第2話 雪ん子の報告



「雪女さん、雪女さん。山へ人間のオトコが一人で入って来たようですよ?」



ある日、頭から肩まですげ帽子をすっぽり被った雪ん子が、私のもとへとやって来た。



「なぬっ!?それは本当なのか?!」



雪ん子の言うことが信じられないわけではないが、このわらわはなかなかに天然なのだ。

以前にも山へオトコがやって来たとの報告を受けて喜び勇んで行くも、ヒグマだった…ということが何度かあった。



「はい、今度こそヒグマなんかじゃありません、この目でシッカと見ました!」



「で、男前イケメンなのか?」



ここは重要な確認ポイントだ、私好みのいいオトコじゃなきゃイヤだ。



「たぶん…遠目でチラとしか見てませんが、色白でした」



オトコの肌の色が白かろうが黒かろうが、ぶっちゃけどーでも良い。

雪ん子は抜けるように色白なため、ヤツの美の基準は肌の色にあるらしい。

でも私の中での問題は、顔立ちが美しいかどうかにかかっている。


押し掛け女房になり子を成すのだから、父親になるオトコの顔は良いに決まっている。



「よっしゃ!これから逢いに行く!」



善は急げ、相手が下山しないうちに姿を見せに行かなくては。



「おらも行く〜」



おっと!雪ん子のやつ、ついてくるつもりらしい。



「これ!そなたのようなわっぱがついて来た日にゃ、子供コブつきとカン違いされるだろーが!」



軽く制止しとく。



「ちぇ〜、つまんないの」



全く、なに考えてんだか。

私が昔から人間のオトコ求めてるのを知っているだろうに…。

時々コイツがよくわからん、私にとって役に立つ情報をもたらしてくれようとしてるのはわかっておるのだが、微妙にズレとる。



とにかく、オトコが山へと入って来たなら逢いに行かなくては、私は念入りに長い黒髪を梳いた。


えっ、メイクをしなくていいのかって?



ごらん、この私の肌を。

雪女らしく雪のように白いきめ細かな肌、

切れ長の黒い瞳に長い睫毛、そして赤い唇…。

この美貌に落ちぬオトコはいないのだ。





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