No.02
歩き始めて数十分、目的地の本屋に到着した。
店の扉を開け、カウンターで小説を読んでいる女性に声をかける。
「どうも、五十嵐さん」
「…ん?あぁ来たか、少年」
小説を読む手を止め、顔だけこちらに向ける眼鏡をかけた女性。
この人がこの店の店長、
暇さえあればずっと小説を読んでいるような生粋の読書家で、オススメの小説があったら良く長文のプレゼンをメールで送ってきたりする。
素直に迷惑なので止めて欲しいんだが五十嵐さんが勧めてくる小説は本当に面白いから一概に迷惑と言いきれないのが何とも…あ、ちなみに年齢は━━━
━ドス!!
「…次は当てる」
「すみませんでした」
即座に平身低頭して謝罪する。
(…こぇぇぇぇぇぇ!)
声に出して叫ばなかった自分を褒めたい。
ちらりと真横を見ると、何故か刺さるはずもないボールペンが壁に突き刺さっていた。
…さっきまで五十嵐さん一切小説から手を離してないよな?どうしてその体制からボールペンをそんなスピードで投げれるんだ?
と言うか
「ふん、少年は直ぐに顔に出るからな。ポーカーフェイスの一つでも覚えたらどうだ」
「…そんな顔に出てました?」
コクりと頷く五十嵐さん。
嘘だろ…帰ったら小説読む前にポーカーフェイスについて調べないと…
「そんなことより、思ってたよりも遅かったじゃないか。少年のことだから学校終わりに直ぐ来ると思ってたんだが」
「あ~…担任に日直だからって理由で掃除させられてたんですよ」
「成る程な。私は少年が来ないもんだから友達と楽しく遊んでるもんだと思って小説を読んでたんだが」
「いやいつも読んでるじゃないですか」
五十嵐さんの言葉につい突っ込んでしまう。
だって五十嵐さんそんなこと関係なしに小説読むじゃん…
「何か文句が?」
「いえ、何もありません」
首を横に振り全力で否定する。
何も文句なんてないです、はい。なのでそんな鋭い目でこっちを見ないで下さい、怖いんで。
「と言うか五十嵐さん、俺に友人がいないのは知ってますよね?」
話題を変えようと俺がそう言う。
確か前に五十嵐さんに『友人とかいないのか?』って聞かれたとき、『友人なんて作る気ないです』って答えた気がするから知ってると思うんだが。
「あぁ勿論、少年に友人がいないことは知ってるし、少年に友人が出来る訳無いのも知っている」
「事実ですけど、ハッキリ言われると悲しくなってきますね」
友人がいないのは事実だし、自分から友人を作ろうとしていないのだから友人が出来る訳無いのも事実なのだが、そこまでハッキリ言われると何か悲しくなってくる。
まぁ、悲しくなってくるからと言って友人なんて作る気ないのだが。
「まぁそう言うな。そもそも友人を作ろうとしてないのは少年だろ?」
「そうですね」
「はぁ…前にも言ったが友人とは良いものだぞ。困った時に利用出来る都合の良い相手だし」
「五十嵐さんっていつも思いますけど、友人のこと何だと思ってるんですか?」
「困った時に利用出来る便利な財布」
俺の問いに真顔でそう答える五十嵐さん。
…やっぱこの人色んな意味ですげぇわ、尊敬はするけど見習いたくはないな。
まぁ、そんな五十嵐さんだからこそこうやって敬語を使って話してるんだが。
「っとそうだ少年、『星花』の最新刊受け取りに来たんだよな。ちょっと待ってろ」
不意に本題を思い出した五十嵐さんが奥に入って行く。
いや急だな~…話の脈絡とか全く関係ないじゃん…っていつものことか。
あの人のマイペースっぷりは今に始まったことではないしな。
前に聞いたが友人の披露宴に呼ばれたときだって変わらず小説読んでたらしいし。
いやそれはマナー的にどうなんだと思うが、友人が知ってて呼んだらしいし別に良いのか?
と言うか人の披露宴でも変わらず小説読むとか…当時初めてその話を聞いた時やべぇやつだって思ったし。いや実際やべぇ人なのだが。
「…少年~何か変なこと考えてないか~」
「気のせいですよ~」
…何で心が読めるんだ?今五十嵐さん奥にいて俺の顔見えてないよな?
やっぱヤバいわあの人。
取り敢えずこれ以上心を読まれるとヤバい気がするので新刊コーナーでも見て待ってよう。
………後書き…………
最後まで見てくれてありがとうございます!
4いいね3フォローを貰いテンションが上がってる作者です
いいねしてくれた方、フォローしてくれた方、本当にありがとうございます!これからも応援してくださると嬉しいです!
まだまだ至らぬ所はあると思いますが、更新は続けるのでお楽しみに。
コメントや良いね、フォローとかしてくれるとモチベが上がるのでよろしくお願いします!
それでは次回をお楽しみに~!
次回はようやく聖女様の登場だー!
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