37 希望ノ街ーTHE HOPE CITYー

【タイトル】

 希望ノ街ーTHE HOPE CITYー

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891807809


【作者】

 鴉 様


【ジャンル】

 現代ドラマ


【あらすじ】

 五十嵐源治は幼い頃に児童福祉施設に預けられて以降、頼れる身内のいない身となった。どうにか就職した会社が倒産した後は派遣社員としてその日を食い繋いできたが、派遣切りにあった日に「生活困窮者自立支援制度」を知る。制度を利用してパンの製造会社で働き再スタートを切ることになった源治。そこで出会った同期の鳴海翔太とともにギャンブルに酒と遊び歩き、怠惰な日常を過ごしていた。仕事帰りの金曜日の夜、バー「ショットガン」で二人が飲んでいたとき、源治は運命の出会いを果たす。


【魅力】

 清濁ありとあらゆるものがぐちゃぐちゃに混ざって、結果荒んだ色を多分に含んでいるのが文章から感じ取れます。主人公の源治の出自からして難儀しそうなスタートですし、そこから平坦でない人生を送ってきたのは想像に難くありません。それも自分の力だけではどうしようもないものに翻弄されての今ですから、クソのような街だと彼が言うのも頷けます。理不尽さからくる社会への怒り、尖った感情を剥き出しにできるのはそういった経緯からでしょう。同時に現状を大きく変えることは難しいという社会構造上の諦めも抱いていて、正反対の感情を抱いてもがいているのがとても人間らしいと思います。

 そういったもがき、歯がゆさを感じられるのがこの小説なのかなと思います。環境的に恵まれなかった源治に希望を抱いてほしいと願いながらも、一筋縄ではいかないのが人生だと突きつけられますし、すり寄ってくる人間の都合のよさも描かれています。「ご都合主義」的な部分も多少ありますが、一番最後の源治の独白が、ここがあらゆるものが混ざった街であることを示しているのだと感じました。


【気になった点】

 用語として、DQNはネットスラングとして使われるのが一般的だと思いますが、地の文で解説なしにいきなり入ってきたので少々びっくりしました。世界観にそぐわないワードチョイスと表現するべきでしょうか。掃きだめを連想させる崩した言葉、汚い言葉は荒んだ源治の見る世界として合っていると思うのですが、源治自身がそこまでネットに傾倒しているわけでもなさそうなので、使われることに違和感を覚えました。客が使っているゲーム機がPSPなので、今は死語と化しつつあるネットスラングが積極的に使われた時代だとは思いますが(2000年代?)。


【その他】

 経済的に追い詰められているのはわかるのですが、プロローグの源治が女を凌辱したいとか言いだすので第一印象最悪なのは否めないですよね。社会への怒りは感じるのですけれども。

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感想を完走したい・R 有澤いつき @kz_ordeal

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