第5話 連絡

 その後は風呂に入った後和室に布団を敷いてやったあとアンナはすぐに寝てしまった。時差ボケで疲れていたのだろう。

 その後俺は何枚かコンクール用の作品を書いたりしてみたがいまいち筆が乗らず日付が変わる前に寝た。

 

 翌朝。

 朝は大体11時過ぎ位まで寝ていることの多い俺だが今日はいつもとは違った。

 「朝ですよ。いつまで寝てるつもりですか?」

 ゆさゆさと身体をゆすられ強制的に意識が覚醒させられる。

 「……っあ?」

 「あ? じゃないですよ! もう7時です。早く起きてください」

 「まだ7時じゃん。後5時間位は寝るから……」

 そう言って俺は布団をかぶりなおす。完全に二度寝のスタンスだ。

 「何言ってんですか! もうご飯作りました! おーきーなーさーいー!」

 二度寝の体制に入ったのもつかの間、かぶりなおした布団を思いっきり剝ぎ取られてしまった。

 冬の寒さで身震いしてしまう。しぶしぶ起き上がると、起こしてきた本人を見る。

 眉を寄せて怒ったような表情を浮かべるアンナは腕を組んで俺を見下ろす。

 「やっと起きましたか」

 昨日より低めの声で悪態をつくと剥いだ掛け布団を床から拾う。

 「早く降りて来てくださいね。ごはん出来てますから」

 そういうと足早に1階へと降りて行った。

 開いた扉からは焼いたトーストのいい匂いが漂ってきている。


 ダイニングに行くと既に朝食が完成して置かれていた。

 「勝手に台所使わせてもらいました」

 「あぁ、かまわないよ。いただくよ」

 「どうぞ」

 朝食のメニューはトーストと目玉焼き、そして香ばしく焼かれたベーコンだ。朝は起きる時間も遅いので抜くことが多いためこんなに充実したメニューは久しぶりだ。

 サックっと程よく焼かれたトーストはバターが塗られて食欲がそそられる。

 「めっちゃおいしいよ。大したもんだ」

 「お口にあってよかったです」

 向かいでは上品にアンナも同じメニューを食べている。

 「爺ちゃん地ではアンナがいつも食事を作ってたのか?」

 「えぇ、おじいちゃんはほっとくといつもインスタントなので私が作ってました」

 「その年で偉いな」

 「そうでもありませんよ。周りでもご飯作る子は結構いました」

 「へぇ~、そうなんだ」

 「それより、そろそろお母さん達はおじいちゃんのところに着いたのでは?」

 「日本との時差何時間だっけ?」

 「6時間です」

 「時差が6時間だと~……向こうは深夜か」

 スマホを見て現地の時間を確認する

 「ですね、家は空港から近いのでタクシーを使えばもう到着してるはずです。もう電話もつながるのと思いますよ」

 「寝てるんじゃないか?」

 「意外と時差ボケもあって起きてると思いますよ。飛行機でも寝られますし」

 そう言われるとそんな気がしてくるな。

 「じゃあ、後で電話してみるか」

 「お願いします」

 

                 〇〇〇


 朝食を済ませた後、洗い物もやります。とアンナが申し出てくれたがさすがに悪いと後片付けを引き受け洗い物を済ませた。

 本当にしっかりした子だ。

 ダメもとで両親に電話をかけてみる。

 数コール後に母親が電話に出た。

 「あ、繋がった。爺ちゃん家には着いたか?」 

 『着いた着いた。さっきおじいちゃんとも電話で話したわ。朝になったら病院にも行ってみるつもり』

 「そうなんだ。その時爺ちゃんから何か聞いてない?」

 『聞いたわよ! アンナちゃんですって? もうホントビックリしたわよ』

 「お、おう。で、いまアンナが家に来ててさ」

 『おじいちゃんにはキツく言っておくからアンタ面倒見てあげくれる?』

 「あぁ、了解」

 思ったよりもサバサバした感じでアンナのことを受け入れてるようだ。荒ぶってなさそうでひとまず安心した。

 『この年になって妹ができるなんて思ってなかったから驚いちゃったわ。写真見たけどホント可愛い子だったわね』

 『おじいちゃんは私に怒られると思ってずっと黙ってたらしいわ。後で絞っておかないと』

 「お、おう。ほどほどにな」

 『私とお父さんは1週間位こっちにいるからアンナちゃんのことよろしくね』

 「それはいいけど親父は仕事大丈夫なのかよ」

 『有給が溜まってたらしいのよ。この際に消化しちゃうらしいわ』

 「ふーん、了解」

 その後アンナの話を少しして通話を切った。

 「お母さんどうでしたか?」

 「面倒見てやれってさ。年の離れた妹が出来て早く会いたがってたぞ」

 「それなら良かったです。ここを追い出されたら行くところが無かったので」

 「さすがにそんなことはしないだろ。でも爺ちゃんはキツく叱られそうだったけどな」

 「それは、仕方がないでしょうね」

 「まぁ自分家だと思ってくつろいでくれよ」

 「はい、ありがとうございます」

 そう返事をするアンナは今リビングで興味深そうにテレビを見ていた。いろんなチャンネルを回している。

 炬燵に入り剥いたミカンをぱくついている。

 さっき朝ごはんを食べたばかりでしょうに。

 そうした姿は母親とよく似ていて姉妹だなぁと微妙な気持ちになってしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

銀髪ロリは世界の選択 こめかみと @kome-kamito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