サンガツツイタチ

@kubomi

第1話



「はーい、産まれましたよ🎵12時8分」助産師の声。

(12時丁度に産みたかった。)そんな余裕があるくらい楽だった。

だってベテラン助産師と新米助産師が昼の休憩どっちが先に取るか相談し合ってたから。陣痛の痛みもほぼ感じないまま、「いきんでー」って言われたらイキむ。を繰り返した。


予定日の正午に産まれるなんて、我ながら凄い子を産んだと思った。


すくすく育った。

恋って美味しいの?って感じで思春期を通りすぎたようだった。


無事社会人になって、独立した。


一人暮らしをはじめて、のんびり過ごしているようだった。



それから数年経った頃突然「彼女ができた。会って欲しい」と連絡があった。


ほっとした。

そんな気持ちだった。

昼から小雨が降り始めた。

来客の準備に夢中で、傘も差さずに出掛けてしまった。

いつもはメガネが濡れるのが嫌だったが、今日はお構い無しだ。


息子の彼女が家に来る夕方、雨は既に止んでいた。


「はじめまして、美那です。」


ショートボブで、スラッと背が高く意思の強い瞳をしていた。

子供の頃恋をすることの無かった我が子が、恋をした女性にとてつもなく興味があった。


それから数年後、息子から美那さんと結婚することを決めたと報告があった。


未婚率の高くなったこの日本で、結婚しようと思える人に出逢えてよかったなーと親として思う。


両親との顔合わせの日に、部屋に入って彼女の御両親を見た瞬間、私の中に閃光が走った。


まさかそんな事はないと思いその衝撃は、表情に出さないように努めた。


息子と彼女がそれぞれの親の名前を紹介した。


学生時代の片想いの相手だった。


彼は気が付かないようなので、そのまま切り抜けようと必死に話をして頑張った。


こんなことってあるんだろうか、まさか彼と親戚になるなんて。


気が付いてないなら好都合。そのまま。


楽しい会を過ごした。


だって我が子を祝福する日。


ちゃんとやり過ごした、あの3年間と同じように。


その後も結婚式も、ずっと誰にもバレずに。


月日が流れ、初孫誕生の日。


嬉しくて嬉しくて私はウキウキとおばあちゃんになった。


孫の世話をしたい。

そんな気持ちが溢れていた。


でも叶わなかった。


孫が小学生になる頃、学校が終わってから、息子夫婦が家に帰るまでの間、面倒をみるように依頼された。


嬉しかった。


一生懸命気に入ってもらえるように頑張った。


楽しかった。

夢中だった。


それだけでよかった。


私の人生このためだったんだって。。

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