epilogue
私は、朝の新浦安墓地公園へと足を踏み入れる。
目の前に広がるのは、丘でも木々でもない。ただ、たくさんの黒く磨かれた石碑だけだ。それらは人の腰の高さどころか、膝下ほどしかない。私の足元には、かつての人々が灰となり、眠っているはずだった。
ある人の墓の前に立つ。見下ろしたその墓に、名前は刻まれている。彼の名前だ。私は語りかける。
「きたよ……」
膝下の黒い墓は、何も語らない。だから私は俯いてしまう。
「君はやっぱり、もう話してくれないね」
言葉は返ってこない。ただ黒い石碑は、夜明けの光を返すだけ。だから私は言った。
「でも君は、私に物語をくれた。前よりずっとあなたが、そばにいると感じられる」
そう言いながら、私は踵を返す。そして振り返り、言った。
「じゃあね」
そうして私は墓地を後にする。
どこかに、優しい視線を感じながら。
process 倉部改作 @kurabe1224
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