神に恋した人間のお話
蒼月 櫻
神に恋した人間のお話
どうも、初めまして。
これから私が語るのは、神に恋した人間のお話。
まずは自己紹介から始めよう。私はエマ。元二次界の住人。
貴方は?
素敵な名前だね、よろしく。
違う世界で生きた貴方には、私の世界の説明から始めなければいけないね。
数字が示すように、二次界は一次界の下にある。空間的にも秩序的にも。
一次界には神様が住まい、二次界には人間が住まう。三次界まであるのだけど、一次界と二次界とは違い、それは神様たちの都合で「三」次界と呼んでいるだけなんだって。
一括りに「悪魔」と呼ばれるそれらの住まう三次界は、実際には異次元だとか。
貴方達の世界にも神様はいるの? 神話と呼ばれるそれらは事実ではないと考えられている?
へえ、こちらとは全然違うんだね。神様が実在する私の世界で、神様を疑う人なんているわけがなかったから。
二次界は神様の玩具みたいなもの。稀に生まれる超人を気まぐれで神にしたり、逆に一次界で罪を犯した神様を罰として二次界に落としたり。
玩具だって雑に扱えばあっという間に壊れてしまうし、その玩具はすべての神様の共有物なわけで、扱い方に決まりがある。だから、私たち人間は神様を過剰に畏れることはないんだ。
人間を供物に求めたり、気紛れで天変地異を起こしたり? まさか! しないしない。
そっちの神様、過激だね? あ、そっか、物語なのか。そうなると極端な方が面白いもんね。
でも、こっちの世界の成り立ちはそんなに大差ないかも。
神様たちは寿命も長いし、色んな力も持ってる。永い時の中で暇を持て余したから、沢山の神様が力を使って二次界を作ったんだって。
玩具っていうのはそういうこと。
ここからが本題なんだけど、神様が二次界に降りてくることがあるの。
神様だって色んな性格をしてるわけで、極稀に人間の擬態をして遊ぶ柱がいらっしゃるわけ。その神様に叶わぬ恋をしてしまったのが私なのでした。
神様が人間に恋? それもこっちにはないよ! いや、正確にはあるんだけど、人間に恋すると罰として二次界に落とされちゃう――つまり人間にされちゃうの。
だから、「神が人間に恋」はないことになるんだよ。そもそも実例も少ないし。
犬や猫に恋する人間はなかなかいないでしょ? きっとあんな感じ。
逆は往々にしてあるんだけど……誰も私に言われたくないか。
えっっ人間に手を出した神様がいっぱいいるの? 半神半人……? 私には天地がひっくり返りそうな概念だよ。
そっちの物語的神様はとっても奇特な印象を受けるね……。
そっか、貴方にしてみれば神様が実在する方が不思議なんだった。ちょっと私の言葉、悪かったかな? 気を悪くしたらごめんね。
ありがとう。貴方が優しい人で良かった。
それで、どうして私達がこうして冥界の一角で話してるのかというと……
んっ? ここが冥界だなんて知らされてなかった?
大概知らされはしないものらしいから……死を自覚出来ない状況で終わっちゃったのかな。なんていうか……ご愁傷様……。
ここにいるってことは来世が約束されてるわけだから、そこは安心……そういう問題じゃないか。ごめんなさい。
貴方に話をするためだけにここにいるから、私にはどうしようもないんだ。これまでの話から分かると思うけど、生きていた世界が違うだけでただの人間だしね。
落ち着いてきた? 続き、話してもいいの? なんていうか、器が大きいね。すごい。だから選ばれたのかな?
ちゃんと「選ばれた」についての説明にもなるからね。そんな顔をしかめないで。
こうして話をしているのは、私の代わりに貴方があっちの世界――二次界に転生する魂に選ばれたからなの。
輪廻転生どうなってるんだって? それも今から説明するから。
神様に恋をしてしまうのは、こっちの世界では「治せない欠陥」なんだよ。
神様の力で人間は神に恋をしないように創られた。それが世代交代を繰り返すうちに、「神に恋をする」異常個体が生まれるようになったみたい。
神様の方も「超人」にあたる突然変異は面白くて歓迎だけど、「神に恋をする」欠陥は不幸ばかり生むからお断りなんだって。
だから、貴方の世界における死者の在処「冥界」に私がいて、貴方に話をしている。
魂の数を調整するために、私と入れ替わりに二次界で生まれ落ちる魂を求めて。
うん、その通り。欠陥を抱えた私は神様がいない世界に生まれ変わらされるというわけです。
そうしたら「神に恋をする」不幸には遇わなくてすむからね。
今なんて? 「超人」に生まれ変わって神になれば恋が叶うんじゃないか……?
そんなこと、考えてもみなかった……。
神様は何百年だって生きるんだもん。何回も生まれ変わったって好きな神はいなくならないよね。
そうだよ、何回も挑戦したら「超人」として生を受けることがあるかもしれない!
はい、スーゼア様! 決して人を呪ったり悪魔に魂を売ったりしません。
あ、急にビックリしたよね。
スーゼア様っていうのは冥界と一次界を繋げられる神様で、今さっき思念で訊かれたの。「二次界に転生したいのか。不幸を招かないと誓えるか」って。
私、二次界に戻れるみたい。
うん、本当に良かった! すっごく幸せ。
ありがとう。貴方のおかげだよ。
私こそ、貴方の来世に幸多からんことを心からお祈り申し上げます。
もしかして私が神様になれたら、きっと貴方に報告するから。
だから、さようならじゃなくて「またね」。
――――――
という夢を見た。
ってオチにさせてください。読んでくださった貴方様はまだ生きておられますので。
エマさんのその後が気になった方は是非ご一報くださいませ。続編のモチベーションになります!
神に恋した人間のお話 蒼月 櫻 @tree2shellf
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