後編

病院での診察が終わり、また俺の部屋に帰ってきて、さっき処方された薬を2錠服用させる。






「..................ふぅ......。これでとりあえずは......っ」


織を部屋に座らせると、安心して力が抜けてしまい、ふと口から言葉が漏れる。


何が「とりあえずは」だ。どんな言葉を続けたかった?「とりあえず大丈夫」とでも続けたかったのか?

妊娠の心配はかなり減ったけど、それでも織の受けた傷は何も「大丈夫」じゃないだろうが!


ここに来ても不適切な対応をとってしまう自分自身を全力で殴りたい気持ちにかられるも、精神的にも不安定なはずの織が目の前で見ているところで変な行動はしないでおかないと、と考え直す。



「ごめん......」


俺は目を伏せたまま、何に対してかは自分でも要領を得ないけど、言っておかないと、と謝罪の言葉が口をついて出る。



正直、今は織の顔が見れない。


彼氏に乱暴されて、危険日に胎の中を害され、別れることになった彼女はきっと、激しく傷ついていることだろう。

悲しそうな顔をしているだろうか。不安そうな顔をしているだろうか。絶望した表情をしているのだろうか。


そんな織に、俺は、何かしてあげられることはないのだろうか......。




無力感に、唇を噛んで俯いたまま、手のひらを強く握りしめて部屋の入口で佇んでいると、急に「ふふっ」と小さな笑い声が聞こえた。


現場の空気にそぐわない朗らかな音に驚いて、声のする方に目を向けると、織が堰を切ったように笑い出した。



「あはっ......あはは、あはははははははは!識ってば、なんで識がそんなに落ち込んでるのよ!私より落ち込んでるじゃない!あははははは!」


「し、識!?壊れちゃった!?」


急に爆笑しだした識に、本気でストレスで頭のネジがとんだのかと不安になる俺。



「失礼な!壊れてないよ!ってか、ほんと識って、識だよね。どうせ『私にしてあげられることがなにもない自分は不甲斐ない』みたいなことを考えて落ち込んでるんでしょ?ふふっ、ほんと、優しすぎて、真剣すぎて笑っちゃったよ〜」


