第3話 ヒロインの実力

あれからというもの俺は一週間訓練を受け追加でもう1週間、合計で2週間の訓練を受けた。最初の1週間は怪物騒ぎで休みだったため何とかなったが、その次の週は学校にインフルエンザと言った。だが、五月だったため怪しまれた。家に帰るとすぐに寝てまた訓練という日々が続いた。その間妹に家事を任せてしまったのは申し訳なかった。

「よしこれで追加一週間の訓練を終わりにする」

「やっとか~」

僕は待ち望んでいた言葉を聞きその場に倒れこむ。

「お疲れ様だよー快晴君」

明梨が俺の顔を覗き込むように座り、顔にとあるものを乗せてくる。顔が近かったのでありがたかった。

「なんですかこれ」

「これはライセンスみたいなもの これを持っていれば自分が鴨嘴の一員って証明できるの」

「てことは、俺はもう」

「うん、ようこそESP鴨嘴へ」

「明日から普通に学校に行っていいぞ」

「はい、一週間ありがとうございました」

重い体を無理やり起こし急いで帰宅の準備をする。奏雨かなめが待っている。

「おい快晴」

「はい、どうしました?」

恵海が快晴を呼び止め何か言おうとしているが言葉に詰まっている。快晴はまた厳しい訓練をさせられるのかと身構えていた。

「その、私と話すとき敬語じゃなくてもいいぞ」

「え?いま、、なんて」

予想外の答えに快晴の脳の処理が追い付かなかった。

「だ、だからため口でいいと言っているんだ 快晴は高校二年生だろう?私も同い年だ 学校には仕事に専念するため通ってないがな」

「うそ一ノ瀬さん、いや一ノ瀬って同い年なんですね 分かりましたため口でいくね!」

片言な変な日本語になる快晴と照れる恵海を見ていた明梨が口をはさむ。

「快晴君高2なんだ!私もだよ~私たち同級生組だね!というか、私たちのこと名前で呼びなよ~快晴って呼んでるんだからさ」

明るすぎる明梨に恐怖心を覚え目がくらむ快晴だったがなんとか耐える。

「分かった 恵海、明梨改めてよろしく」


~次の日~

「おはよう 奏雨」

「あーお兄ちゃんおはよう 今日からまた学校だよね」

「ああ訓練よりましだからやっとだよ」

「お兄ちゃん頑張ってたもんね」

「ごめんな色々と任せっぱなしにしてて」

「大丈夫だよそのくらい」

「ありがとう」

「どういたしまして」

凄い平和だ。あの二人といるとぜったい起こらない雰囲気に感動する。いい妹だ。

「あ、私頑張ったんだし今度ご褒美買ってよ」

「お兄ちゃんに任せとけ」

「ありがとうお兄ちゃん」

にやけていた奏雨をみて自分がはめられていたことに気づく快晴

家にもあの二人くらいのやり手がいることを忘れていた。

そんなやり取りをした後学校へ向かうため家を出た。2週間ぶりの学校ということもあって少し緊張しながら登校した。学校へ着き教室のドアの前で一旦深呼吸をする。

(とりあえず澪に謝らなきゃな よしっ)

取っ手に手をかけた瞬間

「おい」と後ろから声を掛けられる。

「み、澪!?おはよう」

「おはようじゃないぞ快晴」

「ああ、あのことか悪かったごめん」

「私の電子レンジ計画が何気役立つんだよ」

「あれ?澪もしかして怒ってないの?」

「何を怒る理由がある 助手の旅立ちを送るのも私の役目だからな」

ドヤ顔をしながら言う澪に俺は笑いながらも感謝した。

(もしかしたら、俺に気を使ってるのか)

そう思い「ありがとう」と言った。

「もっと感謝したまえ、しかし、心配したのは本当だからなこれからは二週間も休んで研究してたことを聞かせてもらうぞ!ここで話すのもだからさっさと我らの席に行こうじゃないか」

澪が言いいつもの教室へ入った。先生が来るまで澪にはESPのことなどは伏せて話した。妹が襲われそれをESPの恵海が助けてくれたことなどを。そんなことを話してたら先生が教室に入ってきた。

