ふたりは、①

6年後から


登場人物(名前仮)

レイ(主人公女18歳)

イチ(主人公男16歳)

ニイ(男16歳)

積水家のサン(男14歳)


ヨン(男18歳)…隣村の狩猟師の息子

兵隊さん(男)

subちゃん(男)

レイ爺さん(男)....レイの祖父、村の村長


イチ、ニイ、サンは村(皆が住んでいた四国の山故郷)から下山したは街1にもう3年間学業のため下宿している。


街1(仮名)…四国の団地にある地下の小人たちが住んでいる都市。発展している。


イチは兵隊さんに護身術などを習得するため弟子入りし3年修行した。その後ニイとサンは違った理由で街1に下宿することとなった。ニイは医療、サンはシェルターなどの建築を学ぶため。これは元々街1出身の兵隊さんの推薦があっての事だ。イチは元々村から街1に行くままでの護衛人として付き添っただけだったがそのまま2人の居候として3人で街1の政府が支援する学校に入学した。


街1まで行くのに相当な体力を使う。通路が入り組んでいて、知らないものは街1に到達することすら難しいだろう。ここは何者から隠れているようにも3人は初めてきた時そうおもった。


3年間の学業を通じて3人はトップクラスに出来が良かった。最初の頃はニイは頭が良く成績トップ、イチは街1の兵士と屈託ないくらい小人護身術の素質があった。だが最も凄かったのはサンであった。最初こそは建築学を学んでいったが中盤から街1を支える動力源などの仕組みが気になり、没頭するようになった。それから2人はサンの付き人感覚で支えるようになり、あらゆる研究を気ままにするようになった。時には力仕事をし、街1にあるあるものや仕組みを利用しあらゆることを研究した。


3人は学年が同じ同期からも尊敬の眼差しを受けるようになってきた。話している内に3人がとても特殊なことに気付かされることになる。自分達以外の同期のほとんどが「外の世界」を知らなかったからだ。3人はとても驚いた。

皆が言う「外の世界」は自分たちの故郷も含まれていて彼らはこの街1しか世界を知らなかった。


教授に教えられたことがある。この街1はある1人の存在により成り立っている。そして遠く離れた位置にこの都市よりも遥かに高度な技術を持った都市も存在していることもそこで知らされた。そしてこの街1に住む者たちは「外の世界」に出ることを禁じられている。これだけで「外の世界」に住んでいた自分達がどれだけイレギュラーな存在かを思い知らされた。「外の世界」から街1の政府機関に認承されれば入国は可能だが、政府機関に知らせず無断で1日以上過ごした場合は拘束されることとなる。だがこれはあまり事例がないらしい。小人の集団地は位置を知らなければ到達することは不可能となっているらしい。街1のもの達がもし無断で外出すれば戻ってくることは不可能だそうだ。


ふとイチは不思議だと感じた。どうして兵隊さんだけは「外の世界」に出ることを許されているのだろうか。彼は自分達が幼い頃から村にいた記憶があり、自分の父親やレイ爺や村の者達からも親しく接しているのを見ると村に来て相当時間が経っているはずだ。そういえば兵隊さんとの会話で思い出したことがあった。


〰︎〰︎〰︎〰︎


(?年前)

「兵隊さんが昔住んでた所でどんな所なの?」


「ここよりは生活水準が安定している。お前らが見たらビックリするだろうな」


「どうして今はここで生活してるの?」


「遠征てやつだな。この場所の者たちを守るようにそこに住む偉い奴に命じられて来たんだ。お陰様で前よりは気楽で楽しいよ。あそこは窮屈だったからな」


「昼間から酒飲んでるしね」


「うるせ」

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(現在)

そういえば兵隊さんは偉い人に命じられたって言ってたけど、どうして「あの」兵隊さんだったんだろう?


3年間で卒業を迎えた3人だったが、今後は3人はこのまま街1で研究を続けることを選択した。3人が出した研究の論文が高く評価された。街1の動力源や資源をフル活用し、更なる発展が見込まれる事までこと細かく記されていたからだ。彼らは政府内部から高く評価されさらなる向上を目的に街1政府が進める研究施設に配属されることを多くのもの達から提案された。


だがまたあるものからは、サン達の研究内容があまりに高度であったため街1ではなく都市5での移転で地下集団地都市の更なる生活水準向上を見込まれると感じ推薦する声も挙がった。


都市5…神戸にある小人集団地の大都市。

(日本全土で小人の大都市は現在5つある。

都市1…東京

都市3…名古屋

都市4…京都

都市5…神戸

都市6…九州

小規模街1…四国、現在イチ達が住んでいる場所)


3人は選択が迫られた。イチとニイは街1と故郷である村以外の場所に行くことなど想定していなかった。だがサンは都市5への移転を深く希望した。3人は話し合った結果、サンの強い思いを知った途端に決意を固めた。


こうして3年間の街1での学業を無事卒業し終え。3人は懐かしの故郷に報告しに帰省することとなった。


(数日後)

レイには悩みがあった。イチ達は新しいことを学ぶために村ではない違った所に飛び立った。それがどこか羨ましかった。自分も本当は…


6年前イチは兵隊さんに修行している間、レイも共に訓練をしていた時期もあった。それから3年が経ち3人共に村から離れてからは会っていない。3人にとても会いたいが、兵隊さんは連れて行ってはくれなかった。恐らくレイ爺が裏で手を引いているのだろう。そのことは言わなくてもわかっていた。


その日3年ぶりにレイはイチ達と再会した。イチ達は3年間の学業を終え村へと帰ってきたのだ。村のもの達は歓迎し、直ぐにお祝いモードとなった。その日はSubちゃんが新たに立ち上げた新狩猟組合の者たちと宴になった。なにより3人とも元気そうで何よりだった。レイは3人に聞きたいことが山ほどあった。