どうやら悟りレベルで心を読まれているらしい。

まぁ無理もないか。こんな状況で、なぜか当事者じゃない俺が、こんな態度をとってるんだから。


場を和ませるように気を遣ってくれたんだろう。



「気を遣って言ってるとかでもないからね?いや、ほんとに。ってかこんだけ心配しておいてもらって悪いんだけど、私、もうそこまで取り乱してないから」


「......そうか......」



まだ気を遣って......。



「いやだから、その顔!気を遣ってるって思ってるの、顔に書いてるから!なんも遣ってないからね!?それに、本当にもう大丈夫だから!」


「あ、あぁ......そうか。ならいいんだけど。でも織。お前さっきまであんなに不安そうに落ち込んで......」



そう、さっきまで、病院に行く前と行く途中のあの織の態度を見て、大丈夫だなんて、俺には思えなかった。



「そりゃね?元カレにヤられてすっごくパニックにはなったよ?もしデキちゃったらどうしよう、学校とか就職どうしよう、って怖い想像が頭の中をぐるぐるしてた。

でも、識がしっかりサポートしてくれて、ずっと『大丈夫』って声かけてくれて、それで......私のために、そこまで怒って心配してくれて。

そんな識のおかげで私はもう大丈夫です!............ほんとにありがとね、識」



俺が口をはさむ間もないまま、『大丈夫だ』ということを一息で説明しきった織。

その表情は本当に心の底から大丈夫そうで。


なんなら少し幸せそうな笑みをたたえているまである。



「いや、俺はなんもできてないから......。でも、織がよくなったっていうなら、それはよかったよ」


こんな織の顔を見られて、今度こそ俺もほっと息つく。



ドサッ。


「......あ、安心したら腰が......。うわ、かっこわりぃ......」


力が抜けて立てなくなってしまった。

さっきまでカッコつけていた部分があるだけに、余計に恥ずかしい。



だけど、織はそんな俺を見て、穏やかにほほえみながら俺のそばに寄ってきて、ぎゅっと俺のことを抱きしめながらつぶやいた。


「ほんとに、ほんとーに、ありがとね。大好きだよ、識。こんな汚れた私に言われても、嬉しくないと思うけど、好き。愛してる」


「んな!?何いってんだ織!?」



唐突な告白に、凄い勢いで全身に血がめぐるのを感じる。


「何って......告白だよ。愛の告白。......まぁ、彼氏に中だしされて別れてから何時間も経ってないのに別の人に告白とか、そりゃあ何考えてんだって思うよね......」


「ま、まぁそうかもな......?」


「でもさ、もともと・・・・大好きだった・・・・・・のに、こんなふうにピンチなときに、いつも落ち着いてる識が、自分のことではほとんど取り乱さない識が、あんなに感情的になって助けてくれたんだよ?そりゃ、余計に好きになっちゃうよ......。

でもね......応えてくれなくていいからね。

こんな汚された女、識は抱きたくないだろう......し?............あれ?」



汚れたとかなんとか色々言っているけど、別にそんなに気になるもんでもない。

それを言ったら俺も何人もの女性を汚してしまってきてるわけだし。


それよりも今問題なのは......。



「い、いや、な?今安心して気が抜けてるからとか、最近ご無沙汰だったのとか......。あ、あと久々に織のおっぱいに顔埋めたらいい匂いして柔らかくて......。と、とにかく、ごめん!」



前から抱きしめられて、胸の位置で顔を抱きしめられていたせいだ。


俺のナニは立派なテントを設営していた。



「ほんとにごめん!男のコレで嫌な思いしたばっかりなのに、こんなの織への裏切りだよな......。ちょっと外出て風あたってくるから、織は部屋でゆっくりしてて......くれ?」



立ち上がって言い切ろうとする俺を、織は抱きしめる力を強めて引き止める。



「あはっ。他のひとのはダメだと思うけど、識のなら大丈夫。うんん、むしろ嬉しい♫」


さっきまでより輝くような笑顔で答える織。



「え?」


「だって、私のこと、汚い女だって思うんじゃなくて、こうやって興奮してくれてるってことでしょ?私のこと、ちゃんと女として見てくれてるってことだよね?」


「そ、それはそうだけど。でも、嫌な思いしたばっかりだろうに......、俺性懲りもなくこうやって織の前で......」



むりやり生でやられて、心に傷を負ったばかりの彼女の前で見せて良いものじゃない......と思ったんだけど。



「私が嬉しいって言ってるんだからいいの!」


「そ、そう......」


そうらしい。




「それで、なんだけどさ......」


織がいつになく歯切れが悪い。

普段ならこんなとき、織が何を言いたいのかわかるのに、今は頭がうまく回っていなくて想像がつかない。



「識は今、彼女さんいないんだよね?」


「お、おう。よく知ってるな......」


「うん、依綯いなちゃんに聞いたから。また・・振られたみたいだよって」



依綯いなというのは、もともと俺と織が出会うきっかけになった、俺と同じ学部の女友達、やまにれ依綯いなのことだ。


俺とやまにれは同じ学部で、1年の頃からよく一緒に遊んだりする仲。

それで梗と織は、高校時代からの親友らしい。


確かに俺はついこの前あいつと飲みに行って、振られた話をしたっけな。

それが織にも伝わっていたということらしい。



「そ、そっか。まぁうん、そうなんだ。俺にはもう愛情は感じないってさ」


自分で言ってて悲しくなるけど、この人生、これまで7人の女性と付き合って、そのほとんどは相手からアプローチしてくれたものなのに、全部の恋愛が「俺振られる」ことで幕を閉じている。

