白鷺の宿

貴音真

シラサギ…

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「ん…あっ…んあ…」

 俺はまるで初めて女を知ったかのように無我夢中で目の前にいる少女を犯していた。今にも折れてしまいそうなほどに華奢な少女のその肉体は明らかに未成熟であり、例えそれが同意の上であろうとなかろうと、俺がその少女としている事は社会的には犯罪と言われても仕方がない行為だった。

 なぜ俺はこんなことをしているのだろうか?

 頭の中ではやめようとしているのに体が勝手にそれを続けている。頭と体の制御が一致しない。脳髄からの指令を肉体が受け入れてくれない。

 俺は狂ってしまったのだろうか?

 全てはこの宿に来たことから始まった───


 もうどれくらい歩いただろうか?

 夕暮れ時に降り始めた雪は瞬く間に吹雪となり、気がついたら俺は登山コースを大きく外れていた。来た道を戻ろうにも一面真っ白な雪景色に覆われている為に方向感覚が働かない。ほんの僅か前に残した筈の自分の足跡すらも消してしまうほどの猛吹雪はまるで俺を異空間に連れてきた様だった。

 少し進んで振り返ればそこは来た道ではなく新たに進む道となり、進めば進むほどに俺は自分がどこにいるのか、どこへ向かっているのかがわからなくなっていた。

 俺は完全に遭難していた。

 遭難してしまった場合、下手に動けば余計に迷う為、その場でやり過ごすのが最善策だと聞いたことがあるが、この猛吹雪の中で足を止めたらすぐに雪に埋もれてしまい、二度と歩みを進めることが出来なくなる。そう思った俺は決して歩みを止めなかった。

 俺はひたすら雪の中を歩き続けた。

 歩いて歩いて歩いて歩いた。

「ふう…もう八時過ぎか…」

 スマートフォンで時間を確かめると、自分で自分が遭難したと気がついてから既に三時間近くが経過していた。電波強度は相変わらず圏外を示し、寒さで壊れたのか、GPS機能は全く機能していなかった。尤も、圏外である以上はGPS機能が使えていたとしても即位が出来ないのだから意味がない。

 俺がバカだった…

 俺は自分が遭難した原因がはっきりとわかっていた。それは俺自身の過ちだった。

 今から凡そ八時間前、俺は登山上級者であっても複数人でチームを組んで踏破するこの連峰へ、あろうことかたった一人で時計も方位磁石も持たずに足を踏み入れた。動画の再生回数を稼ぐ為だけにこの無謀な挑戦を試みた結果として俺にもたらされたのがこの遭難という現状であり、或いはその先の更なる結末が待っていることも否めない。

 下手をすれば死ぬ。

 元々丸二日掛けて踏破する予定だったことから食料は十分にあるが、これほどの猛吹雪になるとは想定おもっていなかった為に雪の中での寝泊まりに対する備えは決して万端とは言えない。アルミシートと電熱線が巡らされた衣服によって寒さへの対策は問題ないが、肝心の寝床を確保するすべがなく、俺が寝る為には雪が吹き込まない洞穴などを見つけなくてはならない。

 俺は寝床を求めて歩き続けた。

 歩いて歩いて歩いて歩いた。

「えっ!!?」

 それを見た瞬間、思わず大声を出していた。

 白い雪と黒い闇に包まれながら歩き続けていた俺の僅か数メートルにそれはあった。

 白、白、白、白…

 壁も屋根も扉も全てが白い建物がそこにあった。

 雪山に溶け込む様に存在しているその建物はレトロと呼ぶには古すぎる日本家屋で、どういうわけかその建物の周囲だけ雪がほとんど積もっていなかった。地面や壁などに何らかの装置を内蔵し、その装置が熱を放つことによって雪を溶かしているのかも知れないが、それにしても明らかに異常だった。

