肉と肥料
私の趣味は料理と家庭菜園だ。
バルコニーに色とりどりの野菜や植物を飾り、取れた野菜を肉と一緒に食べる。
健康的に育った植物たちを眺めながら食べる飯はとても最高だ。
私の趣味はストレス発散も兼ねている。
良い肉を手に入れたり、植物や野菜を育てる高品質な肥料を探したり、そういった細かい部分に手間をかけるのは昔から好きだった。
今日手に入れた肉と肥料は少しうるさかったな。
駅のホームで私に気づかずに割り込んできた、おおよそ70代くらいの男性。
帰宅ラッシュで少しざわついた私の心をさらに増幅させるには十分な刺激だった。
降りる駅はだいたい知っている。
私の家からも近い。
私は淡々と後を追い、滅多に人の通らないいつもの路地裏で薬で彼を眠らせて捕らえた。
そして自宅へ連れ帰り、いつもの処置を行う。
高品質な肉と肥料を手に入れるためには、なるべくストレスを与えずに殺すのが一番というのが私のモットーだ。
老人は完全に気絶しており、今なら苦痛を与えずに肉と肥料にできる。
老人の肉は若い女性や男性、子どもと比較すると口にできる代物ではないと言われるが、干し肉にしたり、バジルやオリーブオイルなどで味付けをしたりと様々な工夫を施せば食べれないことはない。
パサパサとした食感だが、それがまたいいので私は嫌いではない。
まずは全身の皮をはぐ。
が、今回の老人は薬の利きが甘かったのか、すぐに目を開け、やがて己の状況を察したのかひどくわめき散らかした。
「やめてくれ」
「許してくれ」
「私にはまだ妻や息子、孫が…」
そんなことを言っていた気がする。
が、私にはどうでもいいことだった。
外へ声が届かない部屋とはいえ、ここまで喚かれると処置に時間がかかる。
面倒なので、持っていたハンマーで一気に老人の頭を割った。
衝撃で頭蓋骨が折れる鈍い音が聞こえ、ほんの少しの血しぶきと痙攣をした後に老人は息絶えた。
ああ。本当に疲れた。
だが良い肉と肥料を手に入れるためには、処置を終わらせなければ。
そうして、今日の肉料理と植物・野菜を育てる肥料が手に入った。
バルコニーから、よく育った植物や野菜がみずみずしい色を放っている。
私はかつて老人だったものの肉を食しながら、満足気にその光景を見ていた。
これも肥料にこだわっているおかげだ。今育てているもので2種類は、あともう少しで収穫の時期。
それまでにまた新しい肉と、そして肥料を手に入れなければ。
マイマイ奇譚 もちころ @lunaluna1
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