「はい皆には報告があります このクラスに今日から新しくクラスの一員になる転入生がいます」

先生がそう言うと

「え?女子かな」

「かわいいといいな」

「え~男子でしょ」

「イケメンで私との恋が」

「何言ってんのあんた」

クラスがざわつく

「君はどっちだと思う?私は女子が来ると思うよ」

澪が俺に聞いてくる。

「女子が来るなんてできすぎた展開なんてないから男子でしょ」

「君って夢が無いよな」

「はい皆静かに、入ってきてどうぞ」

先生が廊下で待っていた新入生に呼びかける。クラスのドアが開きみんな唾をのむ。そして廊下から入ってきたのはそれはまた顔の整った女子だった。

「すっげ~」

「可愛い~」

などクラスが少しざわつく。そして俺の心もざわついていた。

(なんであいつがここにいるんだよ)

「皆さん初めまして一ノ瀬恵海と言います。よろしくお願いします」

入ってきた瞬間驚き声も出なかった。仕事優先じゃないのかよ てかやっぱり恵海だし。

「はーい、趣味は何ですか」

勝手にクラス明るいやつが質問する。

「趣味ですか しいて言うなら格闘技やってるんでそっち系のスポーツとかですかね」

笑いながら言う彼女に恐らくクラスの男子は格闘技好きというギャップにノックアウトされているだろう。

そのあとも皆便乗していき質問していった。澪は俺にずっと予想があたったことを自慢げに話していた。そして先生が止めようとしたときに全員が気になっていたが聞けなかった禁忌の質問をした勇者があらわれた。

「彼氏いるの?」

クラスに怪獣が出たときくらいの緊張が走る。

「彼氏はいません」

その言葉が発せられた瞬間、男子全員がガッツポーズをした。しかし、まだ続きがあった。

「でも、気になる人ならいます」

今度は女子が盛り上がる。

「え~だれ?」

「いっちゃいなよ~」

「ばか、そんな言えないでしょって」

そんな盛り上がっているところにまた爆弾を投下した。

「このクラスの男子です」

クラスが夏フェスくらいの盛り上がりを見せる。もはやだれにも止められない。

「助手君かもしれないぞ」

澪にからかわれたが嫌な予感がした。絶対恵海は好きな感じの気になる人という意味で使ってない。さっきの格闘技だって絶対戦闘ができるからいいように落とし込んだだけだ。「恵海の推薦なんて珍しいよ」明梨の声が脳裏で再生される。

クラスに漂う雰囲気は完全にいう雰囲気になっていた。男子たちが手を握りしめ願う。女子は目をキラキラさせながら待つ。俺は冷や汗だらだらで待っていた。そして満を持して答えが投下された。

「快晴が気になってるんです」

全員が俺を向く。対する俺は天井を向いていた

終わった。

男子の目は嫉妬に狂い女子の目は答えを言えと圧のある視線を向けてきた。

そんな中とある後ろの席の人物が立ち上がり恵海に物申した。

「助手くんは私のものだ!手を引いてもらおう」

「あれ、あなたは好きなんですか?快晴のこと」

「バ、違うにきまっているだろ」

澪が叫ぶ。クラスのカオスな雰囲気を先生が無理やり止めに入り何とか終わりを迎えた。ホームルームも俺も

よりにもよって席は澪の左隣、俺の席と近かった。ホームルームが終わった後俺はずっと男子からの視線を浴び、女子からは「快晴君はどうなの?」と反応を求められ続けた。そんな時教室の扉が開き聞き覚えのある明るい声が聞こえた。

「たのも~ 」

クラスが再びざわつき始めた。

「おい、今日来てたのか」

「らしいな、あの美少女不登校生の二ノ宮 明梨が」

「今日は幸せだ」

ありがとう君たち解説してくれて。

(てかお前もこの学校だったのかい、しかもなんだその設定)

心で突っ込みまくる。そんな俺の心もまたざわついていた。

(これってまさか)

「いたー!快晴君おっは~ 体調とか大丈夫?」

明梨が走りながら俺の席に近づく。瞬間、感じる殺気

(もうやだこの展開)

