第20話:鈍感さんの告白じゃらし。(幕間③)
《前書き》
かなり短めです。
──────────────────
「ご注文、承りました」
横に立っていた店員さんが去っていく。
俺がボーとしていた間に彼女が注文してくれていたのであろう。
あぁ〜、恥ずかしい〜。
さっきのは多分、夢とかではないもんな……。
少し冷静になって、状況が把握出来た今、他の恥ずかしさも、俺を襲ってきた。
キスで彼女よりも呆然としてしまったり、しかも、女性に注文させたりと……いろいろと男として、彼氏として、やらかしてしまっているような気がする。
どうにかして挽回しなくては……!!
せめて、今の俺が出来ることと言えば、水葉と『カフェ友』になれた、あの日のように、彼女の分までカッコつけて奢ることくらいだ。
俺は、ポケットを確認する。
あ……。
今、第三者視点で俺のことを見ている諸君は覚えているであろうか……。
『俺はそんな両親に感謝しつつ、急いでスマホとメモと、コレをズボンのポケットに入れて、玄関から飛び出していった。(15話)』
オーマイガー!!!!
神様、どうか俺をお助けください!!!!
財布、持っとらんやんやないかい〜!!
そう、わかっての通り、俺は水葉の家に急いで向かった後、そのまま此処に来てしまっていたのだ。
「あ、あのその水葉さん……」
……うん。これは非常にダサいね。
「ど、どうしたの、葉瀬くん。すごく深刻そうな顔して……?」
水葉は優しい顔をこちらに向けてくれている。もう、辛い……泣きたい……。
「あ、あのぉ〜。さ、財布を忘れてしまいまして……ですので、その……」
俺は涙を拭いながら、非常に恥ずかしさでいっぱいの声をなんとか振り絞った。
すると、水葉は──、
「大丈夫だよ葉瀬くん。さっき、あなたのご両親が財布置き忘れているって、L●NEしてくれてたから」
「へっ……父さん母さんと連絡先交換してたの?」
聞くところによると、家族ぐるみの繋がりに、我が息子がしてくれるに違いないと馬鹿両親が自信満々に言ったらしい。どうやら、俺抜きで、ボソボソと三人で話してる時に交換したとのことだった。
「それに、もしあなたと付き合うことが出来たその時は、私が奢るって決めたから」
「水葉……」
「だから、今日は私に奢らせてね、彼氏くん」
彼女のその言葉はハート型の弓矢となって、俺のど真ん中にぶっ刺さった。
なんたる破壊力なんだ……。
「ごふっ……」
「は、葉瀬くん大丈夫!?」
天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使。
俺の脳内は、この二文字でいっぱいになった。
その後、俺は水葉様のお支払いを見届けさせていただき、店内を出て次のデートコースへと向かうこととなったのだった。
飛び降りようとしていた想い人を助けた後の関係値。〜彼女に拉致され『カフェ友』になったかと思ったら、今度は俺の勘違いで『同棲生活』が始まりました!?〜 ハッピーサンタ @1557Takatora
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