入寮します! 10


お友達第一号が出来た遥は、この調子で同室の人ともお友達になれるかな⋯とソワソワしながらエレベーターへ乗り込んだ。


お友達大作戦を決行していたため、既に皆3階に移動しており、エレベーターの中は柳と2人きりだった。



「明日は入学式だね。確か入学式後にクラス分けが掲示されるんだったよね?水瀬君と同じクラスだと思うし、楽しみだな。」


そう柳が話始めたので、遥は首を傾げる。


『え、そうなの?僕も柳くんと同じクラスだったら嬉しいけど、もうクラス分け知ってるの?』




「いや、実際には知らないけど、父さんにクラス分けの基準を聞いていたんだ。各学年S~Fまでクラスがあるだろう?家柄・成績・容姿の3つを基準に上から振り分けられるみたいなんだ。例外は特待生で、特待生は成績を落とせないから必ずSクラスらしいよ。だから余程の事がない限り3年間クラスが変わる事は無いみたい。俺も水瀬君も家柄は良いし、さっき部屋番号確認するときに見えたけど、水瀬君もゴールドカードだったよね。僕もゴールドカードだから2人共成績は上位みたいだし、Sクラスになるんじゃないかな?⋯⋯水瀬君は物凄く美人だから容姿も軽くクリアしてるし。」




柳は丁寧に説明し、最後はボソリと聞こえない程度の声で呟いた。



『へぇ、そうなんだ。それなら同じクラスになる可能性、高そうだね!あ⋯⋯でも容姿かぁ。柳くんは格好いいから余裕なんだろうけど、僕は自信ないなあ。もしクラスが離れても仲良くしてくれる?』




不安そうに柳を伺うと、柳は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。



「え?そんな美人なのに⋯無自覚なのか⋯⋯?」


そう呟いた柳だったが、エレベーターが3階に到着した音でかき消された。



『え?』


神妙な顔をして何かを呟いていた柳を見て、何を呟いたのかわからなかったが、やはりクラスが違ったら仲良くするのは難しいのかなと、エレベーターを一歩出た遥の眉はどんどん下がっていく。




遥の悲しそうな顔を見て、柳は急いでエレベーターから一歩出て遥に向かい合う。


「いや、十中八九同じクラスだとは思うけど、僕の方こそもしクラスが違ったとしても仲良くしてほしいよ。だからそんな悲しそうな顔しないで。」



そう言って柳は優しい笑顔で遥を覗き込みそっと頭を撫でた。



『え⋯あ⋯⋯うん、ありがとう、嬉しい。』



柳の大きい手で頭を撫でられ、少しびっくりしつつも、いつも家族や緋彩の皆に撫でられていた為さほど違和感もなく、そのまま柳を見上げてほほ笑んだ。



「名残惜しいけど⋯⋯そろそろ部屋に向かおうか。あ、でもその前によかったら連絡先教えてくれないかな?」



優しい笑みのまま遥の頭から手を放し、柳が携帯を取り出したのを見て、コクリと頷き、遥も嬉しそうに携帯を差し出す。



『あの、ごめん柳くん、僕連絡先の交換の仕方よく分かってなくて。教えてもらってもいい?』



ちょっと申し訳なさそうに眉を下げた遥に柳はビックリしつつも、もちろんいいよと少し遥に身を寄せた。



「水瀬君って機械苦手?この学園、PC使った授業も多いみたいだけど大丈夫そう?」


操作しながらも柳は心配そうにこちらを伺う。



『んーん、機械が苦手なわけじゃないし、PCを構うのは好きだから大丈夫。ただ⋯⋯あの、恥ずかしいんだけど、連絡先の交換するの初めてで。家族とかの連絡先は最初におにぃが入れてくれたからやり方知らないの。』


緋彩の皆の連絡先も、シロさんが全部勝手に入れてくれてたし。とそっと心の中で補足する。




「へぇ⋯⋯そうなんだ。じゃあ俺が初めて水瀬君の連絡先を知った友達?」



悪戯っぽく笑う柳に、遥は嬉しそうにまたコクリと頷く。


「そっか、それは光栄だな。ここ、タップするとQRコード出てくるから、これ読み取るだけ⋯⋯ほら、出来た。」



柳の言う通りに携帯を操作し、初めての連絡先交換が出来た。


『おぉ⋯!意外と簡単。柳くん、ありがとう。』


「どういたしまして。」


嬉しそうにしている遥を微笑ましく見つめ、再度ポンポンと頭を撫で、じゃあ行こうか、と遥を促す。



コクリと頷き、歩き始めた遥を横目に、ひとまずこれで気軽に連絡が取れるな、と柳は無意識に再度頬を緩ませる。


遥は遥で、初めての友達に初めての連絡先交換を経験し、嬉しさでドキドキだ。顔は既に無表情に戻っているが、よく見ると瞳がキラキラと楽しそうに輝いている。


この調子で同室の人とも仲良くなれるといいな、と緊張と少しの期待を胸に部屋へと向かったのだった。

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