第16話


 九月一日。水曜日。


 僕と蒼は今もまだ同棲生活をしている。


そして今日婚約届を市役所に出しに行く。


蒼がネット上でデザインがこっている婚姻届けが家に届いた。


色んな記入欄があり、慎重に書くために区役所で係員の方に聞きながら書くことにし

た。


今日の天気は、晴れ。真っ青な空が広がっている。


今は、小説のストーリーの続きを書いている最中である。


この前の小説は異例の大ヒットを獲得し、ストーリーを描き続ければアニメ化も検討

するとプロデューサーから連絡があったらしい。


それが今の執筆作業の原動力である。


毎日のようにベットメイクをしてから部屋を出る。


起きる時間が蒼と同じなので部屋のドアを開けるときに遭遇するのがめったにある。


「おはよう。」


「おはようございます。」


朝なのにこんなにも笑顔であいさつされたら、心の中にあるストレスが吹き飛んだ。


それから、洗面所で横並びしながら歯お磨く。


鏡越しで見る蒼は今日もきれいだった。


最近気のせいでなかったら、服のファッションを変えている。前は黒の服を着ている

ことが多かったが、今は女性のようなピンク色のパジャマを着ている。


前はあれできれいだったが、今は格別に可愛い。


口にある泡を水で注ぎだして、歯を磨き終わる。


そこからキッチンまで向かい、いつものように朝食の用意をする。


蒼にすすめられて始めた料理ブログのアクセス数は、百万回を超えていた。


SNSのフォロワーもうなぎのぼりで急増している。


テレビのオファーもあったが、今でも少しコミュ症がある僕には少しハードルが高か

った。


記事を書いていく毎日が僕にとって天職である。


僕は朝食を作る準備をして、蒼はリビングにあるソファーで読書をする。


今日の朝ごはんのメニューを考えながら、冷蔵庫にある食材を選ぶ。


まず、ご飯を洗う。日本人に生まれてきた以上米は朝ごはんにかかせてはいけない。


丁寧に洗い、炊飯器にセットする。最初の時は、ハイテクな洗濯機を使いこなせなく

て、説明書を見ながらボタンを押していたけど今では完璧。


もっちりとした食感を味は得るもちもちモードをタップ。


これだけで、ご飯ができるので、便利な時代だ。


次はみそ汁を作る。カブがあったので、それをみそ汁に入れることにした。


まずカブをくし形にカットする。そのあとにダシと一緒にゆでる。


柔らかくなったところで味噌を投入する。これだけで簡単に作れるので、毎日の朝食

のメニューに取り入れる。


中身の食材が毎日違うので、飽きることはない。


たんぱく質を摂取するため卵焼きを作ることにした。


一回目に挑戦した時は、中身の所々が焦げていた。


今では、何回もの挑戦で経験を獲得した。レシピは難しくないが、巻く工程は、テク

ニックがないときれいな焼き加減と形にはならない。


完成した朝食を並べて、蒼と一緒に。


「いただきます。」


まずは、片手で暖かいお椀を持ち上げる。


中にあるカブをたべて、そのあとにみそ汁を飲み始める。


体の芯から温まることで、今日も一日が始まることが体感する。


卵焼きの切り目から見える色は、きれいな黄色で美味しそうに見える。


ここまで来るのに何週間もかかった。


味はダシや塩の調整で、一番卵にマッチする味を完成できた。


「今日もおいしい。」


楽しんで食べてくれる人がいるのは作ることにそれが料理を作る一番の理由なのかも

しれない。


僕が調理した料理を食べ、その結果会社でよい成績を出す。


料理で人をサッサ得ていると考えたら不思議な感じがする。


「ごちそうさまでした。」


食事を食べ終わると、婚姻届けを出しに行くために出かける準備をした。


役所までの距離は少しあるので、車で行くことになった。


食器を洗い、婚姻届けをリュクに入れて家を出る。


「行ってきます。」


鍵を取り出しドアを閉める。きちんとしまってないか、再確認した。


車のエンジンをつけて、役所に向かって走り出した。


蒼との関係がここまで来るのに長かったような短かったような感じがした。


思い返せば蒼と東京に向かう駅で遭遇したことがきっかけだった。


よくあんなところで遭遇できなのか、今でも不思議に思っている。


考えているうちに役所に着いた。


「車止めるから先に入って。」


「了解。」


蒼は近くの駐輪所車を止めに行った。


役所の中には、今日も人がたくさんいる。色んな手続きをするために市民たちが集ま

る。


区役所戸籍課戸籍担当と書いてあるカウンターを見つけるため歩きながら一つ一つ確

認をした。


奥のほうにそのカウンターがあったので、前にある椅子に座り蒼が来るまで待った。


チックの中に入れてある入籍届を取り出す。その上に書いてあるイラストは、黒い着

物を着た男性と日本式のでレスを着ている女性が二人一緒に立っている。


結婚式は、洋風のドレスよりも日本式の着物を着たほうがよいと二人で、この前話し

ていた。


多分それが理由で、婚姻届けのイラストをこれにしたのだろう。


「お待たせ。」


蒼は車を止め終わって、区役所に入ってきた。


役所には番号順に呼ばれるので、機械の中にある紙を一枚とり番号が回ってくるまで

カウンター前の席で座る。


「10番の方」


手元にある数字を確認して、番号が自分たちのだとわかった。


婚姻届けを出す人が少なかったので、すぐに僕たちの番に回った。


婚姻届けを片手に持ち、カウンターまで向かった。


「今日は婚姻届けを届けに来ました。」


「わかりました。」


係員は、丁寧に記入欄の説明をは始めた。