 雪が建物をけている…

 俺は直感的にそう感じた。

 無論、雪に意思などなく、その直感が的外れであるのは明らかだが、そう感じるほどに異常な光景ということは間違いなかった。

「いらっしゃいませ…」

 不意に女の声がした。

 その声が聞こえた先には女がいた。それは女というにはまだ幼い少女だった。

 いつの間に扉を開けたのか、その少女は開け放たれた真っ白な建物の扉の向こうから俺に声を掛けていた。

 俺はその声に誘われた様に建物へ近付いた。

「いらっしゃいませ…白鷺へようこそ…」

「シラサギ?」

「この宿の名です…」

 その建物は宿だった。

 白、白、白、白…

 建物だけでなく、そこにいる少女の着物も肌も透き通る様な白一色に包まれた白鷺という名の宿。

 俺は突然目の前に現れたその宿に異様な何かを感じながらも猛吹雪の中を何時間も歩き続けた疲労と、人に会えたという安心感から引き込まれる様にその宿へと足を踏み入れた。

「お泊まり…で、よろしいですね…」

「あ、ああ…泊めさせて貰おうか」

 俺は答えると同時に生唾を呑み込んだ。

 抑揚のない声で話す少女の手にしているランプの火が揺らめく度に少女の肌が艶かしい光を放っている様な錯覚が俺の頭を支配した。

 押し倒したい…

 この場で今すぐにこの女を犯したい…

 俺は会ったばかりの少女に対して嘗て感じたことのないほどの劣情を抱いていた。

「あの…お食事はいかがなさいますか…」

「適当でいい。出来れば鍋とか体が暖まる物がいいけど無理なら…」

「わかりました…それではお部屋へとご案内します…」

 案内された部屋はごく普通の六畳間の和室だった。その部屋は宿の一室というより単なる戸建の一室という感じだったが、隅に置いてある七輪のお陰で部屋の中は全体的にほんのりと暖かく、雪に埋もれて死ぬ可能性があった野宿とは比べる事すら愚かしいほど素晴らしい環境の部屋だった。

 部屋へ向かう途中、少女からこの宿についてあれやこれやと説明された気がするが、俺の耳にはその声は全く届いていなかった。

 俺は自分の二三歩先を行く少女の後ろ姿に見蕩れていて何一つ聞いていなかった。腰の辺りまで伸びた艶やかな黒髪と触れたら折れてしまいそうなほどの華奢な体から発せられる衣擦れの音が俺を酔わせた。外の雪が周囲の音を掻き消しているからなのか、少女が動く度に着物の擦れるその音が響き、その音が響く度に俺の頭を何かが打った様な気がした。

 犯したい…犯したい…犯したい…犯したい…

 今すぐにこの女を死ぬまで犯し続けたい…

 そんな衝動が俺の頭を過った。

 だが、俺の理性は欲望にまみれたその衝動を抑え込めていた。どんなにそうしたくてもそれをしてはならない。どんなに魅力を感じてもそれをしたら終わり。

 本能に身を委ねてはならない。

 俺の理性はしっかりと働き、食事を届けに来た時も七輪の炭を交換しに来た時も、俺は何事もなかったかの様に少女を見るだけで済ませていた。

 そして、午後十一時を回った時だった。

「あの…お客様…」

 不意に少女が部屋に来た。

「なんだ?何か用か?」

 俺は少女に興味のない素振りを装った。

「先ほどご説明したのですが…」

 先ほどご説明した?

 俺には少女のその言葉が何を意味しているかはわからなかったが、何を言わんとしているのかはわかった。

「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしていたから聞いてなかったんだ」

 犯したい…犯したい…犯したい…犯したい…

「そうですか…それでは、もう一度ご説明致します…」

 犯したい…

 そう言うと少女はこの宿と俺の置かれた現状について説明した。

 犯したい…

 この宿には本来三人の従業員がいるが、残り二人の従業員が月に一度の買い出しに行ったところにこの猛吹雪が発生した為、今に限っては少女が一人で切り盛りしていること。

 犯したい…

 従業員を足止めしている吹雪は二日から一週間程度続くという予報が出ているが、幸いにも現在の宿泊客は俺一人で従業員も少女一人な為、俺さえよければ向こう二週間くらいはここに泊まっていても構わないということ。

 犯したい…

 この宿は登記されていない秘密の宿であり、その存在を知る者はごく一部の者しかいないことなどを少女は俺に説明し、最後にこう言った。

 犯したい…

「ここは、浮世とは少しだけ異なる場所なんです…浮世では赦されぬあらゆる欲望もここでなら吐き出せると信じ、人はここを訪れるんです…あるいはあなたも…」

 犯したい。

 少女の言葉を最後まで聞いたのか、或いは最初から聞いていなかったのか、気がつくと俺は少女を犯していた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「ん…あっ…んあ…」

 俺はまるで初めて女を知ったかのように無我夢中で目の前にいる少女を犯していた。今にも折れてしまいそうなほどに華奢な少女のその肉体は明らかに未成熟であり、例えそれが同意の上であろうとなかろうと、俺がその少女としている事は社会的には犯罪と言われてしまっても仕方がない行為だった。

 なぜ俺はこんなことをしているのだろうか?

 頭の中ではやめようとしているのに体が勝手にそれを続けている。頭と体の制御が一致しない。脳髄からの指令を肉体が受け入れてくれない。

 俺は狂ってしまったのだろうか?

「くっ…うっ…」

「あ…お客様…」

 俺はありったけの欲望を少女の肉体へぶちまけた。

 その瞬間、少女は俺の眼を視て微笑みながらこう言った。

「ようこそ白鷺へ…これであなたも正式なお客様です…」

 あまりにも冷たく無感情な少女の声と微笑みに、俺の全身に恐怖と呼ぶには生ぬるいほどのが駆け巡った。

 こいつは何者だ?

