私は死ぬけれど
「私はとっくに失っていたのかもしれない......何もかも」
学校にも家にもきっとこの世界のどこにも私の居場所なんてないって思った。
「ここを飛べば楽になれるのかな?」
楽になれる......そんなことできるはずがない、自分が一番ーわかってる。
「もううんざりだよ世界にも私にも......もう辞めよう」
「あの~こんなところで何してるですか?」
突然聞こえた声に思わず体が震えた、もうどうにでもなればいいそんな思いを彼にぶつけてしまった。
「死ぬの! ......ここで」
私は目に涙を溜めながらそう吐いた......そしてビルの屋上の端に上がった。
「ちょっちょっと待ってください!」
待つはずがないだって死ぬのを見られてしまった、今いかなきゃきっと死ねない。
「なんですか?」
「君これじゃ死ねないよ?」
彼が何を言っているのかわからなかった、私が一歩踏み出せば死ぬのに。
「え? どうゆうこと?」
「君は絶対に死ねないよ! だってまだ君の顔が生きたいって言ってるから!」
私が生きたい? どうゆうことがさっぱりわからなかった。
「とっとりあえず降りてくれないかな?」
私は彼の言葉のせいで混乱して意識が散漫していた。
「えい!」
彼の声と共に油断していた私を彼は屋上の端からへ引き下ろした。
「ふぅ~よかった」
「最悪......」
私はまた死ねなかった、その言葉が脳を埋め尽くし私はただ頭を抱えて蹲ることしかできなかった。
「大丈夫......ですか?」
大丈夫なはずがなかった、だってついさっきまで死のうとしてそれを見ず知らずの他人に止められたんだから大丈夫なはずがない。
「なんなんですか! 貴方何したかわかってるんですか!」
「貴方を助ける第一歩をしたまでです」
「え? なんて?」
急に彼の言葉が変わり更に混乱して語彙力がなくなっていた。
「ふ~ひとまずなんとかなった」
「え? 何ですって?」
「あっいえなにぶん初めてでうまくできるか不安だったんです」
「自己紹介しましょう僕は影織 隼です死後の世界からやって来ました」
彼の放った最後のセリフが理解不能すぎてもう頭かま動かない。
「しっ死後の世界!? 冗談か何かですか?」
「冗談ではないですよ私は死後の世界からあなたをすくいにきたのです」
「え!」
驚きで無駄にデカくなった私の声は誰もいない夜の街に響いた。
「なんでそんなことを......」
「貴方が死のうとしたからです」
「私は死にたかったのに......そんなこと迷惑です!」
「本当に死にたい方の前には現れませんよ」
「え? それじゃ私が......」
「本当は死にたくなかったんです! 貴方は」
嘘だ、そう信じたかったけどそれを百パーセント否定するだけの自信が私にはなかった。
「私......死にたくなかったんですね」
「話を聞いてもいいですか?」
「え? 話?」
「貴方が死にたいと思った原因を」
なんか今はこの目の前の人に話したくなった、だって私は久しぶりに人に話しかけられて任務か何か知らないけど彼は私について聞きたいと言っているのだから。
「いいよ、そのかわり敬語禁止ね」
「わっわかりましっ! わかった」
「もっとフレンドリーにしてほしいな〜堅苦しいの嫌い」
「そっそっか頑張る」
「肩の力抜いてよ別に面接とかじゃないんだからさ」
「うん、そうする」
「それで私の話だっけ? そうだな~何を話せばいいかな?」
「今一番悩んでることは何?」
「ふふ! 何? 下手くそなカウンセラーみたい! ......悩みか~私と私を取り囲むもの全部が嫌なことかな?」
「何があったんですか?」
「私ね、お母さんもお父さんもいないの私今親戚のおじさん家に住んでてさ~正直家に居場所ないんだよね」
「居場所がないとは?」
「両親が死んだ時親戚一同にたらい回しにあってねそんで家がすぐそばで転校しなくていいって理由だけで今の家にいるのそれで今の家には元からおじさんの子供が二人もいて正直よそ者で不登校気味な私なんかみんな嫌いなのだから居場所がないの」
「それは辛いね」
「それに学校だって私ぼっちでいじめられてるからどこにいても落ち着かないし......まぁ全部こんな私が悪いんだけどね」
「あなたは悪くないいじゃ?」
「うんうん私のせいだよ、だってみんな私のこと嫌いなんだよ? そんな人が悪くないわけんないじゃん!」
「......」
「なんかごめんね?」
「いいえ......実の親との記憶は?」