だから、今更振られたことを長く引きずるようなメンタリティも捨て去ってしまっている。




「そうなんだ......よかった......」


「よかったって、お前......」



まじで頭がまわらなくて、いつも以上に脊髄で会話している感覚に陥っている。



「よかったよ。識がフリーで。それならさ......だったらさ......」


「うん......?」


「やっぱり私が識の彼女に立候補しちゃ、だめかな?」






「......え?..................えぇ!?え、あ、えっ?あぁ......そうか......そうだよな......」



最初何を言われたのか分からなくて、次に正式に告白されたことに気がついて動転して、最後に確かにさっき「大好き」とか「愛してる」って言われたんだからこうなる展開は全然予測できたものだろって了解できて。


そんな、驚いたり納得したり、いっしき一人芝居を繰り広げた俺は、不安そうにこちらを見つめる織を見つめ返す。



「俺で良いのか?」


「識がいいんだよ」


「......もし別れたりでもしたら、俺たちもうこれまでみたいな関係には戻れないかもしれないんだぜ?」


「あはっ、やっぱり識も同じようなこと考えてたんだね。大丈夫、絶対離さないから。あり得るとしたら識が私のことを捨てるときだけだよ」



凄い熱量でまっすぐな思いが伝わってくる。



「......さっき、「もともと好きだった」みたいなこと言ってたけどさ、それってちなみにいつから、とか聞いても良いのかな......?」


俺はつい、告白の返事を棚上げして、さっきの告白を受けて気になっていたことを聞いてしまう。



「もぅ、質問多いなぁ。いい雰囲気だったのに......。でも、いいよ。もちろん答えるよ。それはね、ほとんど最初からだよ」


「最初?最初ってどの?」


「出会ったばかりの頃にはほとんど一目惚れだったなぁ。でもそのとき識にはインカレサークルで出会ったとかいう彼女がいたから諦めてたの」


「そ、そうだったんだ......。それは気づいてなかったな......」



そのころって、大学1年の5月とかか......。

そのころはまだ織のことはやまにれの友達ってくらいの認識しかなかったっけ。



「そっかぁ。じゃあ、私が識のお部屋に入り浸るようになってからは?流石に気づいてたよね?」


「あぁ、それは......なんとなくは......」



織が俺の部屋に居座るようになったきっかけ。

確か、俺と織と梗の3人で、ある程度仲良くなってから飲み会したときだったかな。

ちょうど俺が彼女に振られたばっかり、織も彼氏がえっちを迫ってきて気持ち悪く感じてしまって別れたばっかりって状況だった。


織はそのとき相当ストレスが溜まってたのか、ガバガバ飲んでフラフラになってしまったから、俺の家で泊めることにした。


酔っ払った織は、俺とならえっちできそうとか言って服を脱ぎだして、俺も酔ってたから強く拒否することなく応じたんだよな。


あのとき膜が破れて血が出てきた時はびっくりした。

さすがに彼氏が2人いたら経験済みだと思ったんだけど、そんなことはなかったらしく......。


それからうちに居座りだしたんだよな。



「なんとなくなのかぁ......。もっとアピールしとけばよかったのかなぁ。普通好きでもない人に処女あげると思う?」


「い、いや普通はないと思うけど......普通じゃない人なのかもって思って......」


「ふふっ、ひどーい!」


「うっ、ごめん......」



自分は別に鈍感じゃないと思ってたし、ちゃんと薄々は気づいてたけど、楽な関係を壊したくなくて、よくない選択をしてしまっていたらしい。



「あはっ。でも私も、楽な関係のままでいたいっても思ってたし、お相子だよっ」


また心を読まれたらしい。



「けど、酷いよね。私が毎日のようにお部屋に行って、いっぱいえっちしてあげてたのに、よその女の子といい感じになっちゃってさ?あのときはさすがの私も裏切りだ〜って思ったよ!」


そういえばそうだった。

織との関係は心地よかったけど、俺も普通に恋愛してオトモダチじゃなくて彼女・・がほしいって思ってたのもあって、合コンで出会った人と付き合いだしたんだったな。



「面目次第もございません。あのときも、なんか追い出すみたいになっちゃって、ごめん......」


「ほんとだよっ!あの時が一番つらかった!」


「でも織だってすぐに男見つけてよろしくやってたじゃん」


「そんなの半分は、識への当てつけみたいなもんだよ。幸せそうにしてる私を見て後悔しろ〜って」



なんと!?