この時に文字を書き間違えたら縁起が悪いので、慎重に書く。記入欄の情報も確認し

て、誤字がないかも念入りに。


「あとは、ここにハンコを押すだけです。」


リュクの中に入っているので、机に置いて探していた。


この時ある声がした。


「待った!」


そこにいたのは、僕の小説の担当者水瀬あかりだった。


「その婚姻届けは出さないで。」


何を言っているかわからなかった。蒼は、その言葉を聞いて僕のカバンの中からハン

コを取り出した。


「はやく、ここに押して。」


強引に僕の手を取り、ハンコを押させる蒼を不審に思った。


ひかりが話していたことにも違和感があった。


「なんで?」


理由が知りたかったので聞き返すことにした。


「リク君と蒼があった日を思い出して。」


確か蒼とは、東京の仕事がうまくいかなくて実家に戻り。実家にいるのも両親に迷惑

がかかるので出ていったときに出会った。


東京行の新幹線の駅前で泣いていたところで僕が助けた。


「蒼は偶然を装ってその場にいたんだよ。」


「え?」


そんなことはない。蒼がそこにいたのは、酔いすぎて電車に乗り間違えたと聞いてい

た。


蒼に向かって聞くことにした。


「そんなことないよな、蒼。」


 「…………」


 蒼は、明らかに僕から目をそらしている。


「マジで…。」


驚きを隠せなかった。


「そんなわけないじゃん。」


蒼はいつもの表情に戻る。


確かに蒼はそんなことするとは思えない。なので、無視することにした。


「この動画を見て。」


そこに映っていたのは、僕が会社を辞めた時の映像だった。


暗い顔をしている顔で新幹線に乗っている。その横に座っていた人物は。


「蒼⁉」


乗っているときメンタルが落ち込んでいて何も感じなかったが、今思うと教学に感じ

た。


そう考えると今までの出来事が、恐怖に感じた。


もしかしたら、今までのことすべて偶然ではなく蒼の計画なのか。


「…。」


何か起きているのか頭の処理が追い付かないでいた。


「蒼は、偶然を装っていたんだよ。そんな女と付き合わないで。」


ひかりは警告をしてきた。


 これまで、結婚届を出す気持ちが突然止まった。


 さっきから静かで一言もしゃべていない。まさか、図星なのか。


 「……どうしよう……。」


 蒼は深く動揺しているように見えた。


 動画の中にいた蒼は、酔っている雰囲気はない。前に蒼と一緒にお酒を飲んだ時も

お酒に強かったので、酔う気配も感ぜられなかった。


 区役所の係員もどうしたらよいかわからなくて、静かに立っている。


 今日まで計画で蒼の手の中に踊らされていたのかと思ったが、本人に確認しないと真実なのかわからない。


 「本当なのか、蒼」


 真っ青になっている蒼は、探偵に犯人を特定された時のように落ち込んでいる。


 「うん…。」


 頭を縦に振った。


こんなことは本当に起きるのか。


「だからリク君、私と結婚して。」


「え?」


さっきから急展開すぎて何が起きているのか読み込めなくなっている。


蒼は僕のことを東京からついてきて、ひかりはいま僕に告白をする。


「待って。リク。その女に騙されないで。」


蒼は、ひかりが持っているスマホの動画を持ちこっちに近づける。


「この動画を取っているということは、水瀬もこの新幹線に乗っている。」


そう指摘されて、気づいた。


なぜ、ひかりがこの動画を撮影することができたのか。。


なぜ、今日婚姻届けを出すことをしっいるのか。このことは僕と蒼しか知らなかった

はず。


「ちっ…。」


蒼はスマホの中にある写真をスワイプする。


そこには、大量の僕の写真や動画があった。


「これは…。」


しかも、追跡アプリが中に入っており、リク君と書いてある点がマップの中に映っい

てた。


自分のスマホの中を確認すると、そのアプリが隠れたフォルダーの中に隠れ潜んでい

る。そこには、ひかりと連携してますと書いてある。


もしかして、担当のひかりも僕のストーカーなのか。


ひかりは、机にあった婚姻届けを切り裂きゴミ箱に入れた。


「結婚なんて許さないよ、あおい。」


「ちっ…もうすぐだったのに。」


ひかりと蒼は昔からの知り合いだったらしい。


前々から二人は僕を争っていた。


そういえば、幼稚園の時に仲良くしてくれた友達は二人いた気がする。


「抜け駆けは許さないから。」


ひかりは敵意を出していった。


「それじゃ、三人で暮らす?最後に誰が選ぶのかは、リクに任せて」


冷たく凍るこの現場は、蒼の一言で収まった。


「絶対負けないから。」


「こっちのセリフだ。」


区役所で敵意を向けている二人。


結婚すると思っていたが、それはかなわず。


衝撃なカミングアウトを受け、しかも僕の意志は関係なく三人で同棲生活が決まっ

た。


その日から蒼とひかり、僕で共同生活が始まった。


蒼のことは好きだったが、今では少し見方が変わっている。


この人たちと住むことは恐怖感がある。


でも、一緒に住まなかったら何されるかわからない。


なので、一つ屋根の下で暮らしている。


二人のストーカーと一緒に暮らしていく、今後の生活はどのようになっていくのだろ

う。




「ずっと…一緒だよ。」

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陰キャの僕がまともに働けるわけがない Mintson @mintson

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