あと少し、少女たちは夢をみる

哘 未依/夜桜 和奏

あと少し、少女たちは夢をみる



「なんでかな……」


「そんなこと、私が聞きたいわよ」


 薄暗い部屋に二人の少女がいた。互いの声を求め意味のない言葉を発する。そうでもしないと、今すぐ消えてしまいそうだった。


「あと、ちょっとで残り24時間」


「わかってるわ。はぁ……仕方がないから準備するわよ」


「うん」


 部屋の端と端に座っていた二人はゆっくりと立ち上がり中心へと、互いの距離を縮める。


 二人が交わり、互いの手を絡め合う。体を密着させる。もう、これ以上体を密着できない。味わい、最後にゆっくりと顔も密着させた。


 一つの空間となり、互いを共有する。


 長いような短いような静粛が少女たちをつつみ、共鳴する鼓動だけが部屋をゆらす。


 二人はどちらがというわけでもなく共有を解き、軽く息を吸い言葉を紡ぎ始めた。


「「終わりか、始まりか。弱くて儚い私たちの灯火を、御導きください」」


 そして、二人の少女の肉体と魂は完全に乖離した。




 神様は言った。人間は脆い、と。


 しばらくして、人間は病むことがなくなった。


 いつしか、世界には子供という存在がいなくなっていた。


 神様は言った。人間は病み、藻掻き、自らを癒やすものだ、と。

 

 神様は困惑した。


 だからかな。神様は言った。


 人間は互いに病み、藻掻き、互いを癒やすものだ、と。




 互いを感じながらどこまでも深く沈んでゆく。


 とんっ、と音がした。


 少ししてからひとつ、ふたつと結晶が光を帯びてゆく。


 それこそが少女たちが生きてきたという証。


 どれほど互いを思っていのだろうか。結晶は証であり、でもだからこそすべてを終わらせることができる終焉の光。


 あと少し、少女たちは夢をみたいと思う。


 何も変わらなくても、そこにはあなたがいるのだから。

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あと少し、少女たちは夢をみる 哘 未依/夜桜 和奏 @Miiiii_kana

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