「いや、もちろんその時の彼のことも大事には思ってたよ?同じサークルのメンバーで、ちょっとは気が合ったしね。でも私の心のどっかには識がいたの。

だからその人ともエッチするまで1年以上時間置いたし」


「あぁ......、その彼が『処女じゃなくてがっかり』とか言ったバカってわけか......」


「そういうこと」


今となっては、俺の・・織に手を出しやがってって怒りの気持ちも若干あるけど、1年も焦らされるってのはちょっと気の毒ではあるよな。



「それでその次が、今回私を困らせてくれた彼ってわけ。まぁそのときも、本当は識が止めてくれたら嬉しいなって思いもあったんだけどね......。まぁそれは言い訳。

でも......ごめんね。私、識以外の男の人にも抱かれちゃった......やっぱり汚いよね」



あぁっ。

楽しく話せてたのに、俺のせいでまたネガティブモードに......。


そんな程度、汚いわけないのに。


ってかいい加減返事しないとだよな。



「汚いわけない。むしろそいつらと比べても、俺のところに戻ってきてくれたんだろ?

ほら、どっかの歌手も歌ってんじゃん、『たくさん比べて何百万の選択肢から選んでほしい』ってさ。

それに、俺のせいで回り道させちゃったのに、そんな俺が責めるなんてできないよ」


「し、識......」



口元を手で抑えるようにして、再びうるうると目元をうるませる織。

でもこの涙は悲しみに暮れたものじゃないってことは、この表情をみればわかる。



「織。いろいろ嫌な思いをさせちゃった俺だけど。こんな俺でよかったら、絶対に、なにがあってもキミを幸せにするので。どうか......どうか俺のお嫁さんになってくれませんか!?」








「おっ、お嫁さん!?いきなり!?彼女とかじゃなくて!?」


「ん?だって、俺のこと離さないでいてくれるんだろ?なら、その方が固い約束になるかなって」


「そ、そうだけど!う、嬉しいけど!......え〜!?いきなり過ぎてどうしよ〜!?」


「ど、どうしようって......断られる可能性あるの!?」



こ、この展開でプロポーズ失敗の流れは読めなかった!


「あ、あははっ。違う違う!うん、そうだね、識大好き!私をあなたのお嫁さんにしてください!」


「......よ......」


「よ?」





「よっしゃああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!」



「わっ、びっくりしたぁ〜。ふふふ、そんなに喜んでくれるなんて、嬉しいなぁ............でも............」


嬉しそうな表情が一変。

織は自分の下腹部をさすりながら落ち込んだ表情でうつむく。



テンションがアガって、アドレナリンがたくさん出てる今なら、思考がとてもクリアで、織が考えているのであろうことがわかる気がする。



「織。あんまりこういうことを言葉に出して言うのは良くないかもしれないんだけどさ......。

もしかして、元カレくんの種がはらに注がれたのを思い出して、罪悪感を感じてたりする?」



「っ!?......そうだね、識の言う通り、幸せだけど、反対に私はついさっき中まで汚されたばっかりで......。あの感触がまだ残ってる気がして......。識を裏切ってるみたいで、ちょっと、嫌、かな」





「そっか......。気にしないで、とか言っても意味ないんだろうけど......」



そう、こういうのは本人の心の持ちようの問題でもある。


今回は事件から長く時間を置いて傷が広がる前に対処できたからよかったものの、受けたばっかりの心の傷はまだまだどうやっても痛むだろう。

こればっかりは本人に乗り越えてもらうしか無いのかもしれない......。




「ねぇ、識?もし......もしなんだけどね?識さえ気持ち悪くないっていうなら、なんだけどね......?」


「うん?」





「識ので上書きしてほしいなって......思うんだけど......やっぱり、嫌かな......?」



潤んだ瞳の上目遣いで見つめてくる織の攻撃力は高かった。




「い、いいのか!?俺は嬉しいだけだけど......、その、怖いんじゃないか?」


「うんん、さっきも言ったけど、識のなら恐くないと思う。識はいっつもすごく丁寧にしてくれるから、他の人みたいに痛くなくて、気持ちよさしかないし......。それに、今ならもらってきたアフターピルもあるから......ね?どうかな?」





