VTuberがスポーツ観戦を語る?

アーカーシャチャンネル

すべてのきっかけ

 新年を迎えた一方で、彼女はいつも通りにノートパソコンへ向かい何かの準備をしている。


「配信準備でも……?」


 新年のあいさつ配信をする予定ではなく、別の理由で配信しようとしていたのだが……あるトレンドを目にした。


【スポーツはリアル観戦か? テレビ(もしくはネット)観戦か?】


 内容はスポーツの試合などをリアル観戦するか、それともテレビで観戦するか、というものである。


「いつぞやのきのこたけのこではあるまいし……」


 彼女も論争に参加する気は全くなく、それこそ少し前の『きのこたけのこ』と同じような平行線みたいな路線を考えていた。


しかし、実際にそれを見てみると圧倒的にテレビ観戦の方が上だったのである。それは何故か?


【eスポーツの場合、リアルでなくてもオンラインで配信されていることが多いのでオンライン配信でも問題はない】


【国際大会などはリアルでしか感じられないようなものもある。リアルの方が良いに決まってる】


【近年はインターネット配信が多いが、ほとんどが有料配信であることが多い。リアル観戦ができれば、そっちの方がいい】


【だが、近年は諸事情でリアル観戦ができない状況が多い。無観客試合が目立っているのも、その証拠では?】


【それでもマラソンなどではギャラリーの姿もある。どうやってこの事例を解決すればいい?】


【このままでは、下手をすればeスポーツがリアルスポーツに塗り替えられる日が近いのでは? オンライン配信的な意味でも】


 タイムラインを追う彼女でも、疑問に残る事例は多い。公営ギャンブルの中には夜間開催で無観客とするケースも存在する。


これらの場合、投票券を買いに会場へ入る事も出来ないのでインターネットやスマホでの投票になるだろう。


最近の公営ギャンブルはそれが標準化しているような状態でもあり、逆に言えばわざわざ会場へ行かなくても投票はできるようになった。



 一方で、無観客開催という形ができないような競技などでは「テレビ観戦をお願いします」のような呼びかけもされている。


チケット制の格闘技などでは、大きなトラブルはないと思われるが……問題なのはマラソンや駅伝などの野次馬が集まるケースだろう。


【それでも従わないような野次馬のせいで、開催が中止になったらどうする?】


【イベントに関してもインターネット上でのオンライン開催がメインになりつつあり、リアルイベントは減っている】


【イベントとスポーツを一緒にするのは難しいが、これも時代の流れだろう】


 これ以上タイムラインを見ても……と思った彼女は、配信を始めることにする。そのテーマは予想外の物だった。



『皆さん、あけましておめでとうございます』


『本日は新年最初の配信ではありますが、いつも通りに……』


 女騎士バーチャル配信者の配信が始まった。挨拶はいつも通りなのだが……。


『今回はテレビの駅伝についてです』


『テレビで応援するのと直接応援するのと、視聴者としては大きな変化はないと思います』


『昨今の情勢を踏まえて、テレビ観戦を推奨しているのは当然の流れでしょう。下手に開催が中止にでもなったら……』


 彼女が訴えたのは、応援の熱意が変わらないのであればテレビ観戦を推奨しているのであればそれに従った方が良いのでは、という事だった。


『ペナルティとしてではない無観客試合が増えている現状を踏まえれば、リアルでスポーツイベントを行うのも難しい環境なのは明らかでしょう』


『我々がすべきなのは何なのか……』


 他にも色々と発言があったようだが、まとめサイトなどではこの辺りの発言が切り取られたり、悪意をもって拡散していたりするケースが多い。


そうしたまとめサイトのアフィリエイト目当ての炎上商法に利用されるという事は、彼女がある意味でも有名になったという証拠なのだろう。



 配信終了後、数分ほどでまとめサイトが逆に炎上して閉鎖になったというニュースを彼女は見ていた。ここまでくると恒例行事である。


炎上勢力自体、彼らは悪目立ちをしたいだけのモブでしかない……というのは、女騎士とは違うバーチャル配信者の発言だ。


因果応報という四字熟語がふさわしいのかは不明だが、悪意を持ってメッセージを歪めて炎上させた事実は変わらない。


こうした勢力を監視してSNSから排除するAIシステム、そうしたものが実装されたりでもしたら……と思うと怖い部分もあるだろう。


重要なのは彼女が配信の最後に言った『熱意を注ぐべきもの、それを間違えない事』なのかもしれない。


『SNS炎上は既に他人事と言える領域は超えている。だからこそ、個人で情報発信するにしても内容に責任を持たなくてはいけない』


 彼女は、SNS炎上こそ現代における容易に行える犯罪行為と考えていた。


それでもAI(人工知能)を持ち込んでのSNS炎上防止を行えば……新たな事件が起きかねないとも警鐘を鳴らしている。

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