読後感の悪さが褒め言葉になる唯一のジャンル

淡々と、淡白な文体で綴られるある家族の話。
この物語は何の解決も提示してくれない。
後味が悪いのだ。
寝起きに飲んだ深煎りのコーヒーのように、いつまでも舌に居座る苦み。
普通の小説ならば、後味の悪さというものは決して加点にはならない。
しかし、ホラーというジャンルに限っては、褒め言葉になり得る。

本作は、読後感の悪さが、作品全体になんとも言えない薄気味悪さを醸し出している。
驚くほど上質なホラー体験ができるのだ。