あとがき
私がこのスプートニク二号の計画を知ったのは、宇宙について勉強している時でも、プラネタリウムで説明を聞いている時でもなく、アジカンの「ライカ」という曲でした。この曲を聞いたことがある人は分かると思いますが、とても奥の深い曲です。
気になって調べてみて、この計画を初めて知ったのですが、その時の衝撃は今でも忘れられません。最初は私も、クドリャフカを見殺しに、しかもその詳細をつい最近まで明かさなかったロシアの対応に憤りを感じました。しかし、色々と調べて自分自身で考えている内にその自分の思いは少し違っているのではないかと思ったのです。
小説の中にも書きましたが、もしも帰還装置を開発して少しでも打ち上げが遅れていたら、今日の宇宙開発はどうなっていたのか?ガガーリンはアメリカのアポロよりも先に宇宙へ飛ぶことができただろうか?そもそも、アメリカは月にアポロとクルー達を飛ばすことができただろうか?
当然ながら、クドリャフカの命を犠牲にしたことは正当化されるべきものではありません。動物だって人間と同じで「生きている」のですから。しかし、クドリャフカが命を懸けたおかげで、今日の宇宙開発はめざましい発展を遂げているのは確かなのです。私はその考えに行きついた時、この計画とクドリャフカのことを今まで知らずにいた自分自身を恥じました。そして日々、動物や植物の「生命」を頂いていることを当たり前に思っていた自分に憤りを感じたのです。
そして、自分が彼らの為にやるべきことは何なのかを考えました。それは、小説の中でもオリガやイワンが悩んでいましたが、「ソ連の対応を批判すること」や「クドリャフカの死を嘆くこと」ではなく、宇宙開発の未来の為に犠牲になったクドリャフカへの感謝の思いを常に忘れないでいることだと、そして彼女だけではなく、私達の生活は多くの犠牲の上で成り立っているということ決して忘れてはならないということだと思ったのです。
そんな意味を込めてこの小説を書きました。史実を調べてその流れにそって創作しましたので実話と創作が混ざっています。より詳しく知りたい方は専門サイトや書籍などを参考にしてみてください。
クドリャフカに人格を持たせ、言葉を喋らせ、偉人のような立派なキャラクターにしたのにはきちんと理由があります。クドリャフカ自身が「宇宙へ行くことをマイナスに思っていた」という風に捉えて欲しくないからです。それには言葉を話してもらう必要がありましたので、思い切ってそういう設定を盛り込みました。
実際にクドリャフカがどう感じていたのか、それは誰にも分からないと思います。むしろ、宇宙を理解していたのか、その空間に自分自身が放り出されることを理解していたのかすら分かりません。しかし、彼女を「悲劇のヒロイン」として「かわいそう」だとか「酷い」とか、そういう哀れみの目で見て欲しくなかったのです。
私は宇宙が大好きです。だから、私にとって彼女は宇宙開発を先導した「ヒーロー」なのです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
星になった犬 星名雪子 @hoshinayukiko
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