第2話
笹倉探偵事務所までは、車でほんの三十分くらいだった。
人生で初めての探偵事務所のドアを前にして、緊張でチャイムに延ばす手が震える。
ピンポンと軽快な音が響き、開いたドアの向こうには三十代後半くらいのスーツ姿の男性がいた。
広告の写真より少しだけ年上に見える彼が、探偵の笹倉尚人さん本人だった。
やはり私のかつての恋人に雰囲気が似ている。あの頃のあの人はもっとずっと若かったけれど。
事務所の中は意外に明るい。笹倉さんに案内されて、パーテーションで区切られた応接コーナーのソファーに座った。
「予約してくださった
「はい。よろしくお願いします」
「ご依頼は昔の恋人を探してほしいとのことですが」
「はい」
「ではまずこちらにご記入ください。分かるところだけでいいですので」
ソファーに座ってアンケート用紙を埋めていく。
私の住所、氏名、年齢。ここら辺はしっかりと免許証で確認もされる。依頼者の秘密は守られるとはいえ、この事務所の中で私の情報は丸裸だと思うと少し怯む。
でもせっかく来たのだから。
そしてあの人の名前。出会った場所。知っている限りのあの人の情報を書いて、笹倉さんにアンケート用紙を手渡した。
「依頼したい内容は……十年前に付き合っていた恋人が、当時あなたの他に付き合っていた女性がいたかどうかですか? 現在の状況ではなく?」
「ええ」
「では詳しくお話を聞かせてください」
「はい。私とあの人は当時使っていたSNSで知り合いました」
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