第2話

私の名前は、桑田志甫(くわたしほ)15歳

高校受験当日、遅刻ギリギリで到着。


受験番号を確認して席に着く。


まだ座ってない人が居る。


気になって机の上を見る。筆箱あるから、戻ってくるよね。でももう時間なのに、何で居ないのかな?って考えてたら、スッと机に手が出る。


フッと視線を上にあげると目が合った。


ワッ怖。


とっさにそう感じた。あんまりみちゃダメだよねって反省。


テストが終わって、学校を出る。


1週間後

合格発表。合格通知ゲット、晴れて高校生。


入学前の登校日、受験番号順にまた着席。


ぼーっとしていたら、目が合った。試験の日と同じ人だった。やっぱり怖かった。


入学式当日、今日は遅刻しないように早く家を出た。

一番乗りで母と教室に入った。決められた席に座った。


まだ誰も居ない教室にで、黒板に貼り出された座席表を見ながら母が言った。

「篤と同じ漢字の名前の子が居るね」と弟の名前と同じ人が居ると興味津々だった。

「どんな人だろうね。チェックしとくね。」と答えた。たわいもない会話だった。


続々とクラスメイトが教室に入ってくる。

担任が入ってくると一斉に皆、席に着く。


母との約束を果たすべく、弟と同じ名前の人の席を見た。


私は、強い衝撃を覚えた。


試験の日、目が合ったあの人だった。


入学式の後、母と合流して、今まで起きた出来事を全て話した。


怖さしかなかった。



高校生活が始まり、何事もなく過ごした。

1週間後にオリエンテーションで宿泊合宿があり、半合炊飯の班が発表になった。


出席番号の切りのよさで、自動的に私が班長になってた。同じ班には、弟と同じ名前の彼が居た。


最悪だと感じていた。


ついに、オリエンテーションの合宿の日になった。

スケジュール通り半合炊飯の時間になった。

班長なので、仕切らなくてはならないと張り切った。

分担を決めた。本人の希望も聞きつつ「道具を取りに行く人?」質問して挙手で決めた。


何故か弟と同じ名前の彼と道具を取りに行く係りになった。


だるそうに着いてくる。


女子二人がお皿の入った重いかごを運んでいた。

私は大きいけど軽いお鍋を持って立ってた。

何も持たず、私の横にしゃがんでいた彼がおもむろに手を伸ばし、私が持っていた鍋を掴んだ。


私から鍋を奪い、ひっくり返したりして遊び始めた。私は呆気に取られて何も持たずにただ立っていた。


半合炊飯でカレーを作りが始まった。

材料のルーのパッケージを見て、「中口のカレー食べれるかな?」と言ったら、同じ班の女子が「中辛でしょ?」と言うので「えー甘口辛口、中口だと思ってた」と私が言うと、女子は笑っていたけど、男子は(バカじゃんこいつ)みたいな白い目で見てた、側に居た彼は「チュークチって」って笑ってたのを見て、少しほっとした。


カレーができてみんなで食べた。

残ってるので「おかわりする人?」って挙手を求めたら、班のみんな無視してたけど、彼だけスッと手を上げておかわりしてくれた。なんか嬉しかった。


夜のクラスごとのレクレーションでも、ことあるごとに、目が合った。


私は恋をしていた。




通常の学校生活が始まっていた。

彼は学校を休むことが多かった。

授業のノートを書いて、彼に渡したら受け取ってくれた。


ある日クラスメイトの男子から家に電話があった。

「俺の友達が、君の友達のことを好きなんだけど彼氏居るのかな?」って聞かれた。

色々と質問にわかる範囲で答えた。

「ところできみは好きな人居るの?」って聞かれたので、「居るよ」って答えると「誰?」って聞かれたので、真田くんだと教えると。「同じ中学だったから応援するよ。友達になろう」って言われて、友達になった。



それから男友達から頻繁に電話があった。


夏休み前、弟と同じ名前の彼にラブレターを渡した。

返事はなかった。


夏休みになり会えなくなった。


女友達と会って話してるときに、返事を聞こうってなって、彼の家に電話した。

「付き合って下さい」って言ったら「いいよ」って


それからは何を話したか覚えてない。


花火大会とか親と行ったし、彼に会う事は一度もなかったけど、電話はよく掛けた。


夏休み中の私の誕生日、男友達からプレゼント貰った。嬉しかった。

ただ、彼からは貰ってない。何故なら誕生日聞かれてないし自分からは言えなかった。


9月になって新学期が始まった。

付き合うことになって、はじめて会った。恥ずかしかった。


いつも家に電話を掛けてくれた。公衆電話から掛かってくる事が多くなった。

彼はバイト。私は部活を頑張ってた。

あるとき電話で「木曜日部活?」って聞かれて、「うん、あるような無いようなー」って言ったらそれっきりになって、何だったのかと思ってたら、彼がバイトの休みの日だったと気が付いた。


一緒に帰ろって言えばよかったなって考えてたけど、それからは電話掛けても家に居ないし、折り返し掛けても貰えなくなった。


やっと電話することができたとき、「誕生日いつ?」って聞かれて「もう終わった。8月」って言ったら

「何で言わないの?」って聞かれて「恥ずかしかった」と言ったら無言になった。


それからまた電話もできなくなったし、学校でも目が合わなくなった。


それから1ヶ月後の彼の誕生日の前日、家電に掛けたら出てくれた。

「明日誕生日だね。おめでとう。」って言ったら「もう終わりにしよう。」って言われて、「えっ、何で?」って聞いたら「もう電話しないで」って言われて、電話切られた。


悲しくて辛くて泣いた。


忘れなきゃ他に好きな人見つけなきゃって必死に考えてた。嫌いになりたかった。


1週間後にクラスで席替えがあった。


何故か彼と隣の席になった。


忘れたかったから辛かった。

付き合ってる時に隣だったら良かったのに。

その時の願いが遅れて叶ったのかも。


授業中、後ろの席のうるさい男子が私にちょっかいだしてきて、相手してたら、先生に「お前らうるさい。お前ら大きい台風と小さい台風みたいだな。」笑いが起きる。気を良くして続けて先生が「桑田はうるさいから、真田と付き合え、正反対だから上手くいくぞ。」と言った。


私は驚いてあたふたした。彼をチラッと見たけど、微動だにしていなかった。

心の中で(先生何て事言うの😭もう別れちゃったよ😱上手くいかないよ😱)って



教室に笑いは起きなかった。ただ1人男友達が笑っただけだった。先生もウケなかったのでそれ以上は何も言わなかった。


微動だにしない彼を見て、嫌われたんだから私も諦めなきゃと自分に言い聞かせた。

それからの学校生活は苦痛だった。

他に好きな人を作り出した。

告白してフラれても悲しくなかった。

告白されて付き合っても、彼にバレたらどうしようって思って、すぐ別れた。

クラスメイトに「他の学校の友達が、写真見て会いたがってるんだけど会ってくれない?」って言われたこともあったけど、彼に知られたくないから断った。


女友達とも上手くいかなかった。


彼と、ただ廊下ですれ違うだけで、動けなくなって通りすぎる横顔を見つめる日々を過ごした。

修学旅行も、文化祭も、彼と話せたらと心の片隅でずっと願ってた。


卒業式の日に、部活の後輩と別れを惜しんで過ごしていて、いざ帰るぞってなったときに、昇降口を出てすぐ彼を見つけた。とっくに帰ったと思っていたから、ドキッとした。

でも話しかけられることも話しかけることも結局なかった。


チラチラっとお互い見るだけだった。

それが最後。3月1日








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