「え? あっないよだって二人が死んだの私がまだ十歳の時だもん覚えてないよ」
「兄弟はいた?」
「いたよ親がいなくなった時別の親戚の家に引き取られてそれっきり」
「会いたくない?」
「もう顔も忘れちゃったよ」
「友達はいる?」
「いたよ昔に、でもいろいろあって今は目があったら私をいじめる中の一人」
「なんて言ったらいいのかわからないよ」
「恋人は?」
「好きな人はいたよ、結構仲良くなれたんだけど二人っきりになった時に押し倒されて全部奪われてそれっきり」
「泣いたことある?」
「あるかな? もう忘れちゃった少なくとも覚えてる限りでは泣いてないかな」
「泣けると気持ちが落ち着くよ我慢しないでいいんだよ」
「そんなこと言いたってでないもんはしょうがないやん」
「そう......だよね......本は読む?」
「読むよ、こないだ白鯨買ったよ、でもまだ読めてないんだよねーー」
「難しいの読むんだね」
「文豪とかの本好きだからね!」
「夢は見る?」
「見るけど悪夢ばっかりで嫌になっちゃう、夢ぐらい幸せになりたかったよ」
「君は自分が嫌い?」
「大っ嫌い! 今の親よりも学校でいじめてくる奴よりも何よりも一番嫌い!」
「どうしてそんなに嫌いなの?」
「もう忘れちゃったかも、まぁ普通にコミ障なとことかネガティブなとことかいろいろかな」
「コミ障?全然普通に話せてるじゃん」
「貴方は特別! だって死ぬ直前に会った人だよ?コミ障なんてもうどうでもいいよ......ねぇ? 聞いてもいい? なんで私は死にたくなかったの?」
「それは君にしかわからいかもしれない」
なんとなくわかっていた、私が死にたくなかったのは口では誰も信用しないなんて言っておきながら心では誰かが私を救い出してくれるんじゃないかって信じていたからだ、だから端から引き戻された時少しだけ嬉しかった、そして彼が死んでいると知ってやっぱりなって思った。
「なんとなくわかるよ、あの時救ってくれてありがとう」
「君笑うとかわいいんだね」
突然の言葉に心臓が鳴った人にかわいいなんて言われたのは正真正銘これが初めてだ、私は顔が真っ赤に染まるのを必死で堪えていた。
「あっありがとう」
「ねぇ? 君はまだ死にたいの?」
「死にたいよ今でも、だって貴方は死んでるでしょ? 私を救えないよ」
「それを言われると痛いね、確かに僕には君の現実を何一つ変えられないのかもしれないね」
「やっぱり死にたいな〜もうめんどくさいよ何もかも」
「しっ!」
「私さ! 死なないでって言う人嫌いなんだよね」
「え?......」
「だって無責任じゃない? その人は沢山苦しんでもう死にたいって言ってるのに他人がその人の苦しみも知らないくせにその苦しみから救うことだってできないくせに! ただ死ぬのは悲しいから死なないでなんて自分勝手すぎるよ......ごめんねちょっと嫌味みたいだったね」
「......」
「ねぇ? 君のほしいものは何?」
「私のほしいもの? 愛かな......愛......誰でもいいただ私を抱きしめてよく頑張ったね、偉いねって褒めてほしかった」
[......]
「ねぇ! 私やっぱり死ぬね! 今話してたらだいぶ整理ついてさ余計死にたくなっちゃったや」
そう告げると私は再び屋上の端に登った。
「.......」
「止めない、うんうんもう止められないんだねてことはもう私は死ねる」
「あの!」
「ありがとうね! 君のおかげで少しだけ楽しかったよ」
「僕は君を救えなかった」
「私貴方のその〜仕事? 任務? 好きだよ、だから私はダメだったけど続けてね? もっとたくさんの人達を救って」
「僕にはできないよ!」
「大丈夫! 私が言っても全く説得力ないけど貴方人の話聞くの上手だもん本当に今日はありがとう最後に会った人が君でよかった」
「もう死ねんですね」
「うん死ぬありがとうバイバイ」
私は笑顔で飛び立った頭がコンクリートにぶつかり目の前に私の血がドロドロと流れている、これで死ぬ......次は彼みたいに誰かのために生きたいな......意識がなくなる寸前にそう思った。
太陽の光が照りつける学校の屋上彼はいた。
「さぁこれで終わりだ」
私はまるでお姉さんのように彼に近づき話しかける。
「ねぇ?坊や」と
本当は死にたくない君へ @non00987
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