第4話 キモオタの置き土産



「いくらなんでもかわいそすぎますよ〜、雪女さん」



いつもの縄張りへ戻った私は雪ん子を捕まえてお仕置きをしようとしたが、

話を聞いた雪ん子にたしなめられてしまった。



「うるさいっ!私はあの気持ち悪いオトコに手を握られ撫で回され、抱きつかれたのだぞ!?」



そう言って雪ん子のほっぺをビンタした。



「痛ったぁ〜い!もー、雪女さんってばー!!冷たいんだから!」



雪女が冷たくなかったら、どうしろと言うのだ?

とにかく私は気分が悪かった。



「見た目だけでキモチ悪がるなんて、サイテーじゃないですかー」



他人事ひとごとだと思って…。



「おまえになにがわかる、私は人間のオトコとまぐわいたいんだよ、ブサイクなオトコとそんなことできるかっ!」



こんなコト、わっぱに言ってもしかたがないが…。



「見た目だけで気持ち悪がって嫌うのって、性格悪いですよー?まぐわいしなくても、張り飛ばさなくても良かったのに」



ああ、コイツはわかっとらん!



「なにを言うか!あのままだと押し倒されていたのかもしれないのだぞ!?」



そのひとことを言い放った途端、突然襲われたときのことを想像して気分悪くなった。



「あーあ、ブサイクだからって毛嫌いしすぎー………と言っても、なんか話を聞く限り、そのオトコの人なんか性格モンダイありそーだね、ネットで炎上してたって言うし…」



あのオトコと同じく、雪ん子も意味不明な発言をする。



「ネット?炎上?なんぞ、それは?」




炎上したのならフツー死ぬのでは?




「あーあ、これだからオバサンはぁー!」



雪ん子め、なんて生意気なことを!!



「このクソガキー!しばいたろか!?」



アタマきた私は思わず雪ん子の髪の毛を掴んだ。



「いたたた!痛いですよー、雪女さん!ごめんなさい、もうオバサンなんて言いませんから!」



「わかればよろしい」




私はそう言って手を離した。



「雪女さん、たまにはイマドキの人間界のことベンキョーしたほうがいいですよ、これマジで…もしかしたらいいオトコに出逢えるヒントになるかもしれませんし…」



いいオトコに出逢えるかもしれないと聞いた私は食いついた、



「なんと!ヒントになるだと!?今すぐネットだとか炎上の意味教えなさい!」



「んー、なんて説明したらいーかなぁ、よーするにネットってのはぁ、直接向き合わずに電波でコミュニケーションが取れるんですよー」



ふむふむ、なるほど……って、直接向き合わずにコミュニケーションが取れる意味がよくわからん。



「そこであのオトコなにか人から嫌われるよーな発言をしたんじゃないですかー?そうそう炎上なんてしませんから…あ、炎上ってのは、不適切な発言をした者に対するいわば攻撃みたいなもんですよ」



なるほど、そういう意味なのか…。



「で?それがどーいいオトコと出逢えるのだ?」



意味わかったものの、出逢いにどうつながるのか皆目検討がつかない。



「いや、すぐには繋がらないですよ〜!それより雪女さん、見てくださいよコレ〜」



雪ん子はそう言って懐からなにかを取り出した。

それは、オトコが目の周りにつけていた銀色したモノだった、真ん中に2つガラスのようなのが嵌め込まれていた。



「時々人間がこーやって使っていますよね?」



雪ん子はそう言ってあのオトコがやっていたように目につけた、金属の両端が耳にかけられるようになっていた。



「なんか大きいや」



私はプッと吹き出した、あのオトコの顔の大きさと雪ん子の顔の大きさは雲泥の差、

雪ん子がおかしな生き物に見えた。



「あれ?」



雪ん子が両手でメガネを抑えながら、遠くを見るような目付きになった。



「なんか昔みたく遠くまでよく見えるぞ?そーいやオラ最近よく目が見えてなかったのかもしれない…雪女さん、コレ面白いよ!」



あの気持ち悪いオトコが身につけていたモノに触るなんて真っ平ゴメンだったが、

雪ん子の遠くまでよく見えるという発言に気になった。



「どれどれ?」



雪ん子からオトコの置き土産を取り上げる、置き土産と言っても私が張り飛ばした時に飛んだのだろう。

ガラスの一部がひび割れていた。

雪ん子がしていたように両端の金属を耳にかけてみた。

私にも大きかったようで、両手でよく押さえていないと落としそうだった。

遠くを見てみたが、なんだかボヤけて見えた。



「なんじゃこれ?私にはボヤけてしか見えんぞ?」



私は雪ん子に突っ返した。



「えー?おかしーなー?オラはよく見えるのになぁ?」



雪ん子はそう言って再び遠くを見た。



「なんかホントに人間入って来ないですよね〜、最近たまーに見かけても、なんか口元に白いモノ覆って顔見えないし…なんか人間界でへんなウィルス流行ってて、その予防みたいですねぇ…あ、ウワサをしていたら、そーいうオトコが何人か来たっ!」



オトコというコトバに私は反応する。



「どれどれ?若いの?男前イケメンか?」




「残念ながら、おじいさんっぽいですよ〜!物好きだね〜、こんな寒い雪山登るなんて…」



それ以後、雪ん子はあのキモいオトコが置いていったモノを使うようになり、

下界を監視してくれるようになった。

元々高い山の上から下界を見る能力はあったのに、最近よくみえなくなってたのがまた見えるようになったらしい。

キモいオトコの来襲はヤバかったけど、

思わぬ収穫だ。



それにしても、若い男前イケメンがなかなかやって来ない。


誰か夫婦めおとにならんか〜?





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