第2話 投獄(ジェイル編)
『最後に勝ったものが正義。力こそ正義。』
これがジェイルの口癖だった。
常に自分が幸せになることを重点に物事を考える少年ジェイル。そんな彼は今年の春で専門学校を卒業し、不治の病ダウオムを治す特効薬を研究する予定だったが、現在は警魔隊に強制連行され投獄されている。。
彼には家族がいない。いや正確にはいたのだが・・・
父親・母親・妹の4人家族で生活していたジェイル。父親と母親は有名な統率者であり、闇属性の使い手としてその名を広めていた。
ダウオムが流行るまで闇属性は他の3属性と同じような扱いを受けており、それよりか特殊な属性と言うことで脚光を浴びていた。しかし、不治の病ダウオムが流行し、その源泉が闇属性にあるという噂が広まってから闇属性は悪属だととらえられ、ジェイル一家はそれ以降差別を受け、徐々に衰弱していった。
追い打ちをかけるかのように、数年前不治の病である「ダウオム」にジェイルを除いた家族全員が感染し、数日後息を引き取った。身寄りがいなくなったジェイルは差別を受けながらも家族を殺したダウオムの本当の原因を探るため研究に没頭した。
ある日の朝、家の研究室で特効薬を研究していたところ、急に警魔隊が押しかけてきた。
警魔隊「お前!今何していた!ダウオムの感染を促す薬を作っていると市民から通報があったぞ!事情聴取させてもらう。ついてこい!」
一言も話す余地なくジェイルは連れて行かれた。しかも事情聴取のはずが投獄され、話しを聴くような時間も場所も与えられなかった。
今日は投獄初日。これからダウオムについて勉強し、家族を奪った不治の病ダウオムやその他の未知の病を解決する魔法学者になるのがジェイルの夢だった。
ジェイル「・・・なんてこった。」
声を出しても誰も反応してくれない。ジェイルがいる牢獄はトイレとベッドのみがあり、近くに囚人や看守もいなかった。そのかわり牢獄の真上に監視カメラがあった。
ジェイル「どうして・・・なんでこうなるんだ・・・。闇属性ってだけで・・・俺だってダウオムで家族を失ったんだ!どうして・・・」
この世界には魔法が存在する。主に5つの適正に分けられ、そこに3つの属性が加わり組み合わせは15種類になる。かつては4属性で構成されていたのだが、4つ目の属性である「闇」は不治の病ダウオムをもたらした元凶とされ、闇属性を持つ者は一切の魔法を禁じられることとなった。ジェイルも専門学校で学んだ魔法の一切を禁じられ、魔法が使えない者となっていた。
ジェイルは時間にして3時間ほど涙と悲壮感でボーッと過ごしていた。
カンカンという音がなり、気づけば檻の向こうに看守が立っていた。
看守「おい!飯だぞ!30分後に容器を回収するからそれまでに食えよ!」
そう言葉を告げ、檻の下の隙間を通すようにプレートにのった食事が配られた。
ジェイル「パンと牛乳・・・」
わざわざプレートにのせるような食事では無かった。そこにあったのはパンと牛乳のみ、昨日までは人目を避けながらも研究活動が行えていた。そんな生活がジェイルは好きだった。研究活動で特効薬を作ることが生きがいだと感じていた。
それなのに・・・
ジェイル「どうして・・・どうして・・・うぅ・・」
その夜、ジェイルは食事を口にせず。今後どうしていくかを考えていた。ベッドに横になりながら考えており、気づけば寝ていた。
明朝ジェイルはぼんやりとした脳みそのままポロリと言葉を告げた。
ジェイル「父さん・母さん・エミー。俺は・・・特効薬を作りたいっ・・・」
エミーはジェイルの妹である。ダウオムに一番最後に感染し、父・母と亡くなってからジェイルはエミーの手を握りしめずっと祈っていた。エミーは来年高校入学する予定だった。
ジェイル「エミー、お兄ちゃんは負けない。闇属性だろうが、囚人だろうが、家族を奪ったダウオムと戦う!特効薬を作るんだ!」
ジェイルがそう意気込んでも誰も反応してくない。また、ここには研究材料が何もない。
それからのジェイルの日常はこうだ。
昼と夜にパンと牛乳が配られ、特に仕事や運動はさせられなかった。パンと牛乳が一日の中で唯一の楽しみであり、段々とジェイルは衰弱していった。
1週間がたった頃。ジェイルの脳は考える事を辞めていた。ジェイルの脳は「食べ物」「死」の2つが交互に行き交っており、特効薬のことは考えられないほど精神もズタボロに削られていた。
伝染病であるダウオムを治すため、研究し、投獄されたジェイル。ここからジェイルのお話が始まる。
未来予知と君との天秤 紅ピカ @daimatsu
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