冷たいキミ

葛城 ゼン

冷たいキミ

 キミはとても冷たい。まるで心がないみたいに。

 私はこんなに見つめているのに、キミはこちらを見てくれない。

 キミの目はとても冷たい。まるで何も見ていたいみたいに。

 でも、キミの何者にも囚われないその目は、この世で最も美しい。

 キミは何者にも囚われない。キミは何も持っていないから。

 意思という自分も、世界という他人も、キミは何も持っていない。

 でも、キミのかたのないその心は、私の心に火をつける。

 

 まずは持ち手を握る。力は入れなくていい。そっと、痛くないように。

 そして私のほうに引き寄せる。包み込むように。

 手持ち無沙汰な片手は、キミを支えるためにある。キミが倒れないように。

 少し頭を傾けてあげる。それの方がキミをよく見れる。

 一度深呼吸して、心臓の鼓動を聞く。身体を震わせるほどの鼓動を。

 目は閉じなくてもいい。でも、見えない方が心が揺れずに済む。

 いや、片目だけは少し見えていたい。やはりキミを見ていたい。ごめんね。

 引き金に指をかける。丁寧に、外さないように。

 そして、ゆっくり、ゆっくり、びっくりしないように、引き金を引いた。

 

 キミの心、私の心。

 その心に、カタを付けよう。

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冷たいキミ 葛城 ゼン @KATSURAGI-nov

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