時間と青年

どーらく

時間と青年

チク、チク、チク...ボーン


四畳半の彼の部屋には今どき珍しい振子時計が壁に掛けてあった。



「なぜ1秒はこんなにも短いのだ?」


彼は生まれつき好奇心の絶えない青年だった。


そして青年は1つ思い立った。


「どうすれば1秒をもっと長く感じられるのか」と。


1秒の壁を超えるには光の速度を超える必要がある。

まさに無理難題といってさしつかえないだろう。


しかし青年はこう考えた。

本当に光の速度を超える必要があるのだろうか?

自分さえ1秒というものを長く感じられればいい。


彼は熟考した。

考えた果てにたどり着いた。

「振子時計から発する秒針音の感覚を意識的に引き延ばそう」と。

結果は分かっている通り、到底できなかった。


青年はふと思い立った。

「なんてバカバカしいことをしているのだ」と。

青年は他に好奇心が移ったようで、部屋を出た。



振子時計の音は青年に聞こえなくなっていた。










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時間と青年 どーらく @doo-raku

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