魅力的なキャラクターって? 動き編

 お題「キャラクター」の最終話です。


 名前と設定が決まって、どんな口調で喋るか分かったら、次は動きです。


 口調と比べ動きは文字を扱う小説という媒体においては、いささか地味に感じるかも知れません。しかしこの動きこそ、魅力的とされるキャラクターの細部を彩るプラスワンとなる要素なので、今回は動きについて触れたいと思います。


 キャラクターがそれぞれ性格によって喋り方や口癖が現れるように、動きにもキャラクターの内面が自然と溢れ出しております。現実において身近なものですと、スポーツのプレイスタイルが代表的かも知れません。


 スポーツに限らず、ファンタジーを始めとした対決や戦闘を行う作品では動きの表現は多いと思います。

 力が売りのキャラクターでは攻める際深く踏み込んだり、大きく身体を回すなど溜め込んだ力を放つような動きをする。といった具合です。

 身軽なキャラであれば身のこなしに注目したり、遠距離が得意であれば大きく動かず、目を動かし周囲に警戒する。この辺りは何となく察しのつく表現でしょう。


 ただしここでも重要となるのは、○○キャラというテンプレートです。例えば脳筋キャラであれば上記のような動きをするのか。と疑問を持ってみましょう。

 素手やグローブのような近距離で戦う場合、相手によっては敵が近づいて来るのを待つ、受け身な動きをするかも知れません。逆に大剣やハンマーのような得物の使い手であれば、同じ脳筋キャラでも攻撃を当てるため近づいたり、直接攻撃を狙わず周囲の物や地面を叩きつけて搦め手を扱う事だってあるはずです。


 第二話「設定」編で触れたように、○○キャラのテンプレートに沿ってしまってはありきたりな動きが多くなってしまうでしょう。本当にそのキャラはその動きをするのか。そのキャラの性格であればもっと効率的な動きや、好みな戦い方もあるのでは。と疑問を持つ事で、そのキャラらしい動きが生まれて来るはずです。


 勝負や戦いの中における動きについて、何となく理解が深まったと思います。

 では、戦い以外での動きはどうでしょうか。


 日常の中において、性格を象徴するような動きがあります。それは癖です。


 イライラしたら貧乏ゆすりをしたり、歯軋りをしたり、溜め息が多くなったり。

 緊張したら唇を舐めるとか、動揺したら目が泳ぐとか、不安を感じたら手を口元に当てるなど。


 読者の方の身の回りにも何かしら癖を持っている人がいたり、読者自身も自然とやってしまう癖があるかも知れません。しかしながら、どの癖もやる人はついやってしまいますし、やらない人は意識しても出来ない事だってあるでしょう。


 現実では気になってしまう癖でも、物語の中で行えばそれはキャラの魅力や個性と入れる大きな要素。

 他のキャラにはない個性を描く事で、そのキャラは作品の中で唯一無二の存在と化けるのです。


 そんな癖ですが、何も上記で述べたマイナス面のものだけではありません。照れ隠しの際に毛先をクルクルと遊んだら可愛らしいですし、喋る時に毎回片手を腰に当てれば、堂々とした佇まいのキャラとして映るでしょう。

 しかも、このような癖を扱えるようになれば、セリフや地の文で感情を説明しなくても自然と表現の中で描写が出来るようになります。


 第一話で触れた初登場時の「名前」のように、癖を描写する際何がきっかけとなるかを読者に伝えておく事で癖=感情という紐づけが行えます。

 例えば、無意識な一言を言われ、思わず毛先をイジって誤魔化す。なんて文章を書けば、キャラの動きを描写しつつ、この子はかなり照れてしまっているのだろうという部分も同時に伝えられます。

 そして伝わるのは読者へだけではなく、まわりのキャラが他のキャラの癖を知っていれば、その人がどんな感情を持っているのかも察する事が出来るという、情景描写の側面も持つ事が出来るのです。


 最後に、キャラクターの癖も性格に起因する事が多いです。短気なキャラならイライラがきっかけの癖が多くなるでしょうし、冷静なキャラであれば見えない部分で本人も気づかないような癖が出ているかも知れません。

 スポーツやファンタジーの戦い方にしても、隙を見つける粘り勝ちや消耗戦の長期戦が得意だとか、一撃で決めたり連撃で圧倒する短期決戦が好きだとか、それぞれのプレイスタイルは性格あってのものでしょう。


 それぞれの性格をよく見極めて、どんな行動がそのキャラらしいか考えそっと動きを描写してみると、文章の中でも生き生きと動く魅力的なキャラクターが描けると私は思います。

 また口調編でも述べたように、○○キャラのテンプレのような動きであっても問題は無いのです。重要なのはそのキャラならどうするか。この一点を凝視し、そのキャラらしい動きを描いてみて下さい。きっとそれが、そのキャラクターの持つ魅力となっているはずです。


 以上の内容で、魅力的なキャラクターの動きの解説と致します。


 第一話で触れた「名前」と二話の性格と立場からなる「設定」でキャラクターを作り上げ、三話の「口調」と今回の「動き」でキャラクターらしさを存分に発揮してみて下さい。


 そしてその四つはどれから決めたって良いのです。それぞれが相互関係にあるので、一つずつ決める事でキャラクターの全体像が出来上がり、要素が埋まって行くたびキャラクターの完成度が上がって行くと思います。


 好きなキャラクターを魅力的に描くために、様々な観点からアプローチを掛ける事でキャラクターの魅力は何倍にも膨れ上がると私は考えます。


 もし魅力的なキャラクターの表現が分からないとなった時は、あらすじに貼ってある私の作品でも読んで何か刺激を受けるのも良いかも知れませんね。


 という事で最後に自作の宣伝を欠かさない筆者の夜葉でした。

 それでは、また次回のお題でお会いしましょう。

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佳作受賞作家の考える、小説の書き方作り方エッセイ 夜葉@佳作受賞 @88yaba888

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