良く見ると、女は道に座り込んで足を押さえていた。どうやら怪我をしているようだ。ってアレ?


(…何か、見覚えが)


女を観察していると、何故かその女に見覚えがあることに気付いた。でも、何でだ?俺はこいつに面識があるわけでもないし…もう少し近付いて見るか?


確認のため更に近付く。するとその瞬間、俺の足音に気付いたのか、女が顔を俺の方に向けた。

その顔を見て、俺は何故女に見覚えがあるのか理解した。


何故ならその女は、



「……檜山?」



俺の隣の席に座る、聖女様気に食わない奴だったから…。




………後書き………


最後まで見てくれてありがとうございます!作者です!


更新遅れてごめんなさい!取り敢えず3話を一回書き上げたは良いのですが、後から見直してみて、『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!作中時間夏なのに5時に真っ暗になるわけないやぁぁぁぁぁん!!』と言うことに気付き、書き直しとかしてました。


その関係で2話とか最後の方書き直してます。ほんとすみません事後報告になりましたがご了承下さい。


…こほんっ


まだまだ至らぬ所はあると思いますが、更新は続けるのでお楽しみに。


コメントや良いね、フォローとかしてくれるとモチベが上がるのでよろしくお願いします!


来週は期末テストがあるので更新出来るか分かりませんが、出来るだけ更新出来るように頑張ります!


それでは次回をお楽しみに~!











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隣の席の聖女様から何故か目が話せない 紅月 デュアル @Dual_Benituki

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