第3話 キモいオトコ…

雪ん子の報告どおりの方角へ歩いて行くと、

なるほど、一人の人間のオトコが雪の中にうつぶせに埋もれ気絶していた。



「なんだ、こんな軽装で山の中入って来たのか、しょうがないなぁ」



オトコの服装は、赤いチェックのシャツに青いダウンのベスト・そしてベージュのカーゴパンツと、真冬の雪山へ入るには充分非常識な出で立ちだ。

なんだか、イヤな予感…。

私はうつぶせになったオトコのカラダを仰向けに変えた。

こう見えて私はなかなかの力持ちなんだが、

このオトコは重たかった。

ひょっとして、デブ?

仰向けになったオトコの顔を見た私は悲鳴を挙げた。



「うぎゃ〜〜〜〜っっっっっ!!!」



雪ん子の言う通り色白だが、ブヨブヨのブサイクで全体的に脂ぎっとる!

腫れぼったい細い目で、目の周りになにやら銀色した金属製のモノをつけていた。

そして、団子っ鼻に分厚い唇…。

うっすらと生えた無精ヒゲが汚ならしい。

額には赤い布のようなモノを巻いているのがナゾだった、これってオシャレのつもり?

極めつけになんかカラダからはヘンなニオイするし、不潔感漂っている…。

おのれ、雪ん子め!

どこが男前イケメンじゃ!

あとで思いっ切りお仕置きをしてやる!

そう思いつつ立ち去ろうとしたそのとき、

オトコがガバッと飛び起きた。



「さっ、んむー!!」



うわ、なんだか声の出しかたまで気持ち悪いぞ、なんだコイツ…。



「死のうと思って雪山きたけど、やっぱさみーわ!」



そう言ってブルっと震えて両腕を組んだ。

なんだろう、普通の動作のハズなのに、

コイツなんだかキモチワルイ…。

次の瞬間オトコは私がいることに気づいた、

ヤバっ、早く逃げなきゃ…。



「もしかしてアナタがワイを助けてくれたんか!?」



オトコはそー言うが早いが私の手を握ってきた、



「ぎゃあああっ!!!!!」



とっさに避けようにも不意打ちだったため、

どーにもできなかった。

オトコの手の感触はヌルヌルしていた。



「はっ、離せっ!」



私はそう言って手を払いのけるで精一杯。



「それともなんだろう…これは死ぬ前の幻かぁ?嬉しいな、非モテのワイの目の前に美女がいる♪もっと幼くてかわいいコのが萌えるが、キレーなおねーさんもいいなぁ」



なんなんだコイツは!

生意気に私より幼女が良いだと!?

こんなことなら雪ん子のヤツ連れてくりゃ良かった、ただ、アイツは見るからに性別不明だが…。

そんなことより早く退散せねば、と思っていたら、オトコにまた手を握られてしまった。



「ヒエエ〜〜っ!」



なんなんだコイツは!!!情けないことに腰を抜かしてしまった…。



「あなたはもしや、雪女さんでは?」



コイツ、いきなり私の正体を見破りやがった!

私って、人間界でそんなに有名人なのか!?



「ウワサどおり美しーなー」



オトコはそう言って私の手の甲をナデナデした、うわっキモっ!

生まれて初めてゾゾゾと鳥肌が立った。



「凍えさせてやる…」



殺意が湧いて思わずつぶやく。

するとオトコは目をウルウルさせた、

これもキモい………。



「本望っス…ワイ、見てのとーりキモオタだし、友達も彼女もいないし、仕事決まんなくてバイトしてもすぐクビになるし…家引きこもってネット漬け生活しても、そこでも叩かれ炎上しちゃうし…」



言ってること理解できない、ネット漬け?

叩かれて炎上したんなら、死んでるハズ…。

なのに、なんでコイツ生きてる?



現実リアルな人間にもネットでも死ね死ね言われるから、死ぬつもりでココ来たっス…」



よくわからんが、オトコは死のうとしてここまで来たのか…。



「ホントは大勢人殺して死刑になろーとしたけど、勇気なかったんス…」



思わず話聞いてしまったが、そんなん知るか!!

テメーが死にたいだけなのに、他人巻き込もうとは、ヤベー奴だ。



「寒すぎて凍え死にするまで耐えられんけど、ワイ、雪女さんみたく美しい人に取り殺されるなら本望っす!」



そう言って抱きついてきたもんだから、




「うぎゃああああああああああ〜〜ッ!」



雪山に響くような悲鳴を出し、オトコをかっ飛ばした。

オトコは勢いよく飛ばされ、、、

恐らく山のふもとまで行っただろう…。



それにしてもキモいオトコの分際でこの私に無体を働くとは、なんてヤツなんだ!

二度と山へは来ないでもらいたかった。







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