 ここはなんなんだ?

 俺は何をしているんだ?

 欲望をぶちまけ、全身を戦慄に支配されても尚、俺の肉体は脳髄の「やめろ」という指令に反して少女を犯し続けていた。

 やめろ…やめろ…やめろ…やめろ…

 もうやめろ…

 どれほど頭で止めても、どれほど脳髄で指令を出しても、俺の体は、俺の肉体は決してそれをやめようとはしなかった。

 死ね…死ね…死ね…死ね…

 殺す…殺す…殺す…殺す…

 不意にそんな衝動が去来した。

 犯されて死ね…犯されて死ね…犯されて死ね…犯されて死ね…

 犯して殺す…犯して殺す…犯して殺す…犯して殺す…

 これは俺の欲望なのか?

 俺は俺自身に問い掛けた。

 犯され死ね…犯され死ね…犯され死ね…犯され死ね…

 犯し殺す…犯し殺す…犯し殺す…犯し殺す…

 やめてくれ。

 俺はそんなこと望んでない。

 俺は俺に呼び掛けた。

 犯す殺す犯す殺す犯す殺す犯す殺す死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…

 違う。

 そうじゃない。

 何かが異常おかしい。

 異常おかしい異常おかしい異常おかしい異常おかしい…

 俺は異常おかしいのか?

 俺が異常おかしいのか?

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…

 駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ。

 心の中で呼び掛ける俺の思いに反して俺の両手は渾身の力で少女の首を絞めていた。

「ぐが…ごえ…ぇごっ…」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 やめろ、やめろ、やめろ、やめろ。

 殺すな、殺すな、殺すな、殺すな。

 頼むから殺さないでくれ…

 まるで自分自身へ懇願する様に俺はそう思い続けたが、その思いは少女の下半身から流れ出る生ぬるい液体と握り締める両手の下から伝わる感覚によって、それが既に手遅れだという現実に置き換えられた。

 その瞬間、嘗て聞いたことのない鈍い音と共に俺の両手が少女の首の奥深くへと沈み込んだ。

 死んだ…

 殺した…

 少女の首の骨が折れ、その肉体が小刻みに痙攣した。

 俺が殺した…

 そう自覚した瞬間に俺は再び少女の肉体へ全ての欲望をぶちまけていた。

 既に苦しみの声すら発することも出来ず、ただひたすらに細く荒い呼吸を繰り返す少女の肉体は絶え間なく痙攣しながら生ぬるい液体を出し続け、俺の下腹部と不自然に白く染められている畳はその液体で濡らされた。

「はぁ…はぁ…はぁ………なんてことを…俺はなんてことをしてしまったんだ…」

 やっと肉体が脳髄の指令を受け入れ、俺は俺自身の意思で言葉を発した。

 これまでの自分の人生の崩壊を予感した俺は全ての想いを込めた大声で発したその言葉を発した筈だったが、実際にはただ呆然と呟いた様な小さな声を漏らしただけに過ぎなかった。

 殺した。

 俺は少女を犯してくびり殺した。

 全身が震え、涙が溢れた。それと同時に目の前が真っ白になるほどの恐怖と快感が俺の脳髄を支配した。

 今いる場所が白一色の部屋であることすらも認識出来なくなった白い世界の中で俺は嘗てない興奮に包まれた。

 そして、二度目の瞬間から何もしないままに俺は脳髄から全身を駆け巡った三度目の欲望を少女の肉体へぶちまけた。

 その瞬間にそれは始まった。

「ふふ…」

 目の前に拡がる俺自身の意識が生み出した白い世界の中にその声は響き、まるでその声がを払う様に俺の視界はゆっくりと視覚が取り込んで頭へと映し出した白い部屋へと引き戻された。

 俺の頭の中に聞こえたその声、それは確かに俺がくびり殺した筈の少女の声だった。

「ふふふ…」

「ひいっ!!?」

 二度目の笑い声が聞こえると共に両手の中で喉が動く確かな感触が伝わり、俺は咄嗟に両手を離していた。

 死んでないのか?

 そう思った俺は床に転がったままで痙攣している少女の肩を掴んで抱き起こした。

 だが、やはり少女の首の骨はし折れていて、何度揺さぶっても折れた首が体のてっぺんで直立することはなかった。

「ふふふふ…」

「うわあっ!!?」

 首の骨が折れ、喉が潰れ、口から赤い泡の様な血を噴き出しながら痙攣している少女の笑い声がはっきりと聞こえた。

 その声は、聞こえたというよりも直接頭の中に届けられた様に思えた。

「おにいさん…どうでしたか…」

 どうでしたか?

 少女の声は俺に何かを尋ねていた。

 何を言っている?

