俺が異世界モノの小説を書く理由

仲仁へび(旧:離久)

第1話



「こんなゴミみたいな小説を書くなんて、気持ち悪っ」


「自分の妄想垂れ流して、恥ずかしくないの?」


「そういうのは、頭の中で考えるだけにしてなさいよね」


『異世界に行きたい』


 俺は、現実逃避のために考えていた。


「いい年頃の青少年が何言ってんだ」、となるかもしれないが。


 俺は、いい年頃だからこそそう思うのだ。


 冒険がしたい。


 女の子にもてたい。


 俺TUEEがしたい。


 魔法使いたい。


 手に汗握るバトルしたい。


 時には気の置けない友と友情を築いちゃったりもしたい。


 異世界には、夢がたくさん詰まってる。


「そんなの現実でもできるだろ?」


 なんていう奴もいるが、俺は言おう。


『いーや、無理だね』


 何か新しい事やろうとすれば責任がどうこう。


 規則、ルール、マナー。


 大人や教師はガミガミうるさい。


 行けるところは限られてる。


 それに目隠し、情報隠しばっかり。


 世の中は確かに広いのかもしれないけれど、子供である俺達にとってはかなり狭苦しい。


 それに俺達はいい年した青少年。


 純粋な心を持った自由な世界で、道端のお花さんとかアリさんとか、見るものすべてが新鮮に目に映っていた幼少時代を過ごしているわけじゃないんだ。


 ゆがめられた世界の中でも、好奇心とか膨らんじゃったり、夢とか大きくなっちゃったりする年頃なんだよ。


 だから、


「――異世界に行きたい!」


 と思うのだ。


 でも、無理だよな。


 分かってるよ。


 そんなものありはしないって事ぐらいさ。


 ありもしない所にはいけたりしないだろ?


 だったら、空想の中でくらいは異世界で自由に生きたいじゃん。


 俺は「異世界に行きたい」と呟きながら、キーボードをたたく。


 奇跡でも起きなければ、俺の夢は叶わない。


 でも、物語の中でなら、奇跡だってなんだって起こせる。


「虚構」という壁を挟んだ、向こう側の世界なら。


 どんな事だってできるし、どんな所だっていける。


『こんなもの書いたってどうにもならないのに』


『ただの妄想になに必死になってるのよ』


『こんなの読んだって、現実が変わるわけじゃないのにな』


 ああ、そうさ。


 何も変わらないさ。


 現実の俺は、行きたいところにもいけない。


 やりたい事も満足にできない、ただのクソガキさ。


 だけど。


 だからこそなんだよ。


「お願いです、勇者様。どうかこの世界をすくってください」


 俺が異世界モノの小説を書く理由は、『現実』じゃ得られないものを得るためなんだから。


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