イチから聞いた事全てに驚愕した。ここよりも生活水準が安定しており、よく分からない動力源を生かし雨風関係なく食料を生産し、そこに住む多くの者達は平和に暮らしている。そこには秩序があり法もある。何より驚いたことは自分達が住む世界は彼らにとって「外の世界」であり、太陽すら見た事がないということだ。勉強や研究の話は全く分からなかったが自分が生きてる中でまだまだ知らないものばかりが世界だと思い知った。楽しそうに話している3人を見るとレイは1人置いていかれたような感覚を味わった。色々な事を知り世界の広さを実感したレイはその夜あまりよく寝つけなかった。


翌日イチ達は私とレイ爺と兵隊さんを呼んでこれからについて詳しく話し始めた。

イチ達が街1での研究をより高度なものにするために街1ではないもっと遠くの大都市へと出国しようとしていることを明かした。サンは研究内容を詳しく兵隊さん達に語っていたがなんの事やら全く分からなかった。自分達の研究は私たちの生活に大きく貢献してくるなどキラキラした目で話していた。兵隊さんとレイ爺は上手く言いくるめられたような顔をしていた。3人はもう既に意思が決まっていて、止めることなど不可能だと感じとった。レイは複雑な気持ちになった。


レイ爺はどうして私を村から遠ざけたくないように感じた。この村も村の者たちも私にとっては本当にかけがえのない宝物のような存在だ。でも私はどうしてもイチ達が見ている広い世界を一緒に知りたくて見たくて仕方なかった。だから今からレイ爺に話すことはただ単に私のわがままなのかもしれない。そのことは重々承知の上だ。でもここで本心を言えずに3人を送り出してしまったら一生後悔してしまうと思ったから。


「レイ爺はどうして私をここから遠ざけたくないの?」


「レイには両親の事で寂しい思いをさせたと思っている。だから私が出来ることならなんだってして上げたかった。ここを出てレイの身に何が起きれば私はあの娘達に空で顔向けできない。だから分かって欲しい」


「私は幼い頃から両親がいなかった。皆を見ていると寂しい思いをしたのも確かだけど自分の事を可哀想だと思ったことは1度もないの。イチやニイ、組長さん(イチチチ)や組合の皆が私を良くしてくれた、でも私にとって1番嬉しかったのはレイ爺がいつどんな時でも傍に居てくれたことなんだよ。それだけは確かなの。でも私がやりたいことはそんな大好きなレイ爺を傷つけるかもしれない。それでも私はイチ達と広い世界を見に行きたい。私だけはあの3人に置いていかれたくない。もし諦めたら一生後悔すると思う。だからここから出ていくとこをレイ爺に認めて欲しい」


私にとってレイ爺への最初で最後の反攻だった。伝えたい事を言えた。それでもレイ爺は首を縦に降らなかった。レイは黙って外に出て言った。


これが2人にとって最後の会話となった。



(村を出発する前日)

イチはある者に久しぶりに会いに行っていた。

それは幼少期から犬猿の仲だったヨンであった。


イチ「よ!」


ヨン「帰ってきてたのか?親父なら狩で明後日まで帰ってこないぞ」


イチ「組長にも挨拶していこうと思ったけどそうなのか…。今度もまた長旅になると思うんだ。よろしく言っといてくれ」


ヨン「またどっかに行くのか?レイがまた寂しがるぞ。あいつお前らが居ないから俺にばっかり絡みに来るだ。あれやめさせてくれ」


イチ「それもよろしく頼むよ。気にかけてやってくれ」


ヨン「改めてお前遠くに行って何するんだ?数年年前までは兵隊さんとこでアホみたいに鍛えてもらって次は違う場所で勉強して偉いやつにでもなるつもりなのか?」


イチとヨンは6年前に兵隊さんに鍛えてもらっていた。イチが修行をしていると聞き付けてヨンも一緒に弟子入りした。それ以来仲が修復した。(2人ともごめんなさいをちゃんとした。)


イチ「まーそんな感じだ。お前は親父さんの跡を継ぐんだろ?あのバカヨンがな」


ヨン「へ、俺は親父もお前の親父さんをも超える狩猟師になるんだ。お前のなりたい「偉いやつ」よりご立派だぞ」


イチ「頑張れよ」


ヨン「だから俺が祭りの主役になった時はせいぜい噛み締めて見てろよ。俺の晴れ舞台をな。ニイとサンにもよろしく言っといてくれ。」


イチ「お前の取った魚期待しとくよ。お前がそんな立派になってたら涙するかもな。」


ヨン「それまでは元気でな」


イチ「お互いな」


これが2人にとっては最後の会話になった。


(出発する当日)

その日3人は村を出立するため村のもの達と別れを惜しんだ。Subちゃんとは最後に立派な組合にするためイチ達と約束した。レイ爺にも色々と世話になったことを感謝を伝えた。村のもの達もあの事件から色々とお世話になった。3人は伝えきれない思いを背に村を出立した。長い旅になることは分かっていたから。街まで行くまでの間に兵隊さんが同伴してくれた。なので4人で街1を目指した。


レイはあの場にはいなかった。レイ爺が探したが見つからなかったらしい。レイ爺と何かあったのだろうか?レイは本当にあのままで本当に良かったのだろうか?


(レイ爺と村のみんなにあのまま何も言わずに去って良かったのだろうか?)


実は出立する前日の夜、イチとニイとサンに話があるとレイから呼び出された。4人は集まってすぐにレイ話を切り出された。


「私も一緒に連れてって欲しいの」


(ふたりは、①終了)

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ピーター 安良岡みさき @fmlasa373

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