エピローグ
その日、王は私にあれは嘘であると告げた。分かりきっておることであった。おまけに私に愛の告白までした。そこまでは私も予期しておらなかった。
王よ、さすがだ、これまで私と共に
ただ既に契約書にはサインしてある。何であれ、私は命を失う。ゆえに前々から考えておった言葉を告げた。
「この愚か者が!」と。
王はまさにビックリした顔をしておった。驚かしが過ぎたかもしれぬ。とはいえ、何だ、あの女と想ってくれたぐらいが丁度良い。王が私に未練を抱くことは、望むところではない。
私は死神の寵姫になりたいのだ。そう考えるだけで身の内に生じる恐怖に、私はすっかりとろけておった。
それにやがてはアレクサンドラが来る。私の不在による王の
一つ心残りは、その当のアレクサンドラ。ただあの娘とも十分に時を重ね、伝えたきことは言葉に乗せた。まだ若いゆえ、全てを理解したとは想えぬが。ただ、私でさえ、あの娘の
私はしばしば恐怖に呑まれつつあった。それに不安が紛れ込んだ。なじみとなった者たちと離れるゆえであろう、悲しみもまた。しかし、その度に希望と期待が押し返した。その
ただその夜、私の下を訪ねたのは、死神ではなく愛の神であった。そして、私は愛の神と契約を交わし、そして、こと切れた。
(Victoria編 完)
どうも。最後までお読みいただきありがとうございました。
姉妹編(またいとこ編とも)が次に控えております。投稿はまだ先になると想いますが、これも併せ楽しんでいただければと想います。実はその次もあったりします。
作者も話が広がって行くのは楽しいです。
婚約破棄―その愛と死の応酬 ひとしずくの鯨 @hitoshizukunokon
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