第6話 エピローグ 「紅き夕日の中で」
ニコとトムはその日の仕事を終え、フリーダムタワー・ブリッジの歩道橋でコーヒー・ブレイクを取っていた。
「やれやれ。今日もフライドチキンはなしか。じぶんだけいい思いして。」
ニコが思わず毒づく。
「悪かったよ。車を運転できるといろいろとランチが選べてしまうから。君の分まで考えていられないほどおいしかったから。」
今度ご馳走するよ、というトムだが、
「二度もすっぽかしたんじゃ、信用できないな。」
相変わらずニコは機嫌が悪そうだった。
トムがあわてて別の話題に切り替える。
「ところでアナスタシアはどうしたかな。たぶん母国で一人前のバレリーナになるべく練習していると思うけど。」
「そうだな。」
ニコは真っ赤な夕焼けに目を向け、コーヒーをすすった。
「きれいな夕日だ。アナスタシアも同じものを見ているといいんだけど。」
「時差を考えろ。今は見られない。」
夢がないなあ、とトムは言う。
傍らのごみ箱に飲み終わったコーヒーのカップをつぶして入れると、
「まあ夕日が見れる時間に、同じものが見られたらの話。こんなきれいな夕日はなかなか見られない。」
そうだな、と返したニコだが、内心別のことを考えていた。
(だが、まるで、血の色のようだ。)
ニコとトムが勤めるラジオ局にはその頃、小包が届いていた。
「独裁主義国から?ニコとトムさん宛てに?どうしてこんなに大きいのかしら?」
受付係のジェニファーが首をかしげる大きさの小包だった。
ラヂオな時間 -TWO WORLDS- (1) @spaceblue
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