6
王は、ここ最近、離縁がどうたらなどと言い出しておった。それが本心からのものでないことは分かりきっておった。またサプライズか何かであろう。
ただ私はそれに乗っかる気でおった。そう、我が家には、まさにそれに丁度良いものが代々伝わっておった。初めてナターシャ叔母上から聞かされた時、
死神、そんなものがいるのだろうか?
ただ、王がそんなことを言い出すまで、少なくとも私にとっては無縁のもの、そのように想いなしておった。
私は急きょそれを実家から一枚持って来た。
まあ、良い。数日中に何か手土産でも持って行こう。
確か王家へ南国からココナッツの献上品があった。アレクサンドラの好物だ。あれを携えて行き、一緒に食べて過ごすとしよう。最後の時となるやもしれぬ。なら、泊まってこようか。
ところで、こいつだ。
そうして改めてそれに眼を落とす。
まったく読めなかった。
死神との契約書と聞いたが。
ただ私の関心はこれにあった訳ではない。
死神の方であった。
どんな奴なのだろう。
そして、それ以上に関心があるのは、これを契約した祖先と死神との関係であった。いかなるものであったのか?
ただ祖先はヒントを残されておる。
『愛の神を尊崇せよ』と。
ただこれが誤りであるは明らかである。
契約したのが死神なら、ここは『死神を尊崇せよ』が正しかろう。実際、それが我が家における伝統的な解釈であると、やはりナターシャ叔母上から聞かされておった。
ただ、私は異なるのではないかと考えておった。『死神との愛を尊崇せよ』ではないかと。祖先は死神の寵姫となったのではないか。
この代々続く美貌とやらは、その寵姫となった祖先のものであり――それが死神の力により、まるで仮面を貼り付けた如くに、子孫に受け継がれておるのではないかと。
死神の寵姫となるとは?
死神に抱かれるとは?
どのようなものであろうか?
激しく我が心に恐怖が渦巻くのを
もし、私の考えが正しいとしたら?
祖先の美貌を私が受け継ぐを得たのだとしたら?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます