第3話

3月1日

駅ビルのエスカレーターですれ違った人が、僕を見てハッとしていた。


翌日、学校でクラスの友達の友達だったことに気が付いた日にLINEを交換した。


「どっかで見たことあるって思ったんだよね。」

「私は知ってたよ」

「そーなの?」


彼女はフフっと笑った。


部活の帰り、友達と3人で帰ったり、教室で休み時間に彼女の持ってきたお菓子食べたり、放課後校庭の隅っこで部活サボって話したりした。


ふと気が付いたら、3年の冬になっていた。

受験勉強をスルーっとやってきた。


お互い目指す将来が明確にあった。

お互い応援しあっていた。


気が付いたら卒業式の日だった。


いつでも会える。そう思ってた。


でも、そうはいかなかった。


LINEをしても、既読スルー。


空しさを感じた。


LINEを送ることも、いつしかしなくなっていた。


長い就職活動の末、就活課の先生が見つけてくれた企業に1発で採用された。


親を心配させること無くめでたく就職も出来て、ほっとした。


仕事って想像してたのと違ったが、言われたことをやる。でもそれが難しかったりする。


先輩と遊ぶのもまあまあ楽しかった。


その年の夏、実家に帰った日、駅ビルのエスカレーターで、すれ違った。彼女だった。


あわてて彼女を追いかけた。


フロアで彼女に声をかけた。


彼女は驚いていた。


「覚えてた?」

「うん」

「元気してた?」

「うん」

「実家に居るの?」

「いや、今日たまたま帰って来た。」

「そーなんだ!私は大学卒業して実家に帰って来た」

「またLINEしていい?」

「うん」



僕は2度と離れたくないと思った。


一緒に過ごすのが違和感なく、空気のようだけど、だから大事だった。


そう思える人は、他に現れたことはなかった。


その事を彼女に伝えなきゃと、思った。


「これからずっとそばに居て欲しい。」

「いいよ。でもなんで?」

「美那が好き」


「ありがとう❤️」


導かれているのか、手繰り寄せてるのか、とても不思議な気持ちだった。

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