ミノリちゃんのスケッチブック

@ramia294

第1話

 今夜は、クリスマスイブ。

 お父さんから、少し遅くなると電話がありました。


 ミノリちゃんは、ひとりでお留守番です。

 お父さんは、お母さんの病院へ。

 もうすぐ、ミノリちゃんに、弟か、妹が生まれます。


 今夜は、クリスマスイブ。

 雪が、降りはじめました。


 お母さんは、朝から病院へ。


「ごめんね、ひとりでお留守番させて。帰ってくる時は、ミノリはお姉ちゃんだから、少し、我慢してね」


 本当は、とても寂しいミノリちゃん。


「ミノリは、大丈夫。お姉ちゃんだから」


 お母さんに、心配かけないよう笑顔です。


 ピンポーン


 遠くの街の、おじいちゃん。

 ミノリちゃんは、写真でしか知らないおじいちゃんから、荷物が届きました。


 お手紙入っていました。


「ひとりぼっちでも留守番を頑張っているミノリちゃんへ。おじいちゃんから、クリスマスプレゼントです。お父さん、お母さん、ミノリちゃん、キヨシくん。家族みんなで、ずっと仲良く」


 キヨシくんて、誰だろう?

 少しの不思議とたくさんの嬉しさのプレゼントは、スケッチブックとクレヨンでした。


 ミノリちゃんは、お絵描きが大好き。

 みんなの顔を描きました。


 最初は、早く帰ってほしいお父さん。

 次は、とっても会いたいお母さん。

 最後は、可愛い男の子。

 見たことも、会ったこともない男の子。

 誰でしょう?


 どこかでベルが鳴り響きます。

 お父さんに渡された、テーブルの上のスマホでは、ありません。


 ミノリちゃんは少し考えて、プレゼントのスケッチブックに、クレヨンで電話を描きました。

 スケッチブックの電話のベルが、部屋いっぱいに鳴り響きます。


「もしもし、ミノリちゃん。お母さんよ。ひとりでお留守番ゴメンね。寂しいよね。でもすぐにキヨシくんを連れて帰るわ」


「お母さん。ミノリは大丈夫。いい子でひとりでお留守番しています。だから早く帰ってきてね。早くキヨシくんに会いたいです」


 窓の外。

 雪は、シンシン。

 街の明かりは、ユラユラ。


 再び電話のベルが、鳴りました。

 スケッチブックを開きます。


「もしもし、こちらキヨシです。ゴメンね、お姉ちゃん。寂しい思いをさせました。今、無事生まれる事が、出来ました。早くお姉ちゃんに会いたいです」


「もしもし、こちらミノリです。お姉ちゃんも早くキヨシくんに会いたいです。二人でたくさんお絵描きしよう。たくさん遊ぼう。今からとても楽しみです」


 窓の外。

 雪がシンシン。

 街の明かりは、ユラユラ。

 ミノリちゃんは、ウトウト。


 テーブルの上のスマホが、ブンブン。

 お父さんから、電話です。


「もしもし、ミノリです。お父さんですか?キヨシくんが、生まれたの?」


 お父さんは、びっくりです。


「どうして、分かったの?無事、ミノリの弟がうまれたよ。なるほど、キヨシくんは良い名前。ミノリの弟キヨシくん。お姉ちゃん、よろしね」


 お父さんは、もう少しだけ、病院にいるそうです。

 ミノリちゃんは、もう少しだけ、お留守番。

 お父さんが作ってくれた晩ごはん、ミノリちゃんは、温め始めました。


 畳の部屋の写真立て。

 写真の中のおじいちゃん。

 ニコニコ笑う。おじいちゃん。

 

 今夜は、雪のクリスマス。

 おじいちゃんは、空の上。

 ミノリちゃんの事をいつもいつも、見守っています。


           終わり

 








 

 


 


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