俺は放心状態になりながら対応した。授業が始まっても、集中できずに心ここに非ずだった。休み時間になるたびに女子が俺と恵海の席の近くに来てはチラチラ見てきたり男子にはものすごい形相で見られたりと教室は大変だった。澪に助けを求めても無視されるしで、限界がきて廊下に行くと明梨が毎回話しかけてくるしで大変だった。そしてやっと昼休みになった。

(とりあえず落ち着けるかな)と思ったが全然だった。

「じょ、助s」

「快晴お昼食べよう」

四限終わりのチャイムが鳴った瞬間に恵海が話しかけてきた。

「ちょっと待って、澪なんか言ったか?」

「いや何でもないさ」

「そっかならいいんでけど」

ガラガラ クラスの扉が開きもう一人が話しかけてくる。

「かいせっいくーん お昼食べよ」

やばいそろそろ視線で殺される。殺気をおさえて男子諸君

俺ら三人は他に誰もいなそうな空き教室に入りお昼を食べた。

「そういえば恵海なんかキャラ違くね」

「あー恵海は外だと猫被るからね」

「これが私だ 仕事の時はスイッチが入る」

「なるほど てか朝の発言撤回してほしいんですけど」

「私がお前を気になっているのは本当だよ」

「え~それって告白?恵海」

「ち、ちがう!そういう意味じゃない」

「いやでも、そういう風に思われてますよ」

「え、そうなのか」

「ごめんね快晴君 恵海ってバカなの 普段は普通って感じなんだけど時々バカなんだよね」

「それ早くいってほしい」

「快晴 放課後に学校案内してほしいのだけど」

「うん、いろいろ言われるだろうけどいいよ」

「私も一緒に」

「明梨は予定入ってるだろ」

「恵海のけち」

そんな感じの話をしてお昼を過ごした。


~放課後~

「それでここが音楽室 今は吹奏楽部が練習で使ってるから中は入れないけど」

「そうか 快晴は何か部活やってないの?」

「俺はやってないよ家事とかもあるしね」

「そうか それはすまんな」

「いやいやESPに関しては自分が望んだから だから謝らないで」

「そうか ならよかった」

「そういえば何でいきなり学校に通おうと?」

「そのことか、実はな」

ピロロ~♪ピロロ~♪

これからって時に電話が鳴る

「ごめん俺だ」

「いや私もだ」

「はいもしもし」

「柊高校の近くのコンビニで強盗発生 能力者と思われるため至急鴨嘴の出動を要請します」

「どうやら内容は同じようみたいだね」

「恵海これは」

「これは能力者持ちの事件が起きたとき鴨嘴メンバー全員にくる連絡だ」

「なるほど」

「てこんな話している時間はない 柊高校は私たちの高校から近い 行くぞ」

「はい」

快晴は初めての実践に少し緊張していた。

「あそこかコンビニは 周りに警察とESPが取り囲んでいるおかげで犯人はまだ中 つまりは立てこもりってことか」

「とりあえずどうにかして潜入しましょう」

「落ち着け快晴それでもしばれたら犯人は何しでかすかわからない 能力者持ちが暴れると死人が出る恐れもある」

「ならどうやって」

「お前はコンビニ近くに行って警察とESPの人たちに私がきていることを言ってくれ」

「分かりました けど、恵海は?」

「私は私のことをやる」

「、、、、という事があったのですけど」

「一ノ瀬かなら安心だな」

「何もなく終わるな」

警察の人たちに恵海が来ることを知るとどこか安心した様子だった。

「おい、外にいる奴ら!早くどけ じゃないとこいつ殺すぞ」

中にいる強盗犯が手で鉄砲の形を作り女性の頭に向けている。一見何バカなことをと思うこの光景も犯人が能力者という事で緊張感がある。

プルルルル

またしても俺の携帯が鳴る。

「何してるの恵海やばいよ」

俺は今の状況を説明する

「落ち着け 犯人がどこにいるのか教えてくれ」

「犯人は奥のレジのおにぎりコーナーの棚あたり 近くに人質の女性がいる!」

「分かった、ありがとう」

「ありがとうってどうするのこれ?」

「私の武器を思い出せ」

電話が切れた。最後の言葉で彼女が使っていたライフルを思い出す。

(まさか遠くから射撃を!?犯人はコンビニの奥にいるし人質もいる そんなこと無理じゃ いや、、)

