このお話は非常に練り込まれたお話です。読み終えてからもう一度読んでみると、作者様がどれだけ丹念に練り込んで、丁寧に真実を潜ませたかが、よく分かります。その力量たるや脱帽するしかありません。家庭に居場所がない主人公が見つけた峠の一軒家。そこに住む母娘との交流。その果てにある最後の一捻りは驚異的です。マジか?!と、思いつつも騙されたことすら面白い。そんな本作を是非とも読んでみてください。
再婚した父と一緒に暮らす主人公は、新たな義母になじめず、家に居場所がないと感じています。少しでも家以外で時間を潰したいと考えた主人公は、峠に建つ廃屋に足を向け……丁寧な情景描写と心情描写がされ、廃屋での怪異が強弱をつけながら忍び寄る展開に、思わず心臓が高鳴ります。そして最後の意表を突く落しどころ……上手いです。この作品はもう少し読まれていてもおかしくないと感じました。