「織がいいっていうなら、その据え膳、謹んでいただきます!」




「はいっ、召し上がれっ!」




*****






望月もちづきく〜ん、しきちゃ〜ん、結婚おめでとー!かんぱーい!」


ざわざわと騒がしい居酒屋の一角で、やまにれが乾杯の音頭を取る。



依綯いなちゃん、ありがとぉー!」


やまにれ、ほんとうにありがとう。お前がいろいろ気を利かせてくれたおかげで俺たちは一緒になれたよ。まじでいろいろ感謝してる」


大学での友達付き合いは、高校までみたいに一緒にいる時間が長いやつが少ないせいか、その多くは薄っぺらくなりがちだけど、こんなに良くしてくれる仲間にであえたのは、本当に幸運だったよ。



「ふふふ、良いってことよ!お幸せになるんだよ!」


「うん、依綯ちゃんの分も私、幸せになるよ!」


「私の分の幸せは持っていかないで!?私死んでないからね!?残しておいてよ!?」


「あははは、大丈夫だって。梗はまじでいい女だからな。絶対すぐにいい男見つかるよ。根拠とか無いけど」


「そこは根拠あっててほしかったよ!」


軽快な時間が楽しい。

俺と織がべったりな中で、部外者一人みたいな立ち位置なのにこんなにフランクに接してくれるのも嬉しい。


梗はよくできたやつだと思う。


なんて梗の方をしばらく見ていたからか、織が不機嫌そうに俺の方を見つめていた。



「むぅ......識〜?依綯ちゃんと浮気とかしたら許さないよ!」


「こんなに可愛い織がお嫁さんになったのに、浮気なんてするわけないだろ!俺に謝れ、織!」


「えっ、ごめんなさい......ってなんで私が謝るのよ!識こそ、依綯ちゃんを必要以上に褒めないで!依綯ちゃんは素敵な子だから奪われちゃう可能性あるから!だから識が謝って!」


「はいはい、ごめんねごめんね〜」


よしよしと頭を撫でると、猫みたいに目を細めて気持ちよさそうにする織。



「おぅおぅ、熱い熱い。織ちゃんも頭なでられただけですっかり発情しちゃってるみたいだし」


「なっ!?発情してないよ!」


「し、織!?声がでかいって!」







あれから3年と少しが経って俺たちは24歳になった。


俺も織も梗も、全員無事大学を卒業でき、今はみんな社会人3年目。


俺たちはようやく籍を入れることにした。


今日は俺たちのキューピッドをしてくれたやまにれと久々の飲み会だ。




「それにしても、これで2人とも『もちづき しき』さんになっちゃうわけだ〜。これからもっと区別が難しくなるね〜」


そう、梗の言う通り、織には俺の苗字をもらってもらうわけでけど、そうすると名前のかぶり方がすごいことになる。



夫、望月識。

妻、望月織。



市役所に婚姻届を持っていったときも、係の人に何度か確認されたくらいだ。


読みも漢字もほど近い俺達。

誕生日も一緒。


性格やら価値観もとても良く似ている俺たち。



「確かにな。これから俺たちは、これまで以上に似たもの同士になるってわけだ」


「だねっ。ほとんど一心同体みたいなもんだ!」


「え〜、名前の話でものろけるの〜!?もういいや!もっといちゃつけー!望月もちづきシキさ〜ん!」






その梗の掛け声に、俺と織は一瞬顔を合わせて笑い合って、元気よく返事してやった。


「「はーい!」」

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似たもの同士なオトモダチのキミを幸せにしたい 赤茄子橄 @olivie_pomodoro

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