余計な装飾を排した簡潔な文章で読みやすいのですが、薄い印象は全くありません。状況描写だけであるにもかかわらず、それらが正確に配置された仕掛けのように、登場人物の心情を表しています。
透明感のある無駄のない文章は、作中の姉や主人公の心情に非常によくマッチし、家の中に静かに澱が重なっていくような、冷たい湖の底にいるような気分にさせます。湖の底は一年を通して生物の活動が抑えられ、何も腐らず、何も生み出さない。AM2:00という題名は、この作品の性格をこの上なくよく表していると思います。
姉は何を望んでいるのでしょう。姉と一緒に凍った家族の時間は、いつ動くのでしょう。ただ現れ、そこにいるだけの姉の存在は、あまりにも哀しい。今は誰も、解決策を見出せない。しかしいつか、家族みんなで前に進める時がくれば良いと願います。