6話 修羅

「堀江、放課後何か予定とかあるか?」


「いや、特にないが」


階級学園というには特に風変わり事もなく普通の授業を終えた放課後。

新太に声を掛けられる。


「赤派閥の集会とかは?」


「行く気はないな」


興味ないし、行ったところで派閥がほんとに紹介された通りの派閥だとは思えない。集団催眠など心理学でも証明されているように物事の表面を装ったただの自慢話でもするのだろう。


「じゃあ、うちでも見ていくか?」


新太からの唐突の提案。

俺的にめんどくさい事柄は出来るだけ省きたいがこの学校にいる時点で派閥には入らないといけないというルールが存在するため否応なしに入会しなければならない。

ならば「まあ、情報を集めることも将来的に必要か」小さい声で呟く。


「ん?」


「いやなんでも。お願いする」


それから青派閥の派棟に向かう。

昨日と同じように30分くらいしたら帰ることを伝えて。


「ちょっと待て」


道中聞き覚えのある声が耳に入る。


「早乙女先輩」


「彼には用事がある」


胸に赤く燃えるバッチをつけ赤いタキシードを羽織る彼女は先頭に立って足止めをする。放送では第3体育館に集めて説明会を実施するなど言っていたがなぜここにいるのだろう?


「こっちが先約ですよ」


「知らんな。立場をわきまえろ」


十傑と新太は平民星3命令の対象内だ。

本当は新太が先約と言い返した瞬間に命令として追い返すべきなのにそれを行わないのは何か意味があるのだろうか。

その辺は分からないが新太は十傑に高圧的に圧倒されても引く様子はない。


「そうか。じゃあ、『修羅』で決めよう」


早乙女から知らない言葉が発せられる。

『修羅』意味は2つ。一つは鬼神。所謂、神を表す。そしてもう一つ闘い。

単純に解釈するならここで闘うということだ。


「いいですよ。内容は?」


「まあ、簡単なものでいいだろう。修羅『第6遊戯ロールコイン』」


漢字と英語が入り混じる謎の単語が早乙女から発せられる。

ロールコイン。コイントスみたいなものか?


「了解しました。」


それから近くの教室を貸し切り机を6つ真ん中に集め、専用のものだろうか?独特な柄をしたコインを早乙女はポケットから出す。

俺はというと教室から追い出された生徒と共に興味深く廊下から見る。


「じゃあ、早速行う。学徒修羅『第6遊戯ロールコイン』」


『ピピッ、ピピッ。学徒修羅『ロールコイン』が選択されました。対戦者は名前を述べてください。また、賭けるものを宣言してください』


早乙女が開始の合図をすると昨日とは異なる内容がバッチから流れる。それと同時にこれまではなかった監視カメラが四角形の教室のそれぞれの頂点から4つ出現する。ついでに黒板だった物がスクリーンに切り替わりロールコインのルールが映し出される。


「赤派閥早乙女 紗希。賭けるのは堀江 真崎の今日の放課後の予定の権利」


「青派閥新月 新太」


『対戦者を認識しました。賭けに人物が選択されたため堀江 真崎の許可が必要です』


それから、俺のバッチから許可をするかが流れてきたので了承する。


『選択は専用のスマートフォンを扱ってください。勝利条件は早乙女 紗希から3周して最終得点が多いほうの勝利です。なお、不正行為などを行った場合即敗北とします。それでは始めてください』


「じゃあ、早速始める。選択してくれ」


そう言うと新太は入学の時に渡されたスマホに何かを打ち込む。

それから前のスクリーンには選択したものは表示されず『選択されました』という表示がされそれを確認すると早乙女はコインを2つ机に上手く回転させる。

手練れ感が半端ない。多分相当やってきたんだろう。

数秒間回転したコインはゆっくりと片面を上にして止まる。


「じゃあ、次は俺の番ですね」


結果は表示されず次の新太のターンが開始される。

結果はこのゲームが終わった後に表示されるらしい。最後まで優劣はわからないようだ。

それから淡々と同じ様な動作が行われ最後の新太の番になる。


「早乙女先輩。そういえば今日の説明会よかったんですか?」


新太は突発的に質問をする。

今は放課後からだいたい40分経っていた。


「説明など私じゃなくとも務まる」


「じゃあ、なんで彼には従者じゃなくあなた本人が来たんですか?」


「利便性のある生徒はいくらでもいるが優秀な人材はいなくてな。彼はどうしても必要だからだ」


早乙女は脈絡のない回答をする。


「それは先輩のしようとしている。『新聖典法』に関係しますか?」


新太はさらに踏み込もうと言葉を進める。十傑に対してここまで踏み込んで話すのは他者から見ると異様に映るのか。教室を受け渡した生徒は憂惧の表情をして様子を窺っている。


「……」


それに対しての回答はせず早乙女は黙って選択をする。

それから新太もそれ以上言及することなくスクリーンを確認してゲームを進めた。


『ピピッ、修羅『第6遊戯ロールコイン』の終了が確認されました。これより結果をスクリーンに表示します。』


その音声と共にスクリーンには相互の名前とその下に数字が表示される。


早乙女 紗希  11     

新月 新太    1

 勝者 早乙女 紗希


簡潔にそれでいて驚異的な数字が表示される。

11対1もしこのゲームが運だけが介入する単純なものなら紗希は幸運の持ち主ということになる。


「やっぱり、十傑はすごいな」


「まあ、結果は分かっていたけどな」


俺と同様に廊下で様子を窺っていた生徒は口々に早乙女への賞賛の声を上げる。

不可解な数字に目をくれずに。


『結果は以下のようになったため堀江 真崎の今日の放課後の予定の権利は早乙女 紗希に与えられます。なお、新月 新太さんは修羅における今回の費用の請求をします。今日より1か月以内に20万円お支払いください。』


バッチからゲームの結果と請求などが述べられ『修羅』は幕を閉じた。

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階級学園のエゴイスト KM*P @KMkome

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