快晴は初めて恵海にあった時を思い出した。

(恵海は俺らの影を撃った 恵海ならいける)

「快晴のおかげで場所が分かった やるか」

恵海はコンビニ近くのビルの屋上にいた。ライフルを構えスコープを覗く。見えるのはせいぜいコンビニの入り口 しかし、彼女には十分だった。

彼女の属性は風 銃弾に風をまとわせ彼女が自由自在に操る。それに加え彼女の射撃の腕は鴨嘴でトップクラスであり、弾もESP特性の跳弾するものを使用している。

「チャージを開始します」

「ああ、よろしく頼む」

恵海が銃に風の力を注ぎ込む。

「チャージ完了10%」

「もう十分だ」

(ここから入り口の床に当たれば弾は跳ね返り、強盗犯の頭上あたりに跳ね返り天井、また入り口か ちょうどいい)

パンッ

恵海が発射をし銃声が鳴った瞬間コンビニの入り口のガラスも割れた。

「なんだ!?」

突然のことに犯人が動揺し動こうとするが、それを反射し彼の頭上を通った弾が止める。

「ヒイッ」

尻もちをつく強盗犯

パンッ

二回目の銃声が鳴り、入り口に向け跳ね返ってきていた跳弾と二回目に発射された弾がぶつかった。それにより、銃弾が尻もちをついた強盗犯の肩に命中した。その出来事は瞬きをしたかしてないかのあっという間に終わった。

「っふ~力配分完璧だったか今日も あ、もしもし命中したから中入って確保していいよ」

そのあとは警察たちが犯人を取り押さえ無事に解決した。

「俺何もやってないんだけど」

「快晴はしかたない私の実力を見せつけたかった」

「もう知ってるって」

「そうだ話途中だった」

「あー結局何で学校に」

「さっきの犯人もそうだったが恐らくこの学校に能力を増強させる薬を売っている者がいる その調査のためにも私が来た」

「なるほどっていったい誰が」

「まだわからない」

「とりあえず今日は解散にしよう 奏雨にもよろしく言っといてくれ」

「は、はい分かりました」

(相変わらずよくわからん)


~同時刻 学校~

「もうなんなんだ助手君はチヤホヤされて」

学校の理科室で澪は今日のことを振り返りぼやいていた。

「もう私にもっと何か魅力とかがあればいいんだけどな~ でも私も天才だし」

「そうですよあなたは天才です」

「誰だい君は」

「おや勝手に入って失礼しました 生徒会庶務の斎川琴弓さいかわことみです 以後お見知りおきを」

「会計の次は庶務と話すのかい」

「おや会計と同じクラスでしたねあなたは」

「それで何の用だい」

「私にお任せしてくれればあなたの好きな人に振り向いてもらうことできますよ」

「す、好きって何言ってるんだい君は いきなり来て失礼だね!」

「本当になってもいいんですよ そうしないと取られちゃいますよ?」

「あ、あの二人にかい?」

「いえ三人です」

琴弓が人差し指を口に当て澪を挑発する。

「君失礼にも程があるようだね 出てってもらおうか」

「おやおやいいんですか?私が出てったらあなた勝ち目無いですよ?ヒロインレースに参加すらできませんよ」

「君と違って私は天才なんでね君がいなくとも私はレースできるよ」

「君は天才じゃないよ 三人からみたらね 私たちは全員持っている者であり二人はESPなんだよ」

「あの二人がESP!?」

「あら知らなかったのですか 彼もそうですよ」

「助手君もかい!?」

「そんなことも知らないなんてあなたやはりヒロインじゃないですね ガッカリです本当に好きなのですか?」

「う、、、だって」

「聞こえないです言い訳なんて だから言ったのに私に任せろって」

「裏があるんだろう?この天才をヒロインレースに参加させようって」

「ないですよそんなの ただ私ライバルが多いほど興奮するんです勝った後のことを

考えると」

「そうとうな変人だね」

「おやあなたもですよ澪さん」

「分かったよその話 しかし、勝つのはこの私だ小娘」

「言ってくれるじゃないですか凡人」

澪はその日大きな力を得た。新ヒロインの力によって?







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電撃シグナル 詩乃ルチア @ruchia_utano

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