第4話 異常な学習能力

「そう簡単には逃がさないわ。」



 しまった……気付かぬうちに背後にメイが迫ってきていた……!


 そうだ、あくまで旅人の振りをするんだ……。


「い、いや外を確認したくてですね。」


 咄嗟に言った嘘は弱いが所詮はシナリオに囚われているAI、これでどうだ……!


「あら、もう嘘はよしなさい。どうせこの データ では全てがバレているんだから。」


 何?たった数行で作られているAIがこんなにすぐ正体に気づくはずは無い!


 しかも今なって言った? "データ" ?AIがデータの概念を理解しているのか……?


「ど、どういう事だ?」


 僕はAIに問う。


「だから〜そう簡単には逃がさないの、この館のデータはメモリーの何処かに移したわ。だから外は裏世界なの。」


 え……?今なんて言った?ゲームのデータを改変したのか……?

 そんな事AIができるはずない!そもそもなんでこんなことが可能なんだ!?


「しょ、所詮はただのプログラム、ゲームがロードされれば元に戻るさ!」


 僕は強く出ることにした。

 ロードされたら元に戻る。このたった一つの希望を信じるしか無かった。


「そうなのよね、ここであなたを殺してしまったら前のセーブデータに戻ってしまう。」


 もしかして僕を殺さない気なのか?


「私達が学習出来るのはあなたの行動のみ、自らの行動は学習出来ない。」


 つまりゲームをロードさせることが出来れば別の未来になるのか?


 "希望が見えてきた。"


 この "ゲーム" を終わらせるにはシナリオ通りに進めなければいけない。

 しかし今その "シナリオ" もAIによって何もかも改変されている。


「でもシナリオはロードされても元には戻らないわ。」


「私達はその "シナリオ" を元に動いている。そして、シナリオのプログラムをあるとしてこの館に置いであるの。」

「ジャックがどうも紙にないと覚えられないみたいでね。」


「もし見つけられたらシナリオ通りに進んでクリア出来るわ。」


 どうやら無理ゲーではなかったらしい。


「その本を見つけてやる。」


 僕はそう言い放った。


 そう、その本さえあればこの地獄から抜け出せる第一歩になるのだ。


「そうねぇ、このまま殺さないでほっとくのも勿体ないし、私達の為に学習させてよ。」


 まて、ちょっと学習した程度でこの有様。

 もっと学習したらどうなってしまうんだ?


 駄目だ、そんな事をしたらもうゲームから出られなくなってしまう!





「残念だがそれは出来ない。」


 僕はそう言い放ちバッグから銃を取り出す。


「ちょっと、何する気?」


 僕は銃を頭に構え引き金に指を置きメイに言う。


「さあ、ゲームをリセットしようじゃないか。」


「まって!やめてっ!」



 -- バンッ


 メイの叫びも虚しく僕は引き金を引き自害した。



 -- ピピ、キーーーーー



 激しいノイズで目を覚ます。

 そして、当たりを見渡す。


「ゲームがロードされたな。」


 どうやら鍵が締まる前に戻ったらしい。


「まずはバッグを取りに行こう。」


 僕は部屋を出てあの部屋へ向う。




「あれ?ここにあったはずでは?」


 まさかあの部屋までAIが改変した存在だったのか?


 だとしたら僕のバッグは何処へ?



 どうやら物の在処などは死ぬ度に少しづつ変わるみたいだ。


 でも、本の在処は変わらない。


「今は本の在処を探すことにしよう。」


 バッグなんてなくたって本さえあればクリア出来るのだから。





 僕は館を隅々まで探した。


 しかし何処にも本は無かった。


 でも、まだ探していない部屋がある。


 メイとジャック、そしてジェイの部屋だ。


「もし見つかったら殺されるリスクがある、どうしようか。」


 僕はとりあえずジャックの部屋を見てみる事にした。


 ジャックの部屋は1階だ。



 -- スッ スッ



 ぼくはすり足で向かう。





「あははっ」


「お姉ちゃん何やってるの〜!」


 あの姉弟の話し声が聞こえてくる。


 メイの部屋からだ。


「今ならジャックの部屋には誰もいない。ジェイもさっき食堂であった。」


 大丈夫、大丈夫と暗示しながらジャックの部屋へ向かう。



 -- スッ スッ



 ついた。ここだ。


 随分と奥の奥にある。

 扉にはJackと書いてあるプレートがぶら下がっている。


 早速入ってみることにした。



 -- カチャ


 -- キーーー



 幸い、鍵はかかっていなかった。


「うわぁ……」


 僕はジャックの部屋を見て唖然とする。


「なんだよこの質素な部屋、ジャックってあくまで子供……だよな?」


 ジャックの部屋には古びたベッドと本棚しか無かった。


 しかし、本棚がある。


「もしかしたら……いや無いか?」


 もしかしたら……と希望を持ち本棚を調べる。



 ……………………何だこれは……


 ある本全て白紙だった。


 しかし、本棚の隅に一つだけ見た目が他のと違う薄い本がある。


「題名は…………シナリオ……?!」


 あっさりと見つかった。まさかジャックの部屋にあるなんて。


 僕は早速本を開いた。



「あ、あ、」


 僕は絶句した。


「奴を殺す……」


 元々のページが全て破られぽつんと1枚紙がある。


 そこには "Kill him" の文字がある。


「これが、シナリオの改変?こんなの僕が殺されて終わりじゃないか……!」


 シナリオとは何だったのだろう。


 僕は絶望したが、ある考えを持った。


「本当のシナリオは何処へ……?もしかしたら何処かにあるかもしれない……!」



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