第8話

 彼女は非常に安心したらしく、しばらくの間、憑きものが落ちたようにぐっすり眠った。人の仕業だとわかってから、盛り塩も、やめた。

 すっきりした彼女は、予定通り母親と兄の十三回忌に行った。

『電車が遅れているみたい。帰宅が深夜になりそう。先に寝てて』

 彼女からメールが来た。

 俺はお言葉に甘えて、先に風呂に入った。

 空気がおかしい、と思いながら風呂から出ると、ラグやフローリングにびっしりと灰のような足跡がついていた。

 温まった体から、冷や汗が噴き出す心地がした。

 逃げなくては。そう思ったとき、背中を強く押され、足跡の上に倒れ込んだ。

 起き上がろうとしたが、体は動かない。誰かが馬乗りになっているみたいに。それなのに、自分の意志とは裏腹に、首は上げられる。紐のようなもので絞められ、上げさせられているかのように。

 黒い霧のようなものが、視界にちらつく。視界も不明瞭になってきた。

 薄れゆく意識の中で、雑音交じりの声が聞こえた。



 ――俺は、あの子のボディガードだ。妹に手を出すやつは、殺してやる。



 【「俺はボディガード」完】

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俺はボディガード 紺藤 香純 @21109123

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