第5話

3月1日に親戚旅行をしようと話があった。孫と過ごせるなら嬉しいと思ったし、初めてのレジャーランドだったので浮き足だった。


旦那は、たばこばっかりで居なくなるし、奥さんは張り切りすぎて疲れたからと部屋に戻った。


息子夫婦には二人で遊んどいでと送り出した。


私は孫と過ごすことにした。

彼は、奥様が部屋に行ったが一緒には行かなかった。

孫をずっと見ていた。


なんとも不思議な三人組だったが、端から見れば、祖父母と孫だった。


すると彼が話し始めた。

「桑田でしょ?」


「え?何で?いつ思い出した?」


「最初から」


「ずっと知らん顔してたの?」


「いやそっちもでしょ(笑)」


「(笑)そんなの誰にも言えない」


その会話をさかいに、ふたりはあの頃の続きを始めた。


結構な頻度で、家族ぐるみで会うようになった。


息子夫婦は出掛けたがり、主人と彼の奥様は趣味が一緒で、よく一緒に行動していた。


取り残された私たちは孫と遊んだ。


愛する対象を、ふたりで見守った。これ以上の幸せはないと思えた。


孫も大きくなり、お世話の必要がなくなる頃、家族ぐるみで会うこともなくなってきた。


すると、主人から別れたいと言い出された。

理由には少し驚いた。


「息子のお嫁さんの母親と再婚したい」との事だった。


今までもずっとふたりで会っていたと言っている。


気が付かなかった。


悲しかったが、申し出を受け入れた。


両家で慰謝料や財産分与など話し合いをすることになった。

弁護士を交えて離婚後に住む家など話し合うことになった。


私は家を出たかったので、そう伝えると、急に「なら、うちに来ればいい。」と彼が言った。


その場の全員が呆気に取られた。

弁護士が理由を聞くと「部屋が空いているから」と。


私は「部屋が見つかるまでお世話になろうかな」と発言した。


主人も奥様も、自分達が一緒に住めれば何でもいいかと言う感じで、了承した。


財産はちゃんと分けた。


慰謝料の話になった。


申し訳ない、と言う理由で相場分は支払ってもらった。


引っ越しの日、取り敢えず自分の荷物を運んだ。

食器や調理器具はお気に入りだけ運んで、後はお互い好きにしてもらうことにした。


息子夫婦や孫と親族であることに変わりはなく、会わないわけにもいかないし、会いたくないわけでもなく。


嫌いにもなってない不思議な関係。


そして、彼との不思議な生活が始まった。

なのにすんなりと今までもずっと一緒だったかのように、ためらいもなく顔を見合わせて懐かしい瞳をずっと見ていた。



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サンガツツイタチ @kubomi

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