明けまして隣のお姉さんがエッチすぎる件

みょん

あけましておめでとうございます

「真白さん!」

「たか君!」

「明けましておめでとうございます!」

「明けましておめでとう!!」


 新たな年明けを大切な彼女と迎えることが出来た。

 それが一つの幸せの形、最高の瞬間だった。


「ふふ、まさかこうして恋人として年明けを迎えられるなんてね。お姉さん本当に嬉しいわ」


 それは俺もですよ。

 俺はそう言って真白さんの肩を抱いた。そのまま抱き寄せるように、高手の神社から俺たちが住む街並みを見下ろす。


「……綺麗ですね」

「そうね」


 深夜十二時を回ったわけだが、やっぱり初詣に来ている人は大勢居てこの神社周りは大きな賑わいを見せている。真っ暗な夜の中に露店も並んでおり、唐揚げやたこ焼きであったりを美味しそうに食べている人の姿が多く見られた。


「たか君、キスして」

「了解です」


 真白さんと向き合い、瞳を閉じた彼女の唇にキスをした。触れるだけのキスで離れようとしたが、真白さんはまだまだ足りないと言わんばかりにキスをしてくる。神聖な神社の傍、色んな人が俺たちを見ては素通りしていく。


「……ふふ、どうする? すぐに帰って続きする?」

「魅力的な提案ですけど、もう少し余韻を真白さんと味わいたいですね」

「そうね。それじゃあもう少し歩きましょうか」


 真白さんと手を繋いで歩き出す。

 例によって例の如く真白さんは眼鏡を掛けて変装しているが、もしかしたら気づいた人が居ないかも分からない。


 そもそもの話、本当は例年のように年明け配信の予定を立ててはいたのだ。

 ずっと昔から配信者として活動していたからこそ、真白さんは去年までは視聴者の人たちと年明けを祝っていた。


 だが、今年は恋人となった俺が傍に居るということもあって、静かに俺と二人で年明けを過ごしたいと言ってくれたのだ。


「お互いに大吉が出たのは凄かったわね」

「えぇ。真白さんが最初に大吉を引いた時は絶対大凶を引くと思いましたし」


 一応初詣の定番としてお参りであったりは済ませてある。おみくじも引いて二人揃って大吉を引くという奇跡も起こしていた。


「大丈夫よ。大凶が出たとしても、私たちのラブラブを前にしたら逃げていくわ」

「あはは、それもそうですね。真白さんが傍に居たら嫌なことなんて逃げ出していきそうです」


 不幸なんてものは俺たちの間に似合わない、それくらいに俺は真白さんと一緒に居ることに幸せを感じている。この人がただ傍に居てくれる、それが本当に嬉しくて笑顔が絶えないのだから。


「それに♪」


 真白さんは嬉しそうに懐から安産祈願のお守りを取り出した。


「これも買ったしね。いつでも子供、作れるわよたか君♪」

「……っ」


 子供はまだ早い……とはいってももう高校を俺は卒業する。いやいや、それでもかなり早いと思うんだけどな。真白さんも本気では……ないとは思うけど、一応二十歳になるまでは子供の予定は立てていない。


「気分よ気分! いつでもお姉さんは準備が出来てるからねって意思表示♪」


 それは正に宣言だった。

 これから先、ずっと俺と一緒に居るという意味を含めた言葉。子供を作り、温かい家庭を築いて幸せになろうという言葉。


「……少しそれに関しては待たせるかもしれないですけど、いずれはちゃんと向き合おうと思ってますよ。だから結婚しましょうね真白さん」


 そう言うと真白さんはピクッと固まった。

 そして頬が緩むのが我慢できないのかにんまりと笑みを浮かべ、蕩けてしまった様子で俺に抱き着いてくる。


「もうたか君すきぃ! 好きすぎてお姉さんダメになっちゃうわぁ♪」

「俺もですよ。俺も真白さんのことが大好きです。大好きすぎて毎日幸せで、あなたに出会えたことに本当に感謝しています」

「……もうたかくぅん!!」


 完全に身を預けてきたので俺は何とか堪えた。

 SNSでもあけおめことよろと投稿したが、それに対して多くの反応が返ってきて真白さんに続く形ではあるけど有名になったんだなと感慨深い。


「真白さんが蕩けてしまって動けないなこれ……」

「えへへ~♪ たか君が嬉しいことを言ってくれるからよぉ!」


 ほんと、美人でエッチだけど……何より可愛い恋人だ。

 それから俺たちは少し歩き、駐車場から真白さんの車に乗って帰宅した。玄関からすぐ寝室に向かうと、そのままの姿で真白さんが待ちきれないとばかりに上着を脱いだ。


「私たち年明けから何やってるのかしらね」

「それも俺たちってことじゃないですか? 明日から実家に行きますし、しばらくは出来ないですよ?」

「そうね。それなら遠慮なくやりましょ♪」



 それから数時間後、まだ俺たちは眠っていなかった。

 シャワーを浴びてパジャマに着替えた俺たちは、何をするでもなくお互いに抱きしめ合って横になっている。


「……たか君、好き」


 俺の胸元を人差し指でツンツンと突きながら真白さんがそう言った。


「俺もですよ真白さん。本当に大好きです」


 思えば今年何度好きと伝えただろうか、どれだけ伝えても伝えきれない大きすぎる想いをお互いに抱えている。どれだけ伝えても、どれだけ愛し合っても減ることのない大好きという気持ち……本当に真白さんと出会ってから色んなことが充実した日々だったのだ。


「改めて、今年もよろしくねたか君」

「はい。よろしくです真白さん」


 高校を卒業して新たな日常が幕を開ける。

 本格的に真白さんを手伝うようになるということで、本当に新しい日常が俺たちを待っている。


 そして、こうやって新年を迎えるのは俺たちだけではない。

 色んな人が、この世界の多くの人たちが同様に新しい年を迎えるわけだ。


「……明けましておめでとう」


 誰に伝えるでもない、多くの人に届くようにと祈って俺は呟いた。


「たか君? どうしたの?」

「え? あぁいや……」

「お姉さんが傍に居るのに別のことを考えていたのかしら?」

「そういうわけじゃないんですけど……あはは」

「ふ~ん? これは聞き出さないといけないかしらね♪」


 ……どうやら、眠るのはもう少し後になりそうだ。




【あとがき】


ということで、みなさん明けましておめでとうございます。

今年も何卒よろしくお願いします。


初見の人に説明しますと、

こちらは“隣の部屋に住むお姉さんがエッチすぎる件”を元にしています。

自分の中で思い入れの深い作品でもあるので、短編として書いてみました。


続きの方も気長に待っていただけると幸いです。

それではみなさん、また隆久と真白の物語を是非楽しみにしていてください!


それではもう一度、

明けましておめでとうございます。

2022年もよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

明けまして隣のお姉さんがエッチすぎる件 みょん @tsukasa1992

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