第十一曲 『It's showtime』
遡ること10分ほど前・・・
「・・・ん?・・・んぅ?」
「フェリカ?おはよう。ようやく起きたんだ。」
視界に入るれーくんの顔に、どこか懐かしさを覚えた。少し、あの空間にいた時間が長くなっていたようだった。
「・・・でも、想定内だったんでしょ?」
「まあな。もう数刻もすれば、革命の本章が始まる。フェリカが約束を違えることはないと踏んだら、起きるにはこれぐらいの時間がベストになるだろう?」
「それもそうだね。あ、服もらえる?いつものワンピースでいいから」
「はいよ。」
服を貰い、起き上がる。随分と長いこと眠っていたみたいだ。少しよろけてしまい、れーくんに支えられた。
「ありがと」
「なんの。・・・その姿、目的は果たせたんだ。」
「・・・うん。」
部屋に取り付けられた鏡に視線をやる。黄金色の光沢を放つ宝石眼にうっすらと映る白い羽、私の周りを囲うように黒い五線譜が纏わっている。音の神を殺し、神に成り代わってしまったゆえの神化現象。そこにあった私の心には諦めと後悔がにじみ出ていた。
「ごめんね、れーくん。」
「・・・いや、フェリカが謝ることじゃねえよ。」
久々の再開、以前に比べれば明るいが、それでも周りの空気は暗い。神格化したとはいえ、心はまだ人間な私は、少し、この状況に寂しくなる。
「・・・」
「どうした?フェリカ」
「・・・少し・・・このままでいさせてほしいな。」
体を預ける形でれーくんに抱きつく。その胸のぬくもりに心が暖かくなるような感覚がする。しばらくしたら寂しさは落ち着き、私のれーくんから離れた。
「ありがと・・・じゃあ、言ってくるよ。」
「・・・必ず戻ってくると、約束しろよ。」
「・・・うん。」
そうして私は、自分のフィドルを持って、外に出た。澄んだ青空に、深呼吸をする。
「さて、ここからは、私の番だよ・・・」
完全に実体化させた翼を動かし、空から王都を見上げる。よく見える。王城前に、騎士が集合しているのも、広場に大勢の人が集まっているのも。
「ほんと、人気者はつらいね。チケット足りるかな。・・・はは」
身に纏う五線譜に楽譜を書き上げる。頭の中でイメージした、楽譜に対応する楽器が、私の周りに創生される。
「
不敵に笑い、私は王城へと向かった。
――――
眼の前で目を覚ました少女は、とても神々しい色を放っていた。神のように羽を広げ、王城へ向かうフェリカに、小さく手を振ったのは、彼女には見えていないだろう。
「行ったか?」
「行きましたよ。」
俺の隣に立つ人物。ロゼッタ嬢の婚約者であり、自らを『転生者』と呼ぶ彼の言葉は胡散臭くも妙に真実味が持っている。
「ヴァイダー殿、こちらも準備ができました。」
「そうか。・・・君は、何を望むんだ?スクルド王子殿下。」
ヴァイダー・ド・ラ・シャンパーニュの質問に、隣に立つ少年、スクルド・フォン・フェデラックは、少し微笑み答えた。
「僕は、平穏な生活がほしい。ただそれだけのために動いていたんです。無能な王子を演じたし、わざと横暴に振る舞いもしました。でも、あの時、フレデリカさんの演奏を聞いた時に、思ったんです。周りのみんなが、ずっと笑顔でいられる世界がほしいと。それだけ、あのときの世界は、幸せそうだったんです。・・・あくまで、僕の視界に写った・・・ですがね。」
スクルドが微笑む。その笑い方は、フェリカにとても似ていた。
「ヴァイダー殿、レグルス殿。わざわざ僕の計画に付き合っていただいてありがとうございます」
「何、今更気にするな。あいつらの為だ」
三人で王都を見つめる。
「さあ、主人公の露払いへと参りましょう」
俺達はその場を駆け出した。
―――――
お久しぶりの投稿なので少し短めに。
お久しぶりです。酒坏樽です。
受験が無事終わったので投稿を再開します。約半年、大変長らくお待たせしました。
この小説はあと数話ほどで完結後、スピンオフ、番外編を数話投稿し、リメイクに入りたいと思っています。
最後になりますが、最後数話ほど。よろしくお願いします。
音楽あれば貴族共を黙らせれるかもしれない・・・ 酒杯樽 @polus
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