 俺は言葉くちにはしなかったが、少女へき返した。

「どうでしたか…これが白鷺です…」

 その言葉を最後に意識は再び白い闇に呑まれ、俺はゆっくりと瞼を閉じた。


「───証言は以上です。続いてこれは…」

 瞼を開けると見知らぬ男が喋っていた。

 その男は立ったままで話を続け、何かが書かれた紙の束を手にして観衆に向かって何かを説いていたが、その男のその行為が何を意味しているのか、それにいったい何の意味があるのか、俺には全くわからなかった。

 ただ、その場所が白一色ではないことだけはすぐにわかった。

 白、黒、茶、紺…

 様々な色が辺りに拡がっていた。

「白鷺はどこに…」

 俺はそっと呟いたが、それを気に止める者はいなかった。

 それから暫く経ってから一番高い場所に座っていた偉そうな男が俺に向かって何かを言った後、観衆に向かって何かを宣言した 。

 被告人、責任能力、無罪、療養…

 辛うじてそれらの単語だけは聞き取れたが、俺はその単語が意味することを理解出来ないままに隣にいた男にその部屋から連れ出された。

「死刑にしろ!」

「そのヒトデナシを殺せ!」

「くたばれ強姦魔!」

「不当裁定だ!」

「死ね!社会の敵は死ぬべきだ!」

 観衆が俺に向かって怒鳴る声がした。

 それは、敵意と呼ぶには生ぬるい感情が込められた剥き出しの怒りの言葉だった。

「白鷺…」

「えっ?今の声は…」

 観衆からその言葉が発せられた瞬間、俺の視界は再び白い闇に包まれた。

 その声は、あの少女の声だった。


 白い闇から抜けるとそこは人気のない林の中だった。

「や…べて…ぐるじび…ぉごえ…」

 俺の目の前で学生服を来た少女が悶え苦しんでいる…

 俺の意思とは関係なく、俺の両手がその少女の首を絞め、圧迫された少女の喉奥からは薄紫色の舌がり出ていた。

 強く、より強く…

 俺は少女の首を絞め続けた。

 その行為によって絞り出されたのか、少女の肉体から漏れ出た生ぬるい液体が少女の顔と股間を濡らしていた…

 涙、はなみず、涎、尿…そして、血。

 目、鼻、口、陰部、喉元。

 絶え間なく溢れ出る生ぬるい液体は少女の生命の証だった。

「………」

 俺がどれくらいその行為を続けていたのかわからないが、気がつくとその少女は動かなくなっていた。

 少女の顔面は涙とはなみずと涎にまみれ、陰部は尿に濡れていた。そして、俺の両手に包まれた少女の喉元からは第二関節まで食い込んだ俺の指先を伝って流れ出る血で染まっていた。

 俺は見知らぬ少女をくびり殺した。

 いや、絞め殺したという方が正しいのかも知れない。

 そんなことを考えていると不意に頭の中で声がした。

「白鷺へようこそ…」

 それは、どこかで聞いたことがある様な、生まれた時から脳裡に刻み付けられていた様な…

 そんな不思議な感覚を抱かせる声だった。

「白鷺…ははは…シラサギ!」

 思わず叫んでいた。

 

 その言葉が俺にこの行為を繰り返させた。

 俺は夜な夜な町を彷徨き、目をつけた少女を力ずくで組伏せると人気のないところへ連れていってくびり殺した。それは、俺にとって何の意味もなかった。

 俺の意思とも少女の意思とも関係なく淡々と行われるその行為は何の意味もなく繰り返された。

 やがてその行為が俺の素性と共に明るみに出ると、俺は数十人の少女を殺した連続殺人犯として逮捕された。

 だが、逮捕されたことによって普通の人生を失ったという事実すらも俺には何の意味もなかった。

「シラサギ…シラサギ…シラサギ…シラサギ………そうだ、白鷺の宿だ」

 俺は白鷺の宿について語った。

 密閉された部屋で問い詰める男に、透明な壁を挟んで問い掛ける男に、として与えられた個室の中で何かを説く男に…

 俺はあの日、雪山で遭難した時に訪れた白鷺の宿について、その時に体験した全ての出来事を語った。

 あれは現実にあった事なのだろうか?

 語りながら俺はゆっくりと白い闇に呑まれていった。

 自分が何を言っているのか、自分に何が起きたのか、自分が何をしたのか…

 白い闇に包まれている俺にとってそれらがわからないことに何の意味もなかった。

「白鷺へようこそ…」

 その少女の声だけが白い闇と現実の狭間を行き来する俺にとっての唯一の現実だった。

 白鷺の宿へ行きたい…白鷺の宿へ行きたい…白鷺の宿へ行きたい…白鷺の宿へ行きたい…

 俺は白い闇の中でただひたすらにそう願い続けた。




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白鷺の宿 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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